- 総合人材サービス ランスタッドTOP
- 法人向けHRブログ workforce Biz
- 職場の女性:マネジャーおよびリーダーによるリテンション&キャリアアップ促進法
職場の女性:マネジャーおよびリーダーによるリテンション&キャリアアップ促進法
COVID-19(新型コロナウイルス感染症)パンデミックの発生から1年以上経過し、職場および労働者には大きな変化が生じています。数百万人の従業員が職を失い、2020年4月には失業率が14.8%とピークに達しました(※1)。雇用に関する最新のレポートによると、米国は今なお1,000万人の雇用が失われています(※2)。と同時に、多くの人々が家族や個人の責任を果たすための退職という苦渋の決断を下しています。ここ数年にみられた一般的かつ不幸な(そして恐るべき)トレンドとして、こうした事態が女性およびそのキャリアに驚くべき影響を及ぼしていることが挙げられます。
コロナ禍初期にみられたレイオフは、女性労働者が多い業種を直撃しました。パンデミックでもっとも影響を受けた業種の多くには外食、教育、保育および保健など一般的に女性労働者の比率が高い対人活動が含まれています。米ピュー研究所(※3)によると、レジャーおよびホスピタリティ、教育、医療サービスならびに小売業は、2020年2~5月に非農業部門全体で失われた雇用の59%を占めています。また、これらの業種に従事する女性の比率は47%で、同28%の男性よりも女性の失業リスクが高くなっています。
さらに、パンデミック発生以来、有色女性(※4)は労働参加率における最大の急上昇および急降下に直面しているほか、回復の兆しは他よりも遅れています。2021年3月初旬時点では、2020年2月比での全体的雇用数減少は黒人女性が9.7%、ヒスパニック系女性が8.6%、白人女性が5.4%でした。
このパンデミック期間中にレイオフの影響を受けなかった女性労働者の多くは、調整を要する在宅勤務という新たな環境下で、増大する育児責任と向き合いながら自分の仕事を維持しようとしています。今や女性にとって家庭と仕事という生活上の境界線が曖昧になっており、女性は双方から受けるプレッシャーの中間で押し潰されています。私は先日、母熊が子熊と共に通りを渡ろうとしている動画を見た(※5)のですが、自分のキャリア開発のためのわずかな時間を捻出しようとしながら仕事と自宅学習の両立という日々を過ごしているすべての「母熊」のことが頭をよぎりました。このような困難極まりない二律背反的行動は、女性の4人に1人(※6)がこのコロナ禍で仕事をすっぱり辞めるかキャリアアップを諦めるかという苦渋の決断を検討しているという驚きの結果につながっています。
そして当然のことながら、SHRMの働く女性に関する調査(※7)によると、米国人女性労働者の31%が自分の知り合いの中に育児責任を理由としてパンデミック中に自ら仕事を辞めた女性がいるとしています。
全米女性司法支援センターによると、失業と自主的退職の狭間で米国における女性の労働参加率は1988年以降最低レベルの(※8)57%に減少しています。大局的に見ますと、女性の労働参加率はビッグヘアーが流行っていたレーガン大統領時代以降で最低となっており、その回復は2024年以降と予想されていますが、これはパンデミックを原因とする男性の失業が回復してから丸2年後になります。
これらの驚くべき数字を踏まえ、女性をより良くサポートし継続的な労働参加およびキャリアアップを促進させるために組織は何ができるでしょうか?以前のブログ投稿で(※9)弊社は女性従業員をサポートするために組織レベルで実行可能なステップを紹介しましたが、それらと同様に重要なのが、すべての従業員が個人および家族の責任を犠牲にすることなく成長に関する機会均等を享受可能な環境をマネジャーおよびチームリーダーが作り出すことです。ここでは、私たちがコロナ禍で生き抜きすべての従業員にとって長期的に平等な職場の促進を続けるなかでマネジャーが検討すべき幾つかのベストプラクティスを紹介します。
率直さと透明性
この1年は、男性か女性か、両親か保育者か、管理職か一般社員かを問わず、すべての従業員が想像し得ない困難を突き付けられた年でした。しかし、多くの従業員はパンデミック自体がもたらした困難に直面しているかのように感じています。弊社は先日、女性史月間を記念してRandstad RiseSmartの顧客の1人と対話し、女性がキャリアアップの過程で直面している障害について率直に議論する機会がありました。同セッションでは、同僚に助けを求めたりオンラインチャットのステータスが「連絡可能」から「退席中」となったりしてしまうことから生産性に劣ることに罪悪感を覚えるとする女性がいた一方、就業日はひたすら仕事をこなして感覚が麻痺している、ロボットのようだと感じている女性もいました。現実には、パンデミック関連のストレス要因やディスラプションと無縁な従業員はいないのです。
