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なぜ、制度だけでは組織が変わらないのか? ED&I推進を阻む「アンコンシャスバイアス」の壁と、乗り越えるための第一歩
「エクイティ、ダイバーシティ&インクルージョン(ED&I)を推進し、制度も整えた。それなのに、なぜか職場の空気は変わらない、女性管理職がなかなか増えない、採用候補者の多様性が広がらない…」
多くの企業が、このような「見えない壁」に直面しているのではないでしょうか。その原因は、私たち一人ひとりの中にあるのかもしれません。「アンコンシャスバイアス」とは、誰もが持っている「無意識の思い込み」や「偏見」のことで、この見えない壁の正体ともいえます。
この根深く、しかし目には見えにくい問題は、知らず知らずのうちに誰かの可能性を奪い、組織の成長を妨げている可能性があります。実際に、今回のイベント参加者へのアンケートでは、ほぼ全員が「チーム内のコミュニケーション」のような日常的なやり取りの中でアンコンシャスバイアスが起こりうると回答しており、多くのビジネスパーソンがその影響を身近なものとして認識していることが示唆されます。
7月28日、ランスタッドがオランダ王国大使館、オランダ商工会議所(NCCJ)、エヌエヌ生命保険株式会社と共催した人事・採用ご担当者様向けのオンラインイベント「オランダ企業と考えるアンコンシャスバイアス45分」では、この「アンコンシャスバイアス」をテーマに、一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所 認定トレーナーの資格を持つエヌエヌ生命保険株式会社の福山様、片山様をメインスピーカーとし、その正体と乗り越え方について探りました。本記事では、当日のイベント内容を振り返りながら、なぜ今アンコンシャスバイアスへの理解が重要なのか、そしてそれが職場やビジネスにどのような良い影響をもたらすのかをご紹介します。
ED&Iの最大の障壁「見えにくい」アンコンシャスバイアス
近年、多くの企業でエクイティ、ダイバーシティ&インクルージョン(ED&I)への取り組みが加速しています。女性管理職比率や障がい者雇用率など、具体的な数値目標を掲げて推進している企業も多いのではないでしょうか。
一方で、今回テーマとなった「アンコンシャスバイアス」は、ED&Iの取り組みが始まった2000年代から少し遅れて、2010年頃から注目され始めた概念です。
アンコンシャスバイアスとは、誰もが持っている「無意識の思い込み」や「偏見」のこと。過去の経験や見聞きした情報から、知らず知らずのうちに「こうあるべきだ」「普通はこうだ」と決めつけてしまう思考のクセを指します。
このバイアスの難しい点は、ED&Iの指標のように「数値化しにくく、改善度が見えにくい」ことにあります。自分では意識していないため、その存在に気づくこと自体が困難なのです。
特に、日本は単一民族・文化で発展してきた歴史的背景から、多様な価値観に触れる機会が他国に比べて少なかったといえます。その結果、知らず知らずのうちに画一的な価値観が刷り込まれ、無意識の思い込みが生まれやすい環境にあったのかもしれません。
「母親なのに」「男だから」— 日常に潜むバイアスのリスク
イベントでは、「バスに乗っている男性は何人?」というクイズを通して、バスの運転手は男性、子供を連れている親は女性、など、私たちがいかに無意識の思い込みにとらわれているかを体感するワークが行われました。
こうした思い込みは、時として意図せず相手を傷つけたり、誰かの可能性を狭めたりするリスクをはらんでいます。参加者アンケートで「職場で実際に感じたバイアスのタイプ」を尋ねたところ、「年齢に関するもの」が最も多く、次いで「性別に関するもの」と「ライフスタイルに関するもの」が同数で続きました。この結果は、職場において特に年齢、性別、そして個人の生き方に関する無意識の思い込みが根強く存在していることを示しています。
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- 「お母さんなのに、お子さんのことより仕事が大事なの?」
- 「女性だから、細かい作業が得意でしょう」
- 「男なんだから、これくらいの残業は平気だよね」
このような言葉に、悪気はないのかもしれません。しかし、言われた側は「母親は家庭を優先すべき」「女性はサポート役」といった押し付けを感じ、尊厳を傷つけられることがあります。また、管理職が「彼女には子育てがあるから、この大きなプロジェクトは任せられない」と無意識に判断してしまえば、それは部下のキャリアにおける大きな機会損失につながります。
ビジネスの現場では、こうしたバイアスが個人の能力発揮を妨げるだけでなく、新しいアイデアやイノベーションの芽を摘み、組織全体の成長を阻害する「見えない壁」となってしまうのです。
まとめ:バイアスへの「気づき」が、職場とビジネスの未来を拓く
では、どうすればこの見えない壁を乗り越えることができるのでしょうか。
その第一歩は、「自分にもアンコンシャスバイアスがあるかもしれない」と認め、自身の思考のクセに気づこうとすることです。
アンコンシャスバイアスを意識し、自分の決めつけや思い込みに気づけるようになると、職場やビジネスに以下のような良い影響が生まれます。
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今回のイベントは、参加者の皆様が自身の内なる「見えない壁」に気づき、それを乗り越えるためのヒントを得る貴重な機会となりました。
ランスタッドでは、今後も皆様の組織と人材の成長に貢献するイベントを企画してまいります。ご参加いただいた皆様、そしてご登壇いただいた福山様、片山様、誠にありがとうございました。