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人材活用のヒント コールセンター編 第8回 エスカレーションとFAQ整備
1.コミュニケータ支援のためのしくみ作りが重要
コンタクトセンターで働くコミュニケータは全能ではありません。時にはお客さまの質問に即答できず回答に窮することもあります。取扱商品数が膨大なセンターや、金融系のように複雑かつ高度な専門知識が求められるセンターではなおさらです。
自信のないあやふやな回答はもとより、あわてて間違った回答をしてしまっては言語道断です。お客さまの了解さえ得られれば一旦電話を切り、調べてから折り返しコールバックをしたほうが会社の信用や利益が守れます。
コミュニケータに安心して顧客応対してもらうためにはコミュニケータ支援のためのしくみ作りが大切です。そのしくみが、エスカレーションルールとFAQの整備です。エスカレーションが適切に行なわれ、FAQがきちんと整備されていれば、センターの品質および生産性の向上、CS向上に大いに役立ちます。
2.エスカレーションのタイミングとは?
エスカレーションルールを決めかねている、という声をよく聞きます。「とにかく困ったらSVに代わる」とか「クレームでこじれた場合はSVに代わる」というルールはあっても、明確な判定基準は特定できない、という声です。
はたしてエスカレーションの判断をコミュニケータ自身にしてもらうことはベストなのでしょうか?新人コミュニケータから頻繁にエスカレーションされるSVはたまったものではありません。ぎりぎりまで頑張るひとりのコミュニケータが会社に損害を与えてしまうかも知れません(努力は評価すべきですが)。
エスカレーションルールはSVサイドで設けるべき、というのが私の考えです。コミュニケータが何らかの合図で助けを求めてきたらSVはすぐにモニタリングに入る。SVは一定の判断でコールを引き取る。つまり、コミュニケータに“コールを手放すタイミング”を教えるのではなく、SVが“コールを引き取るタイミング”をルール化することが大切なのです。
そして、コールを引き取ったSVは担当コミュニケータに必ず結果をフィードバックすることが必要です。このフィードバックこそコミュニケータをさらに成長させる足がかりとなるのです。
コールを保留させたまま(=お客さまを放っておく)長々と回答方法をコミュニケータに説明しているSVが時折います。お客さまと会話するのは私の役目ではない!と言わんばかりのSVです。困ったものです。
3.FAQ整備と活用
SVの手がいつも空いているとは限りません。コミュニケータが自分で解決しなければならない場面もあります。そんなとき大いに助けになるのがFAQなのです。
FAQとは“Frequently Asked Questions”、つまり「よくある質問」「頻繁に聞かれる質問」です。実は、コンタクトセンターにおいては、コールリーズン上位20%のFAQを整備すれば80%のコールに対応ができると言われています。
最近は優れたFAQシステムがあります。しかし中身がなければただの箱です。重要なのは、検索性を前提にいかに中身のコンテンツを整備するかなのです。
あるセンターで自分のミッションにも関わらず、数ヶ月もの間FAQ整備ができずに悩んでいた担当者がいました。日常業務に追われて手が回らないのです。
そこで私は、現場のコミュニケータを全員巻き込んでFAQコンテンツを整備することを勧めました。一人が1日たったひとつのFAQを作成すれば、100名で月20日稼働、1ヶ月でなんと2,000個のFAQが完成します。日夜お客さまと直に接しているコミュニケータの感性で作成されたFAQはやはり活きています。
さらに、回答作成のためにコミュニケータの「資料を調べる癖」を育み、回答をチェックするSVやトレーナーは個々のスキルの過不足が把握でき、指導育成のヒントにもなります。そして、何よりも「皆で作り上げたFAQ」という共通財産を短期間で作り上げた達成感・・・と、まさに一石二鳥、三鳥という大きなイベントになったのです。
著者プロフィール
コールセンター専門コンサルタント 鈴木 誠 (すずき・まこと)
コールセンター新規設立やセンターの現状分析、改革に関するコンサルティング業務の中で、戦略立案、センターマネジメント確立、人材育成、品質向上、生産性アップ、スクリプト開発など幅広いノウハウを実務レベルで提供。セミナー講演やJTAスクール「スクリプト作成講座」の常任講師も担当。
*本記事は過去に公開した内容を再編集して掲載しております。