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雇用主と従業員の関係性が変わっていく中、重要性を増す「従業員エンゲージメント」とは
社会の在り方や経済状況が変動する中、雇用主と従業員の関係が変わりつつあります。雇用する側とされる側の関係性を示す指標として、近年注目されているのが「従業員エンゲージメント」です。ここでは人材領域において重要性を増している、従業員エンゲージメントの基本的な考え方をご紹介します。
「エンゲージメント(engagement)」は、もともとビジネス・マーケティング用語として使われてきた言葉です。提供している商品やサービス、もしくは企業そのものに対してユーザーや消費者が抱く信頼感、愛着度や結びつきの強さなどを表します。
同様に、人材領域において従業員と雇用主との関係性を表すのが「従業員エンゲージメント」。世界的なコンサルティングファームの米・ウイリス・タワーズワトソン社では、「企業が目指す姿や方向性を、従業員が理解・共感し、その達成に向けて自発的に貢献しようという意識を持っていること」と定義しています。
※出典:ウイリス・タワーズワトソン「この10年間、従業員意識調査の焦点はなぜ「エンゲージメント」なのか?」(2019)
https://www.willistowerswatson.com/ja-JP/Insights/2019/11/hcb-nl-november-okada-yoshita
混同されやすい言葉に「従業員満足度(Employee Satisfaction:ES)」がありますが、従業員満足度は通常、社内制度・福利厚生などの待遇の厚さや、支払われる報酬、労働環境など、雇用主が用意した待遇や環境に、従業員がどれだけ満足しているかを測るものです。
対して従業員エンゲージメントは、従業員の企業理解や共感を前提としたうえで、自発的な貢献意欲があるかどうかを測るもの。一方通行ではなく、雇用主と従業員、双方向の信頼関係が重視されます。そのため従業員満足度とは、基本的な考え方が異なります。
なぜ今「従業員エンゲージメント」が重要なのか?
雇用主にとって従業員エンゲージメントの重要性が高まっている背景の一つに、日本特有の雇用形態や人事制度が変化してきたことが挙げられます。
日本企業の多くは長年に渡り、終身雇用や年功序列、新卒一括採用などを前提とした雇用を行なってきました。しかし今や転職やキャリアチェンジが当たり前となり、キャリア形成に意欲的な優秀な人材ほど、より良い待遇や仕事のやりがいなどを求めて働く企業を選ぶ傾向が強くなっています。
こうした人材の流動化が進んでいること、さらに少子高齢化の影響による労働人口の減少など様々な要因を受けて、優秀な人材の確保や、人材流出を防ぐための対応策が雇用主に求められるようになりました。その施策の一つとして注目されるようになったのが、従業員エンゲージメントの向上です。
しかし残念ながら、日本人の従業員エンゲージメントは、世界的に見ると非常に低い傾向があります。2017年に米・ギャラップ社が世界各国の企業を対象に「熱意あふれる(=従業員エンゲージメントが高い)社員」の割合を調査したところ、日本は6%で、調査対象となった139カ国中132位という結果になりました。米国の32%と比べると、5分の1以下の数値です。
※出典:State of the Global Workplace - Gallup Report (2017)
https://www.slideshare.net/adrianboucek/state-of-the-global-workplace-gallup-report-2017
では雇用主が従業員エンゲージメントを向上させていくためには、どのような取り組みが効果的なのでしょうか。
従業員エンゲージメントを向上させるための3つの取り組み
従業員エンゲージメントを向上させるための施策は様々ありますが、ここでは次の3つの取り組みをご紹介します。
- 企業としてのビジョンを明確にし、従業員と共有する
- 従業員が「働きがい」を感じられる職場環境を整える
- 従業員個人のキャリア形成や、継続的な成長をサポートする
1つずつ、内容を詳しく見ていきましょう。
1)企業としてのビジョンを明確にし、従業員と共有する
従業員エンゲージメントが高い企業は、企業として目指すビジョンや戦略、事業の目的などが明確に示されているケースが多く見られます。まずはどのようなビジョンを実現していきたいのかを明文化し、従業員と共有して、繰り返し何度も伝えて浸透させていくことが大切です。
雇用主が掲げるビジョンを理解し、共感を深めたうえで仕事に取り組む従業員が増えると、相乗効果で組織・チームが活性化していきます。従業員のモチベーションが高まり、一人ひとりの自発的かつ積極的な行動が増加することによって、組織・チーム全体の生産性向上にも良い影響を与えるでしょう。
また、報酬や待遇のみを比較して仕事を選ぶケースと比べると、「ビジョンへの共感」が条件に加わることで、従業員と雇用主との間の結びつきが強くなり、離職率の低下にもつながります。
2)従業員が「働きがい」を感じられる職場環境を整える
従業員が仕事のやりがい、働きがいを感じられるかどうかも、従業員エンゲージメントに大きく影響します。そのために必要とされる取り組みには、納得度の高い人事評価制度の整備や、社内コミュニケーションの活性化などが挙げられます。
例えば、社内コミュニケーションの活性化の施策として近年、多数の企業に導入されているものの一つに「ピアボーナス」があります。ピアボーナスとは、従業員同士が日々の業務の中で、お互いへの感謝の気持ちなどを報酬(ポイント)として送り合う仕組みのこと。集まったポイントを実際に換金したり、コーヒーショップで利用できるクーポンとして利用できるケースもあります。
こうした仕組みを活用することは、従業員と雇用主の間だけではなく、従業員同士の交流を深めることにもつながります。実際、昨年ランスタッドでは一部の支店にて7ヶ月間ピアボーナスをトライアルとして実施し、頻繁に活用していた支店ほど、全体平均より「自社を職場として推奨する」「自社サービスを家族・友人に推奨する」といった「推奨度=エンゲージメント」が高い結果でした。
3)従業員個人のキャリア形成や、継続的な成長をサポートする
従業員エンゲージメントを向上させるための要素は、ビジョンへの共感や働きがいの有無だけではありません。従業員にとっては、将来的なキャリア形成ができること、自分自身の成長につながることなども重要です。
そのために雇用主は、従業員がスキルアップできる機会を提供したり、個人のキャリア形成を定期的にサポートすると良いでしょう。具体的には、さまざまな研修の実施、社内公募制度を活用したチャレンジ機会の創出、定期的なキャリア面談の実施などが挙げられます。
企業のビジョンに共感して入社した従業員が、長期的な成長の機会を得ることができれば、雇用主との信頼関係はより強固なものになります。
まとめ
これまでの日本では、雇用主が従業員に対して年功序列・終身雇用などの待遇を約束する代わりに、帰属意識やロイヤルティ(忠誠心)を求める構造になっていました。しかし今回ご紹介したように、その構造は変化し、雇用主と従業員の関係性も大きく変わっています。
その中で、非常に重要な指標となっている従業員エンゲージメント。その向上により、生産性の改善や離職率の低下など、幅広い効果が期待できます。まずは小さな取り組みから、従業員エンゲージメントにつながる施策を取り入れてみてはいかがでしょうか?