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社内ネットワークを活用した従業員のリスキリング、アップスキリング
新型コロナウイルスのパンデミック以降、世界中の企業が新しい働き方への速やかな適応を余儀なくされました。食料品店やデリバリーサービスを運営する企業は、突然の需要増に間に合うような人手の確保はおそらく難しかったはずです。
その一方でホスピタリティ業界や旅行業界に属する企業は突然の業績の落ち込みに直面し、パンデミックによる経済的影響は失業率の急上昇と人員整理を引き起こしました。一部の企業は苦渋の選択で人員削減に踏み切りましたが、PayPalをはじめとする企業はパンデミックの初期に雇用を続け、一時解雇しないことを宣言しました。
その結果、急速な配置転換(※1)が広がり、変化するビジネスニーズに対応するために従業員が一つの部門から別の部門へと一気に移されました。
急速な配置転換を機に眠っていたスキルを捉える
パンデミックに伴うビジネス変化が次の段階へと移る中、急速な配置転換現象を受け入れた企業は既存の人材に未開発のスキルが眠っていたことに気づき始め、その多くがビジネスが再び変化した時に活用しようとそうしたスキルの把握に乗り出しています。「すでに手元にある知識を活かせたらどうなるだろうか」、「こうした隠れたスキルや人材の掘り起こしを偶然ではなく、体系化できないだろうか」、「もっと多くの人材発掘をして、仕事ですべてのスキルをフル活用できたらどうなるだろうか」、人事担当者やビジネスリーダーたちはこう考えています。
既存人材のスキル発掘は難題ですが、規模の大きな企業が人材を深く理解する際に役立つ方法が一つあります。存在感を発揮するための新しい機会を与えることです。恒久的かプロジェクトベースかはともかく、新しいチームと働くことになりますので、本質的にはさまざまな意味で原点に立ち返り、自分の在り方や自分の活動を一から構築することになります。プロジェクトの一員である場合は特に、制約的な職務明細から解放され、自分の能力をフルに活かし、自分の在り方や成果を改めて定義することによって輝くことができます。
社内で存在感を発揮する機会は正式なストレッチアサインメントやプロジェクトチームへの参加によって生まれることもありますが、どちらかと言えば正式でない形態の方が可能性が高まります。というもの本人が自分の社内ネットワークをくまなく探してより賢く、速く結果を出すにはどうしたらよいかを見つけ出そうとするからです。私たちが知っているある会社では、わずか1週間で50ページの新しい安全ガイドラインマニュアルを作成し、現場チームに配布しなければなりませんでした。そこでプロジェクトマネージャーやライター、グラフィックデザイン経験者をかき集め(すべて広報チーム外から)、手伝ってもらいました。こうした肝の据わった徹底的な社内ネットワークの掘り起こしだからこそ、必要に迫られて素晴らしいアイデアが生まれます。
ですから私たちからのアドバイスは、従業員の社内ネットワーキングとその維持、活用を手伝いましょうということです。
社内ネットワーキングの昔と今
社内に強い人脈を築く技は昔から存在していますが、時代の移り変わりとともに変化しています。必読のオンボーディングガイド、「The First 90 Days」の執筆者、マイケル・ワトキンス氏は「インボーディング」という造語を提案しています。社内異動者へのサポートを意味します。2016年にハーバード・ビジネス・レビュー(※2)に掲載された記事の中でワトキンス氏は、多くの企業は新規採用者のオンボーディングには注意を払うが、社内異動者への態度は「一か八か」であると指摘し、社内異動が失敗するリスクを軽減するためには、社内政治や意見の対立をうまく切り抜ける方法を含め、異動によって直面する課題の性質に則した支援が必要であると提案しています。
ブログ(※3)で社内の人脈がチーム間の連携を促進し、より良いアイデアやイノベーションにつながることを取り上げました。新型コロナウイルスによってイノベーションの加速を迫られた今、社内ネットワーキングはもはや出世のためではなく、仕事をやり遂げるための方法を見つけるために目的が変化しています。いつの間にか多くの企業がルールや標準プロセスを放棄し、共通のミッションを背景に実に短期間で足並みを揃えました。その結果、必要に迫られて多くの社内ネットワークやつながりが築かれています。こうしたつながりはストレスの多い緊急事態下で機能し続けるだけでなく、従業員にとって新しい学びや関わりの道筋が生まれ、業務フローの中でアップスキリングやリスキリングが可能になるという意味で多くの企業にとって非常に有益です。従業員の配置転換を急速に進めている企業にとって、いち早いリスキリングは必要不可欠です。