最新のデータ(※10)によると、パンデミックが発生からおよそ1年で従業員全体の集中力は62%も低下していました。マネジャーやチームリーダーはこの事実を認め、従業員が向き合っているパンデミックがもたらした問題と真摯に向き合うことが重要です。マネジャーがより高い透明性とすべての従業員が直面している問題に共感する姿勢を示せば、従業員は自分が悪戦苦闘していることを認め易くなって助けを求めることにも躊躇しなくなり、マネジャーに対する評価を高めるでしょう。
関連するコンテンツ:危機時のリーダーが行うべき透明性あるコミュニケーション。(英語ページ)
柔軟な労働形態の奨励
CNBCとSurveyMonkeyが実施した調査(※11)によると、女性労働者の15%が常に疲労困憊、38%は疲労困憊な時もあると感じています。にもかかわらず、休暇取得や柔軟な労働形態の利用を躊躇する女性は大勢います。さらに同調査によると、女性労働者の39%は柔軟な労働形態を選ぶことで自身のキャリア目標に影響が出るおそれを懸念しており、子供を持つ18才未満の女性ではこの数値は53%に上昇しています。
組織には柔軟な労働形態を認める全社的ポリシーが存在するかもしれませんが、個々のチームでそうした柔軟さが認められる文化の確立はマネジャーにかかっている場合が多々あります。
柔軟な労働形態を奨励するための1つの選択肢が、子供のバーチャル学習の準備や年長の家族の通院など個人的または育児上の用事とバッティングした場合のブロックタイム設定です。例えば、夕方や早朝は働く両親にとって重要な時間であることが多いです。これらの時間は年少の子供が昼寝から目覚めたり、バーチャル学習が終了したりする時間であると共に、一般的には両親が夕食の準備をし、子供を寝かせる前に一緒に過ごす必要がある時間です。ここはミーティングNGの時間であるとチーム内に周知させることで、柔軟性を尊重する文化を生み出せる可能性があります。これにより、育児責任がある女性や他の従業員はアクセスと可視性の面で平等となり、特定の時間に「勤務」していないために罰せられることもなくなります。
さらなる柔軟性をもたらす他の方法としては、「ノー・ミーティング・フライデー」のようなミーティングを行わない日の設定があります。こうすることで従業員は邪魔されることなく自分の仕事に集中でき、就業時間外はメールのチェックも行わないと公約し、現在のような困難な時期にはメンタルヘルスや家族のケアのために時間を取ることができるようになります。
これらの取り組みを機能させるためには、業務で何があろうとも組織のトップマネジメントがノー・ミーティング・デーを遵守・励行する必要があります。また、マネジャーはすべてのミーティングを任意参加とし、必要な場合は従業員が反発を受けることなく仕事よりも個人や家族のニーズを優先できるようにすることを検討してもよいかもしれません。Zoomで学んでいる子供のために昼食を用意せねばならないとして女性マネジャー自身がミーティングを欠席する場合、欠席理由をチームに周知することは自分の用事を優先して構わないという強力なメッセージとなり得ます。こうした柔軟性を認める者が社内にいる組織では疲労困憊している従業員は減少し、育児中の従業員–特に女性–の職場における活動や生産性が維持されています。
関連コンテンツ:チームが働く両親をサポートするためのベストプラクティス(英語ページ)
ワーク・ライフ・バランス維持に関するインセンティブの提供
柔軟な職場環境の奨励という点では、チーム文化の醸成以外でのこれを広く浸透させる手段としてマネジャーから従業員へのインセンティブ提供も考えられます。企業には優れた言動を認め公表するための褒賞・評価プログラムがあります。大半のコンピューターOSは、従業員が自身の勤務時間を確認可能な週報を作成可能です。従業員にこうした報告書を提出させて、ノー・ミーティング・デーや就業時間後のメール禁止を守っている従業員にちょっとしたギフトカードを送って報いることを検討してみてください。
