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従業員の定着に効果的な人材戦略
従業員の定着に効果的な人材戦略
優秀な従業員が予期せず組織を去ると、残されたチームは正常な機能を失います。士気が低下し、管理職は仕事の再配分に追われ、生産性も少なくともしばらくの間は低下するかもしれません。
コンサルティング会社のデロイト(※1)によると、物流、自動車、製造業を含め、さまざまな業種の企業が目下、人材確保への対応を迫られています。世界中の多くの国や地域の失業率が高止まりしているにもかかわらず、企業が必要とするスキルのある人材、技術系人材はなかなか見つかりません。
スキルのある人材の補充が難しいのであれば、まずは失わないための対策を行うことが賢明と言えます。デロイトの調査では全調査対象者の10人に8人が少なくとも今後12カ月は退職の予定はないと答えています。従業員の仕事に対するモチベーションを低下させない方法を考察してみましょう。
この記事では従業員の離職をテーマに取り上げ、なぜ人材管理の鍵が欠員補充ではなく、人材の定着であるのかを考察します。最後に、離職率を抑え、優秀な従業員を組織に定着させるための3つの方法をご説明します。
従業員の離職率初級編
すべての離職を防ぐことはできません。やむを得ない場合もあります。定年退職、転居、他部署への配置転換などです。転職、あるいは家庭の事情によってフルタイム勤務が難しくなったといったケースもあります。
その一方でギャラップが行った最近のアンケート調査(※2)によると、自発的離職の半数以上は回避できます。言い換えると、離職者の50%以上は説得によって思い止まらせることが可能ということです。残念なことに、離職者の上司は本人が不満を抱えていることに気付いておらず、もっと悪ければそれを当たり前のように考えています。
英国の製造業における離職率は17.6%(※3)、米国人材マネジメント協会(SHRM)が示している適正離職率、10%(※4)よりも7ポイント以上高い数字です。米国の製造会社は毎年、従業員の10人に2人(※5)を失っています。中国の状況はさらに切迫しています。一部の製造施設の離職率は300%(※6)にも達しています。
離職率が高いと何が問題?
スキルのある人材が去ると、その穴埋めは大変です。採用にも研修にもオンボーディングにもコストがかかり、補充は高くつきます。物流や製造業では理想のスキルセットを備えた人材の確保は必ずしも容易ではありません。従って、新しい人材を見つけるより、既存の従業員を定着させる方が理にかなっています。
前述のデロイトの調査によると、専門性の高い人材が有意義な仕事ができていないと感じると、もっと意味のある役割を求めて組織を去ります。Manufacturing Instituteの調べでは、米国の製造業における新規採用者の教育研修費は1人当たり3,000ドル(※7)を超えています。これ相応のコストが世界にも当てはまると想定しても論理に反しないはずです。
離職率の問題はコストの領域に止まりません。成績優秀者が組織を去ると、残ったチームの活力に影響が生じます。スキルのある人材の存在は周囲のやる気を高め、去れば生産性が低下します。もし広範囲の生産工程の途中、または物流機能を拡充している最中で生産性の維持が重要であれば、チームの安定が欠かせません。
補充ではなく、定着
従業員離職率を抑えるには、大量脱出が起きる前に人材の定着を図るための対策に取り組むことが重要です。前述のギャラップの調査結果が全業種に同じように当てはまると想定すると、物流、製造、自動車製造業の多くの自発的離職は回避できます。
スキルのある人材の流出を防げれば、採用コストも抑えられます。ですが、そもそもなぜ従業員が辞めていくのかを把握できていなければ、正しい定着戦略を判断することはできません。
正しいデータは企業文化の詳細な理解に役立ちます。まずは有用な情報を収集するために10の方法があります。
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無記名アンケート調査を実施する。従業員が職務に関わる問題を口にしたがらないこともあります。アンケート調査は対話のきっかけになり、回答率を高めるためにインセンティブを用意する方法もあります。
- 退職時面談を行う。退職時面談を行う際は、第三者のコンサルタントや人材会社への依頼を検討してください。働いている会社の直接的代表者でない方が率直に話しやすいものです。
- 周囲から好かれている従業員から話を聞く。倉庫や工場に非公式のリーダーが存在している場合があります。従業員の士気について情報を得るために個別に話を聞きましょう。
- エンゲージメント面談を定期的に行う。エンゲージメントのための面談が当たり前のようにあれば、従業員が口を開きやすくなります。日常の人材管理プロセスに組み込むことを検討してください。有益な情報を提供してくれた場合はきちんと感謝しましょう。
- 適切なマネジメントが出来ていないマネージャーに対処する。管理職や監督者に常に目を光らせ、苦情や不満を真剣に受け止めてください。すべての階層の管理職にリーダーシップ研修を受講させ、説明責任を課す必要があります。
- パターン分析を行う。特定部署の離職率が高いですか?特定タイプの従業員が多く辞めていますか?特定の従業員にストレスの高いポジションが偏っていませんか?
- 企業文化を詳細に分析する。外部のコンサルタントに依頼すると外からの視点で企業文化を分析できます。組織内に目的意識はありますか?従業員がやる気を失っていませんか?
