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randstad risesmartグローバル調査:効果的なスキル習得には戦略的ガイダンスが必須
急速に広がるテクノロジーの導入によってもたらされ、パンデミックによってさらに悪化したスキルギャップを喫緊に解消する必要がある中、従業員のスキリング(スキル習得)は世界中の企業にとって優先課題です。マッキンゼーのデータ(※1)によると、経営幹部の87%が現在スキルギャップの問題に直面しているまたは数年内にその問題が現れると回答しています。さらに世界経済フォーラム(※2)は先頃、テクノロジーの導入が進むにつれ、2025年までに被雇用者の50%にリスキリングが必要になるとの予測を発表しています。
randstad risesmartは2020年に2,000名以上のHR担当者と従業員を対象にした調査を行い、効果的なスキリング方法を尋ねるとともに、地域や業種によるスキリングの違いを調べました。総合グローバルレポート、「Skilling Today」(※3)にアップスキリングとリスキリングに関する主な動向、ギャップ、機会をまとめています。
幅広い調査所見の中でも特に注目すべき知見が2つあります。1つ目はスキリングの機会の提供に偏りがあること、2つ目は雇用主が戦略的ガイダンスがあれば学びと能力開発の有効性が高まると考えていることです。このシリーズの先のブログ(※4)で1つ目のポイントについて取り上げましたが、今回はスキリングの効果とROIを高める方法について考えます。
雇用主にとってスキリングのROIは大切、効果のアップも大切
グローバル調査ではHR担当者の98%が従業員は習得したスキルをビジネスに活かすために部分的またはフルに使っているが、スキリングの取り組みのROIを改善する余地がまだ残っていると答えています。雇用主も従業員も、スキリングはガイダンスやスキルギャップ分析の補助があればさらに効果的になるとの意見で一致しています。どのようなスキルギャップが今存在しているか、どこに学習機会を見いだせるかといった詳しい分析情報です。
従業員が研修コースやOJTによる学習機会を正しく選ぶために何が役立つかHR担当者に尋ねたところ、次の回答が上位に挙がりました。
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スキリングの効果を高めるために
長期的なビジネスの成功を実現するには、研修とスキリングの機会を一覧にして、各自で検討するようにと渡すだけでは不十分です。事実、情報や選択肢が多すぎるとむしろ何もせず、最善の判断に至ることもありません。従業員は受け取った情報を効率的で賢いアクションプランに転換させる必要があります。先進的な企業は従業員に職場での継続的学習を促すとともに、実用的なデータ、分析情報、コーチングを各自のスキリングの取り組みに組み込めるようキャリア開発・タレントモビリティの専門家と手を組んでいます。
学びの機会を仕事の流れに組み込む
従業員の中には学習は、特定のスキルに対して発行される認定証やデジタルバッジのように学習した具体的証拠が示される正式な研修を受けてこそと誤解している人もいるかもしれません。ですがアジャイルな企業は職場での継続的学習意識を従業員に促す大切さを知っています。事実、学習・能力開発の分野で広く引き合いに出される70-20-10の法則は知識の70%が仕事上の経験や任務から、20%が他者との関わりや関係から、10%が正式な研修から得られるとしています。
関連コンテンツ:社内ネットワークを活用したリスキリングとアップスキリング
非公式に起きる小さく短時間のマイクロラーニングを提供するためのHRテクノロジーが増えている動きを捉え、ジョシュ・バーシン氏は2018年に「learning in the flow of work(仕事の流れの中での学び)」(※5)という言葉を用いました。今日の労働者は正式な研修もOJTも含め、幅広い方法でスキルを習得します。社内のギグワークやプロジェクトチームは今や、そしてコロナ禍では特に重要な学習手段です。企業は従業員が持つ新しいスキルをいち早く活用し、職務明細書の定義を超えた貢献を促さなければなりません。
「Skilling Today」調査によると、2020年にアップスキリング、リスキリングの機会を提供した企業のうち72%がその主な手段として現在のポジションでのOJT、プロジェクトチーム、社内ギグワーク、ストレッチアサインメントを用いたと回答しています。このほかにスキリングのために提供された方法は次の通りです。