コロナ禍での家事増加を踏まえてマネジャーおよびリーダーが検討し得る手段には、家族と過ごすために休暇を取る従業員へのインセンティブとしての育児や補習、家事に関する俸給や払い戻しの提供があります。マッキンゼーが先日発表したデータ(※12)によると、世界的には育児や年長者の介護、料理、掃除など無報酬のケアワークの平均75%を女性が担当しています。
『フォーチュン』誌の医療業界におけるもっとも良い職場リストに選ばれたアボットファーマシューティカルズは、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)検査で重大な役割を果たしています。従業員をパンデミックという危機の解決に専念させるために、同社は自社施設の多くでのオンサイト型託児所の提供および従業員の子弟向けの個別指導の実施を続けています。同社HR担当EVPであるメアリー・モアランドによると、これらの福利厚生によって従業員のストレスは減少しており、同氏は先日『フォーチュン(※13)』誌で「非常に多くの働く母親たちが私のところにやって来て、『この会社で働けて幸せだ』と言ってくれました」と語っています。
関連コンテンツ:2021年におけるキャリア・ウェルネスの優先。(英語ページ)
平等なキャリア開発機会のサポート
多くの働く母親たち–および一般的には両親–にとって、この1年は生き抜くために仕事やバーチャル学習、家事に追われた日々でした。しかし、結果として、多くの女性にとってキャリア目標の追求は後回しになり、優先課題というより贅沢なこととみなされるようになってしまいました。実際、SHRMが実施した働く女性に関する調査によると、育児責任を有する女性従業員の27%(※14)がコロナ禍で自分のキャリア開発は抑制されていると感じています。ちなみに、男性のこの比率は10%でした。
退職やキャリアアップ目標の棚上げを問わず、こうした状況は職場における女性の機会均等に長期的影響を及ぼすおそれがあります。そして、パンデミックが沈静化し組織が徐々にオフィス勤務を再開し始めると、女性はさらに取り残されてゆくリスクがあります。
ガートナーが先日実施した調査によると、マネジャーの64%(※15)がパフォーマンス面ではオフィスワーカーはリモートワーカーよりも優れていると考えており、後者よりも前者により高い昇給を与える可能性が高いとしています。さらに、男性は職場に戻る傾向にあるが女性はリモートワークの継続を志向しているとCHROたちは語っています。男性がオフィス勤務に戻る可能性が高く、マネジャーがオフィスワーカーに対する偏見を持ち続けるとすれば、マネジャーは女性従業員を犠牲にして男性従業員を厚遇するおそれがあり、男女間のギャップ拡大が続くと予想されます。
現在および将来両面で男女間、さらにはリモートワーカーとオフィスワーカー間の公平な競争の場を維持する1つの方法としては、学習とキャリア開発に関する平等な機会の提供があります。これらの例としては全従業員を対象としたマイクロラーニング・コースや正式なスキリング・リソースの提供があり、これらを利用することで従業員は自分の時間に合わせて組織の成長と自分自身の長期的エンプロイアビリティ両方に役立つスキル開発が可能となります。さらに、従業員には社内のプロジェクトチームや短期業務で働く機会も与えられねばなりません。柔軟性と新たなスキルを学ぶための機会を提供しつつ会社に留まることを奨励するプロジェクトベースの仕事は、女性や家庭の事情で会社を辞める可能性を示唆しているその他の従業員にとって理想的なソリューションとなり得ます。しかし、ツールや機会へのアクセスの周知だけでは十分ではありません。ストレスを感じている従業員の多くには、マネジャーからの明示的な許可や奨励、そして従業員が自身のキャリアに専念するための時間を会社が用意することが必要となるでしょう。
関連コンテンツ:リスキリングとアップスキリングでリモートワーカーのエンゲージメントを強化する3つの方法。(英語ページ)
従業員との対話
チームや組織が職場の女性をサポートするための様々な取り組みを導入しているとしても、採り得るもっとも重要なステップはただ従業員と対話することである場合があります。正式な1対1のミーティングや勤務評価以外にも、個人レベルでチームメンバーと対話するための15~30分の定期的なミーティングを優先事項としてください。ここでは、従業員が公私を問わず直面しているおそれがある問題を尋ね、チームや組織がその相手をサポートし得る方法を見つけ出してください。これにより、自分がいかにその従業員を心から気に掛け、自分のチームで働き続けながら長期的なキャリアアップを果たしてほしいと考えていることを示すことができます。
