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2026年の障がい者雇用率引き上げに向けて 企業がやっておきたい対策は?
※2024年12月時点の情報です。
障がい者雇用は「法定雇用率引き上げ」で「除外率が下がる」?
障がい者雇用の「法定雇用率」、「除外率」とは
「障害者雇用促進法」では、一定規模以上の企業に対して、従業員に占める障がい者の割合を義務づける「法定雇用率」が定められています。雇用義務を果たしていない事業主に対しては、ハローワークから行政指導が行われるほか、法定雇用率未達成の企業のうち常用労働者100人超の企業からは、障害者雇用納付金が徴収されます。
また、従来は障がい者の就業が難しいと認められた業種に対し、雇用すべき障がい者数を控除する「除外率制度」が設けられていました。しかしこの制度は、平等化の観点から2004年に廃止されており、現在は経過措置が取られています。
障がい者雇用については、下記の記事も参考にしてみてください。
「法定雇用率引き上げ」とは?
法定雇用率は、2024年4月に事業区分「民間企業」の場合で2.5%に引き上げられ、従業員規模が40名以上の企業に障がい者1名以上の雇用義務が課せられています。
なお、2026年7月には、さらに2.7%(同区分の場合)まで引き上げられる予定で、これにより37.5名以上の企業に障がい者1名以上の雇用義務が発生することになります。
「除外率が下がる」とは?
先述の通り、除外率制度はすでに廃止されていますが、免許や資格が必要な業種、安全面の配慮が必要な業種などは「除外率設定業種」とされ、業種ごとに除外率を設定し、段階的に引き下げていき縮小する特例措置が取られています。
実際にこれまで、2004年4月と2010年7月にそれぞれ一律10ポイントの引き下げが実施されました。また、2025年4月には、一律に10ポイントの引き下げが決定しています。
「引き上げ」と「下がる」ことに相関関係はない
「法定雇用率引き上げ」は一定数以上の常用労働者を抱える全企業が対象となっていますが、その一方で、「除外率が下がる」のは当然、除外率設定業種のみとなります。
つまり「法定雇用率」と「除外率」は別の要素であり、「法定雇用率引き上げ=除外率が下がる」といった相関関係はありません。いずれの場合も障がい者雇用率に関する基準がより厳しくなるものであり、企業に対しては積極的な取り組みが求められます。
対応のポイントは「身体障がい者以外への雇用拡大」か
障がい者雇用市場は「身体障がい者中心」からシフトしつつある
厚生労働省が発表した「令和5年 障害者雇用状況の集計結果」にある「障害種別雇用状況」から、民間企業における各障害区分別の内訳を算出すると、身体障がい者(56.1%)、知的障がい者(23.6%)、精神障がい者(20.3%)となっていました。
法定雇用率は従来通りではありますが、「令和4年 障害者雇用状況の集計結果」の同データと比較すると、身体障がい者の割合は前年より2.2%減り、知的障がい者が0.2%、精神障がい者が2.4%増えています。
ちなみに、令和以降の数年にわたり「障害種別雇用状況」を見ていくと、身体障がい者の割合が前年より微減する傾向が出ており、徐々に障がい者雇用市場に変化が現れているものと見られます。
厚生労働省 令和元年(2019年)~令和5年(2023年)各年度の「障害者雇用状況の集計結果」をもとに独自に作成
精神障がい・知的障がいへの雇用拡大で基準を満たす
こうした現状に加えて、今後法定雇用率が上がる中で、身体障がい者のみで法定雇用率を満たしていくことは従来よりも難しくなる状況が考えられます。
徐々に増えているとはいえ、まだ雇用が進んでいない状況にある精神障がい者・知的障がい者への雇用拡大が、法定雇用率を満たすポイントになってくると思われます。
障がい者雇用拡大へ向けての取り組み
「法定雇用率を達成するため」ではなく「その人の特性を戦力に」
障がい者雇用推進を「義務を満たす」ことを主として捉えてしまうと、「主事業や既存社員への影響が少ない部署へ」といった消極的な考えに偏りやすくなってしまいます。
しかし、例えば発達障がい者は「関心の強い分野に対する集中力が高い」、「初対面の人と打ち解けやすい」など、その人の障がい特性によってさまざまな強みが見られ、プログラマーや実演販売などの専門職として活躍する人も少なくありません。
企業側が、障がいやその人ならではの特性を理解することで「戦力」としての採用もできるのです。
テレワーク・在宅勤務による雇用も検討して
「職場へ通勤する」ことがハードルになっている障がい者は少なくありません。
そう聞くと重度の身体障がい者が連想されがちですが、例えば電車に乗ることでパニック発作が起きる精神障がい者や、家の中では話ができても職場などの社会的な場面で話せなくなる「場面緘黙(かんもく)症」がある精神障がい者なども、在宅勤務の形を取ることで働ける可能性が高まります。
企業にとっても、オフィスのバリアフリー化などに取り組むハードルが下がる面があります。
さまざまなメリットのある「もにす認定制度」・助成金も活用して
障がい者の雇用促進や安定した雇用に関する取り組み状況などに対し、優良な企業を厚生労働大臣が認定する「障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度(もにす認定制度)」というものがあります。
認定された企業には、認定マークが使用できる、日本政策金融公庫の低利融資対象となる、厚労省・労働局・ハローワークに周知広報してもらえるなどのメリットがあり、企業イメージの向上と併せて、さらなる障がい者採用推進も期待できます。
また、「障がい者を雇い入れた場合などの事業主に対する助成」も、さまざまな制度が用意されています。
障がい者雇用のための環境整備として、ICT活用に対しても費用助成されるケースがありますから、DX推進の面からもぜひ検討したいところです。
障がい者雇用の成功事例
在宅勤務で集客のためのPC作業に専従
不動産業のA社では、遠隔地に在住する精神障がい者の社員が、完全在宅勤務で集客のためのPC作業を担当しています。
業務内容はチラシに掲載する間取り図の作成や写真の補整、物件情報のホームページへの反映、VRコンテンツの作成や編集など多岐にわたります。従来、営業職や事務職が主業務の間を縫ってこなしていた業務に専任者がつき、会社全体の生産性が向上しました。
現業系企業でメンテナンス専任者に
土木・建築のB社では、かつては「危険を伴う業種なので、自社で障がい者雇用は困難」という考え方が根強くありました。
しかし全部署の協力を得て仕事の洗い出しに取り組み、「メンテナンス系業務を任せる」というアイデアにたどり着きます。
採用にあたっては就業場所への送迎体制を整備。障がい者だけでなく支援担当者も採用して研修を実施し、ジョブコーチの支援なども取り入れて体制を整えました。
「できること」を軸に考える障がい者雇用を
身体障がい以外の障がい者雇用は、オフィスでのアシスタント業務や軽作業などでなければ難しいと考えられがちです。しかし、思い切って発想を転換し「自社の主業務などに活かせる特性がないか」、「任せられそうな業務を見落としていないか」を検討することで、雇用拡大の道も開けるでしょう。
障がい者の募集はハローワークや特別支援学校へ求人票を出すといった方法に加え、国から認定を受けた職業紹介事業者を通して紹介を受けるという方法もあります。
ランスタッドはこの「国から認定を受けた職業紹介事業者」であり、正規の雇用給付金を扱えます。ご要望をきめ細かくヒアリングし、企業ニーズに合わせて障がい者とのマッチングを実現。
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※2024年12月時点の情報です。