- エンゲージメント評価を行う。自分の仕事に関心を持ち、積極的に取り組んでいるのであれば、辞めようとは思いません。成績優秀者が充実感を得ているか、割り当てられた業務に満足しているかを見極めてください。
- 真意を読み取る。いつもはきちんと働いている従業員が消極的になったり、パフォーマンスが下がり始めたら、何か不満を抱えていると見て間違いありません。本人と話し、その原因を探ってください。もし極度の疲労や不満を感じているのであれば、深刻に捉えてください。
- プロセスを見直す。離職の原因がマイクロマネジメントや、会社が定めた手順に納得がいかないからということもあります。ポリシーや手順は定期的に見直し、狙い通りに機能しているか確認してください。
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従業員の定着を図るための3つの効果的な対策
従業員の離職に対処するための最初のステップは、業務の徹底的評価です。離職理由がわかってからこそ、会社を働きたい魅力ある場所に変えるための独自の戦略を組み立てられます。企業文化をより良い方向へと変えるための3つの方法をご紹介します。
1. フレックスタイム制を導入する
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、多くの企業がリモートワークを導入しました。物流業界でもオフィス勤務者はZoomを利用して在宅勤務を開始し、配送を担当するドライバーは引き続き路上に出ることになりますが、荷物の集配時にはできるだけ接触を避けるように工夫されています。一部の物流会社は人と人との接触を最小限に抑えるために二交替制を導入しています。
工場でもコロナ禍での対策が講じられています。作業スペースを動かし、作業員同士が離れて座り、人間に代わってロボットが活用されています。一部の企業はソーシャルディスタンスのために追加シフトを設けました。感染拡大の波が訪れた時は一部の工場は完全に閉鎖され、また、勤務者をできる限り抑え、選ばれた少人数だけがリモートでの製造戦略にシフトしたケースもあります。
今や数多くのクラウドソリューションが市場に出回っていることを踏まえ、多くの経済専門家(※8)がリモートワークはパンデミックの収束後も続く(※9)と予想しています。ただし、こうした「ニューノーマル」が該当するのは工場労働者よりもオフィス勤務者の方です。結局のところ、工場作業の性質上、現場に行かなければ仕事はできません。
製造施設での柔軟な働き方には、例えば、フレックスタイム制やシフトの入れ替えなどの方法があります。1シフト当たりの就業時間を3~4時間長くし、その分休日を増やすコンプレストシフトも従来の週休2日制の代替策になるかもしれません。The Workforce Institute(※10)が2018年に行った調査によると、回答者の35%が週休2日ではなく3日になるのであれば賃金の20%カットを受け入れると答えています。
適切に監督し、適切なプラットフォームを用意するのであれば、柔軟な働き方は驚くほど効果を発揮します。さらに良いことに、従業員は柔軟な働き方を好ましいと考え、そうした制度を利用している場合、生産性が高まり(※11)、ストレスが軽減され(※12)、仕事に対する満足度が高まります(※13)。要するに組織に定着する可能性が高まります。
2. 教育研修制度を強化する
人は学ぶことが好きです。事実、新しいスキルを学ぶ機会は転職先探しの大きな動機になります。学んだ結果、昇進につながるとなればなおのことです。十分なトレーニングを受けた従業員はどんどん能力を高め、課題に立ち向かいます。自信が高まり、充実感も高まります。
研修の内容は日常業務によりますが、効果を最大に高めるには、各自の職務に紐付いている、または将来目指す役割を見据えた研修コースを提供する必要があります。エンゲージメント面談を定期的に行っているのであれば、どのような研修に参加したいと思うか、本人の希望を尋ねてください。
教育研修は採用直後に開始し、その後も継続するのが理想的です。教育研修には主に6つの種類があります。
- オリエンテーション。オリエンテーションでは、企業文化、使命、価値観、組織構造を説明します。新規採用者が組織の状況を十分理解したうえで、自分の仕事になじんでいきます。
- オンボーディング。包括的なオンボーディングプログラムは人材定着のための直接的な投資と考えてください。各部署の目標や新規採用者の役割固有の事柄などを取り上げます。
- 専門スキル。この段階になると新規採用者が徐々に複雑な職務トレーニングを受けます。スキルセットの広がりとともに一人で職務遂行する術を身につけます。
- ソフトスキル。コミュニケーションやリーダーシップ、紛争解決、企業倫理などのチームワークに関するスキルを学びます。この種のトレーニングはチーム育成や将来のマネージャー候補探しにも活用できます。
- 品質管理。製造、物流、自動車製造業などの必須トレーニングである品質管理プログラムは、所定の基準を満たす製品製造の徹底が目的です。
- 安全性。安全性は多くの業種において法定研修に定められています。安全性に関するポリシーや手順、安全装置の使い方、応急処置の方法などを学びます。アスベスト、建築、食品安全性など業界特有の安全性トレーニングが該当する場合もあります。
3. 人材サービス会社のサポートを得る
フレックスタイム制や教育研修プログラムは、従業員の定着率改善に間違いなく役立ちますが、非常に効果的な方法がもう一つあります。人材サービス会社の手を借りることです。結局のところ、フレックスタイム制もコミュニケーション研修も正しい対象者に提供して初めて、定着率の改善につながります。
人材サービス会社はその企業に合った人材を見つけ、採用するプロです。履歴書上、素晴らしく見えても、いざ採用してみるとパフォーマンスが伴わないというケースは多々あります。その点、リクルーターには長年の採用経験があります。言ってみれば生業として採用活動を行っていますので、本当に優秀な人材が誰かを知っています。
優秀な人材サービス会社は世界に数百、数千名の正規の求職者リストを持っています。人材探しを依頼すると、求人広告を出す前に、事前に吟味した求職者に働きかけますので、時間とコストの大幅な節約が可能です。
一部の人材サービス会社は採用決定後、あるいは入社後も人材サポートを続けます。顧客企業と協力しながら役立つトレーニングを提供し、これもまた、長期的な従業員の定着に寄与します。
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