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働き手の離職理由、初めて「報酬」を抜き「ワークライフバランス」が1位に―会社に求めるものに世代差
さまざまな施策を打っても、採用も定着も難しさを増すばかりだと感じる企業も多いのではないでしょうか。その原因は、働き手が会社に求めるものが、想定より速く変化しているためかもしれません。最新の調査によると、会社を辞める最大の理由は、長年トップだった「報酬」を抜き、初めて「ワークライフバランスの欠如」になりました。
こうしたさまざまな「労働」に関する変遷をまとめた調査結果、世界34の国と地域で実施される世界最大級の調査「エンプロイヤーブランドリサーチ2026 日本版」が発行されました。本記事では調査結果をもとにして、企業が向き合うべき働き手の本音について、世代と職種の切り口で読み解きます。
ついに逆転!離職を決断する最大の引き金は「報酬」から「ワークライフバランスの欠如」に
日本の転職市場は、半年以内に転職を計画する人は14%で、過去半年で実際に転職した人は7%と、流動性の低い状態が続いています。
一方、離職理由に着目すると、これまで長くトップだった「不十分な報酬」を抜き、「ワークライフバランスの欠如」(33%)が初めて1位となりました。

近年、労働者のワークライフバランスに対する意識が高まっていることが裏付けられました。時短勤務やリモートワークなど、制度の整備に力を入れる企業は増えましたが、制度そのものより、心身が健康に保たれ、無理なく働き続けられることを働き手は重視しています。
実際、健全なワークライフバランスを支える要素として最も多く挙げられたのは、福利厚生の手厚さではなく「休暇と心身の回復」でした。形だけの制度ではなく、日々の実感としての回復が求められていると言えそうです。
もはや会社にしがみつく時代ではない。若年層の捉える「雇用の安定」
今年の調査では、会社に求めるものの世代間ギャップについても明らかになりました。たとえば、長期的な雇用の安定を重視する割合は、X世代では53%にのぼる一方、ミレニアル世代は46%、Z世代では38%と、若くなるほど下がっていきます。一見すると、若い世代は安定を求めていないように映ります。そもそも若い年代は、転職に対するハードルが低く、積極的な傾向も見られますが、実は安定への関心が薄いのではなく、求める安定の定義が変わってきていると言えそうです。
若手は、安定した雇用や組織の盤石さよりも、「自身の学習・成長の機会と市場価値の向上」を重視する傾向が見られます。エンプロイアビリティ、すなわちどこでも通用する力を大切だと考えるZ世代は29%にのぼり、「企業の評判」を重視する割合も、Z世代は27%と、上の世代の約22%より高い数値になりました。
また、デジタルに親しむ若い世代を含め、求職の場面では依然として「人との接点」が重視されています。仕事を探すプロセスで、担当者と直接やりとりすることを重視する人は、全体の52%で、半数超となりました。一方、GeminiやChatGPTといったAIサービスを求職チャネルとして使う人は、全年代の9%にとどまっています。こうした転職の情報収集において、AIの活用はまだ限定的と言えます。求職者が「人との直接の繋がり」を求めている現状を考えると、採用の接点をすべて自動化するのは、逆効果になりかねません。
どこでも通用する力を身につけ、成長し続けることを「安定」と捉えるZ世代は、今の職場に不満がなくても、より成長できる場があれば動くことをためらわない傾向にあります。つまり満足度の高さや手厚い待遇だけでは、若手をつなぎとめられないと言えるでしょう。「ここにいれば市場価値が高まる」という実感と、それを裏づけるだけの透明性あるコミュニケーションが引き留めるツールになると考えられます。
「給与」か「働き方」か。職種タイプで異なる離職の引き金
本調査では、働き手を「デジタル人材」「専門職人材」「現場・事務系人材」という3つの職種タイプに分けて分析しています。
会社選びで重視する点を見ると、
- 給与
- ワークライフバランス
- 職場の雰囲気の良さ
の3項目は、どの職種でも優先事項となっています。