アップスキリング、リスキリングにおける社内ネットワークの大切さ
学習・能力開発の分野では、一番の学びの機会は「挑戦的な経験や任務」であるとする70/20/10の法則に関するCenter for Creative Leadershipの調査結果(※4)が引き合いに出されます。コロナ禍で多くの人が本来の職務明細書にない任務を引き受け、その結果、飛躍的な数の学びが組織の中で起きています。そして形態はともかく、学びの重要性は従来の比ではありません。今後10年で仕事の3分の1(※5)がオートメーションに置き換わると予想され、 従業員にとってアップスキリングやリスキリングの機会、特にビジネスを前進させ続けるための仕事を続けながらの機会は貴重で価値あるものです。
社内に強いネットワークが築かれている企業は離職率を抑え、従業員を組織に定着させることもできます。Personnel Psychology(※6)に掲載されたある研究によると、(社外に比べて)社内に強いネットワークのある人材は2年間、組織に留まる可能性が高くなることがわかっています。そしてその逆も真なり。社外のネットワークの方が強い人は組織を去る可能性が高まります。この研究以降、多くのことが変わり、しかもまさに今経験している劇的な変化の中では企業の一番の関心事が従業員の定着ではないかもしれませんが、多くの企業が今でも重要ポジションや見つけにくいスキル人材の離職リスクに直面しています。従業員を社内ネットワーク内に維持することは、コロナ禍とその後の世界を踏まえた新しいビジネス目標の達成に大きく関わります。
最後に、社内ネットワーキングは多くの在宅勤務者が会社や互いから孤立感を感じている今、接点作りにも役立ちます。バーチャルハッピーアワーやチームでのヨガクラスはつながりの維持を助け、組織内の新しいネットワークへと確かな道筋を形成することによって持続可能なつながりが生まれます。ネットワークをうまく築けた従業員は会社とのつながりを感じるだけでなく、新しい情報が珍重される中で内部通を実感することもできます。
新しい社内ネットワーキングのサポート
こうした接点が役立ちそうだとお思いになった方へ、社内ネットワーキングの推進に有効な簡単な取り組みがいくつかあります。
まず、バーチャルのチームビルディングツールを使った楽しい企画を考えてください。Airbnbはさまざまな部署のスタッフが交わりながら新しいトピックについて学べるバーチャルエクスペリエンスを用意しています。バーチャル接続ツールと小会議室を利用して、チームでスカベンジャーハントを行う方法もあります(「バーチャルスカベンジャーハント」とネット検索するとたくさんのアイデアが見つかります)。こうしたバーチャル競技では元のチームのままで競わせたくなるかもしれませんが、クロスファンクションの新しいチーム作りに挑戦すれば参加者の関係性も社内ネットワークも広がります。
組織内でのネットワーキングを促すためのもう一つ検討すべきポイントは、すべての従業員にネットワーキングの方法を示すことです。内向的な人は仲間とどうつながったらよいのか、具体的な指示や助言を必要とする傾向があります。自然なネットワーキングが難しいかもしれない人のために、最初に声をかける時のEメールテンプレートやバーチャルミーティング用サンプルアジェンダの提供を検討してください。
最後に、強い社内ネットワーキングをサポートするためにテクノロジーの活用を検討してください。テクノロジーは組織内のつながりを民主化するために階層や勤務場所を問わず、従業員全員に提供する必要があります。コロナ禍の影響や在宅勤務に伴うつながりの必要性を踏まえ、Randstad RiseSmartは役割やスキルに基づくつながりの可能性を示すために社内ソーシャルネットワークを構築しました。こうしたツールの活用によってキャリアアップを助けてくれる人、あるいは違う視点からの会社の捉え方を教えてくれる人とどうつながれるか、新しい道筋を示すことができます。こうしたネットワーキングミーティングにある程度の構造とアジェンダを与えることによって忙しい従業員も忙しい予定を乗り切ることができます。
ネットワーキングやコラボレーションのための新しい道筋探しは今や、従業員がつながりを感じるための手段です。職務明細書の枠を超えて自分が価値を示せる場所で存在感を発揮し、その過程でリスキリングやアップスキリングを図ることができるという意味で、従業員の後押しにもなります。社内にこうしたつながりができれば、新しい考え方やイノベーションが呼び込まれます。ビジネスの世界の目下の不透明感を考えると、イノベーションは会社の長期的成功を牽引する重要な要素です。
本記事は、ランスタッド本社配信の記事を再編集の上掲載しています。