【イベントレポート】国際女性デー 特別ウェビナー「私たちのキャリアが社会を変える」

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ランスタッドのジェンダーERG(Employee Resource Group: 従業員主導グループ)のメンバーが性差別などに不安を感じる女性たちを応援するウェビナーを自主企画し、2024年3月8日(金)の国際女性デーに開催しました。対談するのは学生時代からジェンダー平等を標榜し、昨年 Forbes JAPAN誌で「世界を変える30歳未満30人」に選ばれた櫻井彩乃さんとランスタッドCIOの林知果。二人の異なる立場からジェンダーの平等について意見交換が行われました。

ジェンダー平等を実現するための4つの意識

(林)櫻井さんはジェンダー平等の実現に向けた活動を進めるなかで、意識していることはありますか。

(櫻井)活動を進めるうえでの意識は4つにわかれます。1つ目は価値観を押し付けないことです。近年、ジェンダー問題はメディアで取り上げられるようになりましたが、内容を深く知らない方や怖いイメージをお持ちの方もまだいらっしゃいます。ただ、「あなたの考え方は間違っています」「平等のためにこういうことをすべきです」と発信すると押し付けになってしまいます。ジェンダー平等の価値観を浸透させるためにも大切ですね。

2つ目は伝えたい相手の立場に立って、メッセージを発信することです。例えば、会社員と学生では、伝える際に用いる例え方が変わります。学生の場合「制服が選べない」という観点からジェンダー問題をお伝えできるでしょう。相手の立場に合わせた発信をすると、共感しながら聞いてくれます。

3つ目は「ジェンダー不平等を良い方向へ変えていこう」とポジティブに伝えることです。私は高齢の方に向けて講演を実施しています。高齢の方々は高度経済成長を支えてきた過去があり、ジェンダーのお話をすると、今までの働き方を否定されたと感じる可能性があります。否定感が伝わらないように、丁寧に状況を説明して、相手の共感を引き出すようにしていますね。過去を否定する言い方はせず、「これから一緒に平等な社会を実現しましょう」と伝えるよう心がけています。

4つ目はジェンダー平等に向けた良い変化に、共感やリスペクトの気持ちを伝えることです。選択的夫婦別姓に反対していた議員さんが徐々に賛成の意見へ傾いたとき、リスペクトの気持ちを表明する場合が当てはまりますね。

世界経済フォーラムの発表によると、日本のジェンダー・ギャップ指数の順位は146カ国中125位です。林さんは、女性がリーダーのポジションに就くことが少ない日本で、どのようにキャリアを形成されてきたのでしょうか。

 

(林)自分のキャリアを振り返ると、総じて周りの環境に恵まれていたと思います。新卒で入社した日本アイ・ビー・エムは、ちょうど女性の管理職を増やそうとしていた時期でした。優秀な女性社員が定年まで勤め上げる姿を見ていて、女性だからキャリアを諦めるという考えはありませんでした。

もしかしたら男女で同じ能力があった場合、女性を先に昇進させようという狙いがあったのかもしれません。もし自分が狙い通り昇進できていたとしても、後ろめたさは一切ありません。他の男性と同じ能力があったという前提で、偶然タイミング良く選んでいただいたので、「この人を選んで良かった」と思ってもらえるように努めてきました。

ジェンダー不平等を感じずにキャリアを形成できたのは、私の先輩方が男女平等を切り拓いてくれたおかげだと思っています。

 

日本のジェンダー平等には根本的なアプローチが必要

(林)最近の日本のジェンダー平等に関わる動きはありますか。

(櫻井)厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」では、企業が男女間の賃金格差を公表しています。男性の賃金を100%とした場合、女性が何%の給料をもらっているかがわかります。企業ごとに賃金の平等性が異なるため、就職活動や転職活動の際に参考にするとよいでしょう。

さらに、政府が1,000人以上の社員を抱える企業に男性の育休を義務化したり、2030年までに、あらゆる分野の指導的地位に女性が占める割合を30%にする動きがあったりします。

