労働者が安心して働ける職場環境を維持するために。企業が果たす安全衛生の責任

職場での労働災害を防ぎ健康を確保するための安全衛生活動。近年ではESG経営や企業のサステナビリティへの取り組みの一環としても注目を集めています。派遣スタッフの安全と健康を維持するための取り組みを、ランスタッド 業務管理部 安全衛生推進室の千徳 勝氏に伺います。

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安心して働ける職場作りのための安全衛生

――「安全衛生」とはどのような取り組みでしょうか?

職場には思いもよらない危険が潜んでいます。ランスタッド社内には「安全衛生規定」があり、職場に潜む「危険ポイントの洗い出し」を義務化しています。危険ポイントは気付きにくいものですが、現場で実際に作業しているスタッフが「ちょっと怖い思いをした」ということは意外とあるものです。

危険ポイントを完全にゼロにすることは難しいですが、ゼロに近づけるために、起きてしまった事故や日常業務の中にあるインシデントをデータとして蓄積しています。データを残していくことで、派遣先の職場ごと・ランスタッドの支店ごとの財産になり、新しい派遣スタッフの方が入職する時には、そのデータを安全教育に活用することができます。

派遣スタッフは派遣元の私たちから見えないところで働いているため、安全管理に難しさがあるのは事実です。さらに派遣スタッフの安全衛生に関する主たる責任は派遣会社にありますが、もし派遣先に危険ポイントがあったとしても、私たちの判断だけで対策を講じることはできません。危険ポイントを洗い出し、もし環境リスクがあれば派遣先企業に改善をお願いしています。

――具体的にどのような環境リスクがあるのでしょう。

例えば派遣スタッフが業務中に熱中症になった場合、本人の体調管理に問題がある場合もあります。しかし同じ職場で何人も熱中症になったり、「暑くて我慢できない」「室温が高すぎて辛い」などの声があったりする場合は、環境リスクが高いと考えられます。そういうケースでは安全衛生推進室が支店経由で詳細をヒアリングさせていただき、派遣先企業に個別に改善案を提案させていただいています。

具体的には、ペットボトルの持ち込みが禁止されていた職場でも熱中症予防のためにペットボトルを手元に置いて給水することを許可していただいたり、屋外であればファン付きの作業服を支給していただいたり。
他にも床が滑りやすい工場では転倒を防ぐために滑りにくい床材に塗り替えていただいたり、危険な箇所には蛍光塗料を塗っていただいたりなどです。

――安全衛生推進室はどのような役割を果たしていますか。

派遣スタッフの皆様に、安全にケガなく健康に働き続けていただくことが安全衛生推進室の目的です。労働安全衛生法で定められているのは最低限のルールでしかなく、派遣スタッフの皆様が安心して働ける環境を維持するには、それだけでは不十分です。

ランスタッドでは安全衛生推進室が主催して、毎月「中央安全衛生委員会」の会議を開き、全国の各拠点で起きた事故などをすべて集約して共有しています。各支店の現場において同様のリスクがあれば事前に事故防止の対策を講じるための仕組みです。

他にも支店のコンサルタントに安全衛生に関するアドバイスやフィードバックをしたり、危険な現場の情報があれば直接派遣先へと出向き、企業の担当者様とお話しして改善を要望したり。万が一労働災害が起きた場合には、必要書類を作成するなどの対応をしています。

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身近に潜む労働災害リスク

――実際にどのような労働事故が発生していますか?

定められた場所以外に部材が放置されていてつまずいて転倒したり、作業標準を守らずに手順を省いてケガをしたりするケースは多くあります。また、不調を感じながら無理をして出勤し、作業中に意識を失って転倒したことで大ケガを負ってしまうこともあります。

重要なのは、整理・整頓・清掃・清潔・躾の5Sをしっかりと徹底すること、安全に作業するために設定されている作業標準を守ること、そしてスタッフ自身の健康管理です。
ランスタッドでは、体調不良の際は無理せずに休むよう派遣スタッフに伝えています。しかし周囲に迷惑を掛けないようにとか、休んだら給料が減ってしまうという理由から、なかなか休みづらいのが現実のようです。体調が万全でない時は立ち仕事から座り仕事に配置換えするなど現場でも可能な限り対処していただいていますし、コンサルタントとコミュニケーションを取りやすいよう気軽にチャットできるLINEも活用しています。

――ケガ以外の労働事故ではどのようなものがありますか。

グループのメンバーが入れ替わったり上司が異動になったりすると、派遣スタッフがメンタルに不調をきたすケースは珍しくありません。性格が合わないとかトラブルが起きたということではなくても、環境が変化しただけでストレスを感じてしまう方もいらっしゃいますし、それをきっかけにメンタル系の疾患につながることもあります。

派遣スタッフの方が孤独感を感じたり、困った時にどうすればいいのか分からないといったことがないよう、ランスタッドでは派遣スタッフに寄り添うサポートを目指しています。また、一部で導入している「心の診断アプリ」では、心と身体のコンディションを定点観測し、不調やモチベーション低下の予兆を捉えています。
参考:ランスタッドケア

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労働災害を減らす三位一体の取り組み

――労働災害はどうしたら減らせますか。

5Sの徹底はもちろんですが、危険ポイントにはポールやコーンの設置、蛍光塗料の塗布などで体感的に「危険」を認知できる対策をしていただけるよう、派遣先企業にもご協力をお願いしています。特に中高年の方が多い職場では、わずかな段差でもつまずいて転倒し、骨折してしまう事故が多く発生しています。

実際に社員が現場を見たり、現場で働いているスタッフにヒアリングを行ったりして、スタッフの目線で危険ポイントをチェックすることが欠かせません。さらに全国の他の支店での事例から環境リスクを検討して改善のご提案をさせていただくこともあります。環境リスクの改善は派遣スタッフの安全と健康にために、安全配慮義務としてご検討いただければと思います。

――派遣先企業の協力が欠かせないのですね。

お陰様で多くの派遣先でご協力いただいており、ランスタッドは「安全への配慮意識が非常に高い人材会社」としてご評価いただいています。なかにはコストがかかる等の理由で環境リスクへの対応を渋られることもありますが、その場合でも派遣スタッフの皆様の安全衛生についてはランスタッドが責任を持って対応しています。

一方で、どんなに環境リスクを減らしても、労働災害は起こる可能性があります。派遣スタッフの皆様にもしっかりと健康管理をしていただき、作業標準をきちんと守ることを徹底していただかなければなりません。入職時の研修だけでなく、就業中も安全衛生に関する情報発信やコミュニケーションを通じて、理解を深めていただけるように取り組んでいきます。

また、万が一労働災害が発生した場合には、派遣スタッフの皆様が不利益を被ることがないよう、迅速に労災申請の手続きを進めていきたいと考えています。雇用主であるランスタッドが労働災害を証明することになりますが、事故状況の詳細については必要に応じて派遣先企業にも書類作成のご協力をお願いしております。

 

まとめ

  • 派遣スタッフの災害防止と健康維持の主たる責任は派遣会社にある。
  • 派遣スタッフが安心・安全して働けるよう環境リスクの低減が必要。
  • 災害防止と健康維持のためには、5Sや作業標準などの基本が大切。
  • 労働災害を防ぐためには、派遣先・派遣スタッフ・派遣会社の協力が欠かせない。

 

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取材:フリーライター 川村千里

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