パンデミックが女性の労働参加率に及ぼす影響は長期化する可能性が高いです。2021年2月現在、パンデミック中に米国では250万人の女性が仕事を辞めており(※16)(男性の同数値は180万人)、カマラ・ハリス副大統領はこうした状況を「国家的非常事態」と評しています。女性をサポートしすべての人々にとって平等な職場を作り出すために組織やマネジャーが採り得るあらゆるステップは、女性のキャリアアップやより広義の景気回復に積極的に貢献するでしょう。
[参考]
※2 https://www.cnn.com/2021/03/04/economy/february-jobs-report-unemployment-benefits/index.html
※3 https://www.usnews.com/news/economy/articles/2021-03-08/in-one-year-coronavirus-pandemic-has-wreaked-havoc-on-working-women
※4 https://www.cnbc.com/2021/03/05/black-and-hispanic-women-arent-sharing-in-the-job-market-recovery.html
※5 https://www.today.com/parents/video-mama-bear-crossing-street-cubs-goes-viral-t213318
※6 https://www.mckinsey.com/featured-insights/diversity-and-inclusion/seven-charts-that-show-covid-19s-impact-on-womens-employment
※7 https://shrm.org/hr-today/trends-and-forecasting/research-and-surveys/Pages/Women-at-Work-Research.aspx
※8 https://fortune.com/2021/02/13/covid-19-women-workforce-unemployment-gender-gap-recovery/
※9 https://www.randstadrisesmart.com/blog/what-your-organization-can-do-now-support-women-workplace
※10 https://www.benefitnews.com/news/employee-mental-health-at-an-all-time-low
※11 https://www.cnbc.com/2021/03/09/cnbc-and-surveymonkey-release-results-of-inaugural-women-at-work-survey.html
※12 https://www.mckinsey.com/featured-insights/future-of-work/covid-19-and-gender-equality-countering-the-regressive-effectshttps://fortune.com/2021/03/12/best-workplaces-health-care-biopharma-patients-employees-methodist-le-bonheur-abbott-laboratories-merck-desert-oasis/
※13 https://fortune.com/2021/03/12/best-workplaces-health-care-biopharma-patients-employees-methodist-le-bonheur-abbott-laboratories-merck-desert-oasis/
※14 https://shrm.org/hr-today/trends-and-forecasting/research-and-surveys/Pages/Women-at-Work-Research.aspx
※15 https://www.gartner.com/smarterwithgartner/9-work-trends-that-hr-leaders-cant-ignore-in-2021/
※16 https://www.nytimes.com/2021/02/18/us/politics/women-pandemic-harris.html