ただし内訳には職種タイプにおける差が見られます。たとえば給与を重視する割合は、デジタル人材・67%/専門職人材・60%/現場・事務系人材・54%。ワークライフバランスを重視する割合は、専門職人材・50%/現場・事務系人材・43%などです。
一方、対象職種の回答者に絞って分析すると、離職理由として全職種で共通して高いのは、「仕事内容への興味の欠如」(全職種平均で33%)です。ただし、デジタル人材は「報酬の低さ」(39%)をより強く意識する一方、専門職人材と現場・事務系人材は「ワークライフバランスの欠如」(約34%)を離職の理由として挙げています。
この傾向から、デジタル人材にとっては報酬や成長の手応えを示すこと、専門職・現場系には働き方の持続可能性を感じてもらうことが、定着のカギになると考えられます。こうした職種タイプの傾向を見極め、一律ではない施策を実行することが近道だと言えるでしょう。
働き方そのものにも、職種タイプの違いは表れています。出社とリモートワークを組み合わせたハイブリッド勤務の割合が、デジタル人材で72%にのぼる一方、専門職人材は26%、現場・事務系人材は16%にとどまります。柔軟な働き方が機能しやすい職種と、職務上なじみにくい職種の違いを踏まえることも大切です。
なお、業種別のデータについても集計を行っており、その分析も後日公開予定です。
自社の現在地を世代や職種によるギャップから分析する
働き手が会社を選ぶ理由も、辞める理由も、1つではありません。世代によって「何を優先するか」、職種によって「何がきっかけで退職を決めるか」は変わります。したがって、自社の人材を理解するためには「どの世代が、どんな仕事をしているか」の2つの方向から分析する必要があります。
「エンプロイヤーブランドリサーチ2026 日本版」では、働き手が企業に求める12の決定要因(EVPドライバー)を、世代別に収録しています。自社の従業員価値提案(EVP)のどこに強みがあり、どこにギャップがあるのかといった診断・分析にも応用できます。
本記事で触れた数字の内訳や、定着に向けた具体的なヒントは、レポート本編で確認いただけます。下記より無料でダウンロードください。
3つの視点でより深掘り!ダウンロードして確認したい「エンプロイヤーブランドリサーチ2026 日本版」
本記事で紹介したのは、4,464人を対象にした調査のごく一部です。31ページで構成されるレポートには、働き手の本音を多角的に映し出すさまざまなデータが収められています。以下に、ここまで紹介した以外の3つの視点について紹介します。
男女で「見ているもの」は違う
給与を重視する割合は女性のほうが高く(女性62%/男性53%)、女性は離職理由に「柔軟な働き方」や「職場の雰囲気」を、男性は「仕事のやりがい」をより多く挙げています。
雇用の安定につながるポイントとして「透明性のあるコミュニケーション」を重視する割合でも、女性が男性を上回りました。一律に制度設計を行うと、働き手の半数の希望に応えられなくなるかもしれません。
リモートワークが根づかない本当の理由
日本でリモートワークをしている層は、約2割にとどまっています。その理由の44%は「職務上、不可能」だからという職務設計の問題でした。さらに、リモートで働く割合は高学歴層が中・低学歴層の2倍以上と、機会そのものにも差が生まれています。
制度を掲げるだけでは、柔軟な働き方はなかなか浸透しないと言えそうです。
有効な福利厚生は「派手な制度」ではない
福利厚生を重視しようとすると、手厚い手当やキャリア支援を思い浮かべられがちです。しかし、働き手は「快適で便利な職場環境」(76%)、次いで「休暇・欠勤制度」(75%)という目の前の働きやすさを最も重要だと回答しています。
健康支援やキャリア開発といった長期的に有効と考えられる制度よりも、まずは日々の基本的な労働環境の向上が求められていると言えるでしょう。
ワークライフバランスも福利厚生も、スローガンとして掲げることは容易です。しかし働き手は、その約束が日々の現場で裏切られていないかを、冷静に見ています。そうした働き手のうち、どの世代・どの職種に対してアプローチすべきなのか。その具体的な現在地を知るヒントとして、ぜひ最新のフルレポートをご活用ください。