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Z世代の早期離職、本当の理由は? レポートに見る「キャリアへの熱意」と「未来への不安」という2つの本音
若手人材の確保が困難な時代。Z世代の「本音」とどう向き合うか?
Z世代の早期離職は、もはや単なる「最近の若者」の問題ではありません。その裏に隠された彼らの本音を理解できなければ、どんな優良企業でも、未来の成長を担う貴重な人材を失いかねないのです。
人手不足が深刻化する日本において、貴重な若手であるZ世代の価値観や行動を深く理解し、定着を促すことは、企業の未来を左右する重要課題です。しかし、その行動には「長期的なキャリアを望んでいるのに、短期で離職する」といった、一見矛盾しているように見える側面があります。
ランスタッドは、世界15カ国、11,250人の従業員を対象に行ったグローバル調査「Z世代の新しい働き方 ワークプレイスの青写真」を公開しました。調査結果を見ていくと、矛盾を抱えるZ世代の複雑な就労観が浮かび上がってきました。
本記事では、このレポートに基づき、Z世代を深く理解するための鍵となる「2つのパラドックス」を解き明かし、彼らと共に成長していくためのヒントを探ります。
Z世代が抱えるパラドックス①:「長期キャリア志向」なのに「短期で離職」
Z世代の行動における1つ目の大きな矛盾は、キャリアに対する考え方と実際の行動の間に見られます。
長期的なキャリアへの展望
同調査によると、日本のZ世代の54%(グローバルでは85%)が「新しい仕事を選ぶ際、それが長期的なキャリアにつながるか常にまたは頻繁に考慮する」と回答しています。これはZ世代の実に半数以上が該当することになり、他の世代に比べても高めの数値です。短期間で退職することも厭わないZ世代が、実は長期的にキャリアを考えていることが窺えます。
新卒勤続年数の短さ
他方、「どんな仕事でも3年は勤務するべき」という考え方も今や昔、日本のZ世代の33.3%が「1年未満で、自己都合で仕事を辞めた経験がある」と回答し、別の質問では22%が「現在の職に留まるのは1年以内」と回答。すぐ上のミレニアル世代と比べても、突出して転職のペースが速いことが窺えます。長期的な視点を持ちながら、なぜ彼らは短期で離職するのでしょうか。
「キャリアアップへの強い欲求」がZ世代を矛盾した行動に駆り立てる
この矛盾を解く鍵は、彼らの「キャリアアップへの強い欲求」にあります 。
同調査によると、日本のZ世代が1年以内に離職した場合の転職動機はまず「給与の低さ」、次いで「昇進機会の少なさ」となっています。昇進が難しい職場に留まるよりも、次へ向かう。彼らにとって転職は、キャリアの停滞を避けるための合理的な手段なのです。
この成長意欲は、「サイドハッスル(副業)」への関心の高さからも伺えます。同調査で「現在就いている働き方」と「好ましい働き方」を尋ねたところ、Z世代の24%(グローバルでは20%)が「フルタイムの職務1つとサイドハッスル(副業)」を好ましい働き方に挙げました。実際にこの働き方をしているZ世代は1割に満たないことから、副業であればなんでもよいというわけではなく、仕事の内容を吟味していることが推測されます。こうしたことから、副業が「現在の仕事にはないキャリア開発の場」として捉えられている可能性が浮かび上がってきます。
サイドハッスルとは
本業とは別にスキルなどを活かして副収入を得ること。
副業とほぼ同義だが、趣味や自己実現、充足感を求めての意味合いが強い。
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Z世代が抱えるパラドックス②:「自信がある」一方で転職には「強い不安」を覚える
2つ目の矛盾は、Z世代の自己評価と将来への展望という、彼らの内面に見られます。
Z世代は、自身の学習能力に強い自信を持っている
同調査によると、Z世代の60%(グローバルでは79%)は「新しいスキルをすぐに習得できる」と回答しています。先に紹介した「転職ペースの速さ」も頷ける、自身の成長ポテンシャルを高く評価している様子がわかります。
その一方で、半数以上は転職に自信がない
ところが、Z世代の半数以上に及ぶ56%(グローバルでは41%)が「他の仕事を見つける自信がない・あまりない」と回答しています。
さらに日本のZ世代の36%が「スキル不足で不採用になった経験がある」と回答。成長ポテンシャルを自覚しているだけに「学びの多い職場でキャリアを積む必要がある」と感じる割合も高くなっていると窺えます。
「成長したい」という理想と現実のギャップが、Z世代に矛盾した感情を抱かせる
ここまで紹介したデータからもわかる通り、彼らは「成長できるはずだ」という自信と、「(成長する前の)今の自分では通用しないのではないか」という現実的な不安の間で揺れ動いています。
この自信と不安の同居状態が、Z世代の「今の会社で本当に成長できるのか?」という問いを生み、成長を目指してのハイペースな転職を後押ししているのかもしれません。
Z世代の「矛盾」を理解し、企業の力に変えるには?
対策①:「成長への不安」に応え、「この会社でキャリアを築ける」という道筋を示す
Z世代は「長期キャリア志向」を持っています。つまり「今の職場でキャリアを築ける」と確信できれば、転職には至らない可能性も高いのです。そのためには、社内での明確なキャリアコースの提示が欠かせません。
「どのようなスキルを身につければ、どういったポジションに就けるのか」や、将来にわたる育成や昇進の制度を具体的に示し納得してもらうことが、彼らの定着を促します。
対策②:「転職への不安」に寄り添い、「ここでなら安心して挑戦できる」という文化を醸成する
彼らの自信のなさに寄り添い、ポテンシャルを引き出すためのサポート体制を構築することも重要です。メンター制度や、1on1面談などが効果的でしょう。
スキル不足への不安を解消し、自己肯定感を育む公平な学習機会をZ世代に提供することで、企業への信頼やエンゲージメントを高めることができるはずです。
「Z世代の新しい働き方 ワークプレイスの青写真」でZ世代と手を取り合う
Z世代の転職願望は、「今のままではキャリアアップの見込みがない」という諦念や、「より成長できる環境、ひいては好待遇を求めてのステップアップ」に起因しています。それでいて、自らが「即戦力ではない」ことも自覚しており、転職先を見つけることに不安を抱えています。
企業が若手のキャリアアップへの投資を惜しまず、またその取り組みをしっかりと伝えることは、企業とZ世代の双方にとって、Win-Winの関係を築くための一歩となるはずです。
まずはレポートをチェックしてZ世代の現状を知ったり、Z世代の動向に詳しいプロのコンサルタントへ相談したりすることで、Z世代と手を取り合う自社なりの方法を探ってみませんか。