(林)日本は、女性の社会参画や男性の育児取得推進など取り組みを進めていますが、もう少し幅広くジェンダーギャップ是正を推し進めることはできないのでしょうか。

(櫻井)ジェンダーギャップ指数の順位が日本より高い国々は、ジェンダー平等を実現するための構造を組み立てています。一方で日本は「対症療法」のような対策しかしておらず、女性に育児をしながら働いてもらおうとしています。結局、女性が非正規雇用で働かなくてはいけない状況です。

例えば、ドイツでは短時間正社員枠を設けて、一人でやるような仕事を二人でシェアして時短勤務を実現しています。根本的なアプローチが日本ではまだ実施されていないので、今後の課題といえますね。

 

【視聴者からの質問コーナー】「女性は理系が苦手」というステレオタイプが、女性の理系分野の進出を阻む

視聴者からの質問:女性がITや理系の分野へ進出するうえでの障害はなんだと思いますか。

(櫻井)IT分野や理系分野で女性が少ない原因として、「女性は理系が苦手」というステレオタイプ(先入観や思い込み)が挙げられます。

実際、OECD(経済協力開発機)加盟国のなかで日本女性の理系割合は最下位で、とくに数学と物理の道を選択する女性は少ないと言われていますね。

日本の女性は理系科目が苦手と思われがちですが、実際は違います。OECD生徒の学習到達度調査(PISA)によると、日本の女子たちは理系分野でトップの成績を収めています。なんとIT大国アメリカの男子と比べても、成績が良かったのです。なのに工学分野の専門職に就きたいと考えている女子は少ない状況です。

女子の成績が良いのに専門の仕事に就かないという背景には、「数学は男性が向いている」「女子は文系で男子は理系」という思い込みがあります。さらに理系の先生には男性が多く、文系の先生には女性が多いというような状況をはじめ、ロールモデルがいないという障壁もあります。

(林)IT分野は女性も稼ぐ余地がありますし、キャリアを形成しやすくなります。手に職がつけられ、出産や育児で休む期間があっても、すぐにリカバリーできますね。

ITはスキルが重要視される業界なので、ぜひ女性に来ていただきたいですね。

視聴者からの質問:企業内で女性月間のような女性にフォーカスする活動を行うなか、「なぜ女性だけ」と疑問を抱かないために気をつけていることはありますか。

難しい問題だと思っています。私自身が気をつけているのは、男女関係なくフラットに接することです。立場や性別によって態度を変えず、あくまで成果主義だと伝えています。

(櫻井)ジェンダー平等は、性別に関係なく全員に機会が平等にあることを指します。国際女性デーの認知度が高い一方で、実は国際男性デーが11月19日に制定されています。日本では男性に男らしさを求める風潮がありますよね。ゆえに男性が生きづらくなっていると思います。性別による生きづらさを男女で共有するべきではないでしょうか。

女性が生きやすい社会は、男性や性的マイノリティにとっても良い影響をもたらすと考えています。ジェンダー平等の実現は女性のためだけではないですからね。

 

参加者へのメッセージ

(櫻井)ある日、私の尊敬している方に「就活や転職で企業を選ぶのは社会貢献だよ」と言われたことがありました。キャリア形成は企業への就職・昇進・起業などがあります。どんな選択をしても「自分が女性だから無理なんじゃないか」「女性がリーダーになったら変な目で見られるんじゃないか」と思わず、「私だから今のチャンスがあるんだ」と前向きにキャリアを切り拓いてほしいですね。

(林)キャリアに迷っている方は、ぜひIT業界に飛び込んでいただきたいと思います。

転職は人生をポジティブに転換する行動です。仲の良い友人に「キャリアはストーリーとして語れるかどうかが大切」と教えてもらったことがあります。自分がストーリーの主人公であるという強い気持ちをもって進むと、新しい可能性の扉が開くと思います。ぜひ今後のキャリアを通してチャレンジをしていただきたいです。

EBERT

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