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職務明細書の枠を超えた場所へと到達させ、ギグワークやプロジェクト、ストレッチアサインメントによって組織に貢献するよう従業員に促し、手助けすることによって、仕事の流れの中での継続的な学びが可能になり、スキルセットの構築やその結果としての長期的エンプロイアビリティの向上をサポートできます。と同時にビジネスアジリティを高め、人材に変化への適応力を備えさせることができます。
テクノロジーと人による指導の活用
従業員にはOJTを通じて今あるスキルを磨き、新しいスキルを習得するさまざまな機会がありますが、仕事の流れの中で起きる学びと、職場ではすぐに提供できないもしくは非効率な方法でのスキル構築を可能にするどちらかと言えば公式なコースワークとを組み合わせるとさらに有益です。最大限効果的なスキル構築戦略を判断するには、オンラインコースや労働市場データなどにアクセスできるテクノロジーとキャリアエキスパートによる個別ガイダンスの両方が求められます。
従業員には賢い判断を下すためのデータが必要です。そして正しいキャリア開発・タレントモビリティサービスプロバイダーなら、組織とそこで働く従業員にポジション、賃金、市場の需要、雇用の見通し、求められるスキル、関連職種などの労働市場のインテリジェンスを提供できます。こうしたデータがあれば、従業員は自分のキャリア目標に基づき有意義なスキリングコースの選択に向けてさらに一歩前進できます。
その一方で、幅広い労働市場データや利用できるスキリング機会がわかるとしても、それはむしろ本人をひるませてしまうかもしれません。その結果、どこから手をつけたらよいかわからなくなったり、市場の需要に照らして必ずしも有用といえないスキルに目を向けてしまったりと、スキリングに消極的になる可能性もあります。こうなれば本人の長期的キャリアの成功にも組織の目標達成にもマイナスになります。
スキリングを本人任せにするのではなく、一連の取り組みに専門家による人の指導を加えると有益です。例えば、キャリアコーチは労働市場データやアセスメントの理解を助け、習得すべきスキル選びをサポートできます。キャリアコンシェルジュは本人の要望、つまり目標や学習スタイル、期間などの条件に合わせて厳選した研修コースや実地研修をアドバイスできます。学習アドバイザーは学習プラン、別名、戦略的スキリングロードマップ(※6)の順調な進捗をサポートできます。この方法なら従業員は目標達成やスキルギャップの解消に効率的に取り組むことができ、ひいては組織としての成功も本人の長期的エンプロイアビリティにも良い影響があります。
スキルインベントリーの維持
雇用主にとって教育研修・能力開発の機会の提供は効果的なスキリング戦略のほんの一部にすぎません。もう一つ重要な要素は、特定スキルの保有者、習熟度、スキルの最新更新時期など、従業員のスキルの記録です。
従業員が持っているスキルを十分把握できていない組織は、組織内に実は存在しているスキルを見過ごすおそれがあり、下手をすればスキルギャップを埋めるために外から人材を確保しようとするかもしれません。ジョシュ・バーシン氏のデータによれば、外部からの獲得は既存人材の育成の最大6倍のコスト(※7)がかかります。
幸いなことに、私たちの調査によると、2020年にスキリングに取り組んだ雇用主の大半が従業員スキル情報の追跡の大切さを理解しています。新しいスキルの習得をどのように把握し、記録しているかを尋ねたところ、スキルの習得を会社として記録していないと答えたHR担当者は全体のわずか20%でした。利用されていた主な追跡手段は次の通りです。
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会社側が従業員のスキルインベントリーを積極的に管理すると、より効果的に未開発の眠ったスキルを発掘し、スキルギャップを特定でき、従業員にスキルセットの継続的研鑽を促し、その過程で従業員能力の最適化が図られます。
「Skilling Today」グローバル調査から明らかになった数多くのインサイトのうち特に注目のポイントは次の通りです。
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本記事は、ランスタッド本社配信の記事を再編集の上掲載しています。