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人材活用のヒント コールセンター編 第15回 (最終回) センター長のミッションと役割
1.センター長のミッションとは
いまコンタクトセンターは、多くの顧客と直に双方向で接触できる貴重なセクションとなっています。そこに蓄積される膨大な量の顧客の声(VOC)をきちんと分析活用できるか否かは企業そのものの存続にも関わってきます。だからこそ、適切な生産性を前提とした顧客対応品質の維持向上が求められているのです。
しかし、最も重要なセクションであるにも関わらず、センター長は人事政策上3年程度で異動になることが多いようです。3年ごとに運営方針が変わってしまうのでは働いているSV・コミュニケータはたまったものではありません。
就業条件や評価制度すら変わってしまうことも少なくない中で、結果的に方針変更についていけない、ということで離職に繋がるケースも多いのです。原因の多くは、社内でのセンターの役割と位置づけが不明確のまま、運営自体はアウトソーサーにまかせ切りという現実にあります。
アウトソーサーを使っていても、センターの運営方針にブレがなく、きちんとSV・コミュニケータ全員にそれを浸透させ、チームパワーを引き出すことがセンター長の最大のミッションです。
2.センター長に求められる行動
センター長に任命されたからには、“どうせ3年で異動になるから”、“あと1年で定年だから”、 “それまではトラブルなく無難に過ごしたい”という感覚は払拭してもらいたいものです。働いているSV・コミュニケータより、本社(会社の上層部)にばかり気を遣っているセンター長では誰もついてはきません。
たとえ派遣であっても正社員のごとく接し、SVやコミュニケータの人間的成長を願い、深い愛情を持ってサポートする視点が必要なのです。時には叱ることも必要でしょう(怒る、ではありません)。SV・コミュニケータには常に目を向け、耳を傾け、適度な権限を与え、彼らを守るために会社と折衝する覚悟が必要なのです。上層部や関連部署との交渉、予算獲得のための戦いもセンター長の重要な役割です。
そして、自社センターの運営方針は何なのか、会社の目指す方向はどこなのかをSV・コミュニケータに常に語り続けることが必要です。顧客応対ルールや就業上の取り決めがきちんとスタッフに浸透し、マインドセットされていれば仮にセンター長が代わっても組織は活き活きと活動し続けることができます。
そのためには、後任者へのきちんとした引継ぎ、SV・コミュニケータが活き活きと仕事ができる環境づくり(評価制度、コミュニケーション体制、ファシリティなど)、明確な採用・教育育成計画、そしてこれらを実現させるための予算稟議折衝力、社内関連部署やアウトソーサーとの調整力が重要なカギとなるのです。
3.センター長に必要な資質とは
最後にセンター長として求められる資質を整理しておきます。
(コンタクトセンターマネジメント誌2007.6月号記載記事より)
(1)経営者的発想でセンター運営ができる能力
- 品質と効率化(生産性)のバランスを考慮したコールの最適化を考える
- コスト意識を持ち、センタービジョンを語れる能力
(2)現状分析・戦略立案ができる能力
- KPIの定量的把握と改善のための戦略を描ける能力
- 業界動向、最新IT技術の動向把握、競合他社の情報収集能力
(3)問題解決・折衝能力
- 採用や離職、ACDデータ、品質管理、CS・ES、VOC(顧客の声)等の分析力
- 社内関連部署やアウトソーサーとの折衝、経営陣とのネゴシエーション能力
(4)リーダーシップ・組織マネジメント能力
- センター改革の牽引力と組織マネジメント能力
- SV業務の細分化とスペシャリスト育成のための組織つくり
(5)コミュニケーション能力
- SV、コミュニケータ一人ひとりとのコミュニケーション推進
- モチベーションマネジメントの理解と実行
(6)スタッフ育成能力
- 「最終責任は自分」を前提としたスタッフの自主行動の醸成
- 業務上の障害やトラブルの除去、役割に応じた権限の委譲
上記資質を初めからすべて備えているセンター長はなかなかいません。しかし、少しでもその域に達するべく日々惜しまない努力と自己研鑽が大切です。SV・コミュニケータとともにセンター長も成長していくのです。
頑張れ!センター長!
4.最後に
15回にわたって連載してきたこのコラムも一旦ここで終了とさせていただきます。連載中に数多くの励ましの言葉、お問い合わせをいただきありがとうございました。ここまで連載できたのも皆様の熱いご支援の賜物です。私自身はどこまでもセンター現場の人間です。いつの日かまた皆様とコールセンターの「現場」にてお会いできることを楽しみにしております。ありがとうございました。
著者プロフィール
コールセンター専門コンサルタント 鈴木 誠 (すずき・まこと)
コールセンター新規設立やセンターの現状分析、改革に関するコンサルティング業務の中で、戦略立案、センターマネジメント確立、人材育成、品質向上、生産性アップ、スクリプト開発など幅広いノウハウを実務レベルで提供。セミナー講演やJTAスクール「スクリプト作成講座」の常任講師も担当。
*本記事は過去に公開した内容を再編集して掲載しております。