DX時代の雇用調整:エンプロイヤーブランドを守る - パート2

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このブログは「DX時代の雇用調整:エンプロイヤーブランドを守る」シリーズの第2回目です。

 

このパートでは、万が一ブランドイメージを棄損するようなネガティブなニュース発生してしまった場合の対応についてご説明します。パート1 では、最初にネガティブな報道やソーシャルメディアでの拡散をできるだけ回避する方法についてご説明していますのでご参照ください。

景気の逆風がビジネスに影響を与える時、雇用調整を避けて通れないことがあります。雇用調整におけるコミュニケーションの計画は可能であっても、同時にWEB上においてのエンプロイヤーブランド(雇用主としてのブランド)や外部からの批判的な反応を管理することは困難になることが想定されます。

ソーシャルメディア全盛の今日では、雇用調整のプロセスで対応を誤る※1と、長期にわたって従業員と消費者の両方にマイナスのイメージを残すおそれがあります。

会社がどれほどコミュニケーションに配慮して雇用調整を行ったり、退職する社員への手厚いサポートを提供したりしても、人はこの大きな人生の変化に何かしらのメッセージを投稿したくなることは想像に難くありません。実際、SNSへの投稿は使い方によってはそれ自体が投稿者の転職を成功させるための強力なツールになりうるからです。

では、そうした投稿が仮にネガティブなものだった場合、会社はどのような対応をとるべきでしょうか? ソーシャルメディアでのネガティブな反応にどう取り組み※2どのようにWEB上における会社のエンプロイヤーブランドの維持に努めたら良いのでしょうか?

 

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ソーシャルメディアでのネガティブな反応に対応する方法

会社のソーシャルメディアのアカウントを活用して、雇用調整に対するステークホルダーの反応と予測を管理することができます。コミュニケーションプラン※3を適切に実行すれば、人員削減をする中でも、常にソーシャルメディアを意識しつつ、会社のこれまでのイメージを改善することが可能です。また広報の専門家の力を借りて、簡潔かつ明確で感度の高いメッセージを作成し、同時に組織外の企業ブランドのファンやインフルエンサーに発信してもらうことも可能です。

しかし、誰かがWEB上で会社に対してネガティブな内容を発信している場合はどう対応すればよいでしょうか?以下に3つのヒントをご紹介します。

 

1. 個人的に受け取らないこと

大掛かりな人員削減を行うと、世間一般の人だけでなく施策に不満を抱いた元従業員がネガティブな反応を発信ことがあります。すべてのコメントを漏れなく確認することは必要ですが、チームや他部署の人たちに、ネガティブな反応を個人的に受け取らないように周知してください。雇用調整のニュースを目にすると、人は様々な感情を抱きます。いくつかのコメントは悪質で、場合によってはその会社に勤めている人を傷けるようなものかもしれません。しかしそうしたコメントを個人的に受け止めると、そこには個人の感情的な反応が生じてしまい、次に本来取るべき正しい行動の判断を誤らせる可能性があります。

 

2. ネガティブな内容に対して応えるかどうかを適切に判断すること

元従業員がSNS等を通じてネガティブな投稿をし、世間の注目や批評などを集めはじめると、その投稿に対してとにかく反応したい衝動にかられるかもしれません。それでもがまんして、絶対に反応しないでください(そんな時は、是非アンガーマネジメントのスキルを思い出すと良いです)。米国では、元従業員が元雇用主を公に批判したことにより、企業側が希望退職や早期退職プログラム等で提供した特別退職パッケージの適用を取り消して返還要求が認められたという判例がありました。公の場で何らかの反応をすると、その状況がより悪化しさらに炎上するおそれがあります。このケースには、人事部門のメンバーがメッセージを発信している人や同調している人に個別メッセージで連絡し、彼らの言葉に耳を傾けつつも「将来に向けて友好的な解決が可能かどうかを一緒に考えませんか」と申し出ることです。場合によっては、単に話を聞くだけで、投稿者の心境が変化し、状況が大きく動く場合があります。また退職する従業員からの言葉を通じて、ネガティブな反応を引き起こしている雇用調整プロセスそのものの問題点が明らかになり今後の改善に役立ちます。そして、それが将来に渡っての批判を最小限に抑えることにも繋がる可能性があります。

 

3. 反応の連鎖の主導権をとる

どれほど慎重にコミュニケーションを計画しても、一部のメッセージは意図した通りには届かないこともあります。人員削減に関する大量の批判的なコメントに対して、敢えて会社の代表者が公開文書を投稿するケースがあります。この文書には、雇用調整のプロセスについて改善の余地があったことを潔く認める一方で、意思決定のプロセスにおいては、人員削減を行う前にすべての選択肢が検討し議論し尽くされたこと、いわば説明責任を明確に示す機会にもなります。またこのような対応を通じて、会社が退職した従業員へ提供した優遇措置を公に知らせるためにも有用と言えます。組織のリーダーが謙虚さと批判の声に耳を傾けていることを示せば、批判的な反応が鎮まることも多く、その結果、辞めた従業員が前向きに次のキャリアへ進めるようになることもあります。 

 

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雇用調整に際してソーシャルメディアでの批判を回避する方法

ソーシャルメディアで批判されることなく、雇用調整や大規模な人員削減を進めることができるでしょうか?ネガティブなニュースをコントロールすること自体は難しいですが、その中でもブランドのイメージを守ることはできます。ソーシャルメディアがWEB上でのエンプロイヤーブランドのイメージ戦略の最前線である今日において、会社は影響を受ける従業員への思いやりと共感を示すための雇用調整戦略をしっかりと立案する必要があります。その中にはソーシャルメディアの責任者※4を任命して、オンライン上における雇用調整関連のメッセージの方向性を明確にすることが重要です。役立つヒントとして次のようなものがあります。

 

1. 理想的なコンテンツを投稿する

人員削減はマーケティング活動に大きな影響を与えるため、ソーシャルメディアの責任者はPRチームと協業しながら、発信するコンテンツを決定します。時には一部のコンテンツカテゴリを一時的に停止したり、ネガティブ発信のキーワードを特定したりすることが重要な場合もあります。たとえば、人員削減直後に新たに社員の新規採用を発表したり、社員の記念日などのコンテンツを投稿したりすることは適切ではないことは容易に想像がつくでしょう。

 

2. 世の中の声に耳を傾ける

雇用調整を実施する際は、ソーシャルリスニングを駆使して世の中のネガティブなコメントをモニターし、予想される反発や反感されるキーワードの可能性を推測します。たとえば、会社のアカウントだけでなく、上層部の個人アカウントや、業界の広報のアカウントもモニターするとキーワードの特定に役立ちます。

 

3. 人々の懸念に対処する

雇用調整後、従業員や退職した元従業員だけでなく、時には一般の人々や消費者も懸念を露わにして疑問を呈することがあります。質問には誠実に回答し、会社は前へ進み続けるということを世間に確信してもらいます。また、残った従業員※5からの懸念に対応することは、リーダーシップへの信頼を高めるために大変重要です。

 

周到に計画を立てて、DX時代のエンプロイヤーブランドを守る

ソーシャルメディアに投稿される内容をコントロールできるわけではありません。それでも人の気持ちに配慮し、透明性のある人員削減のプロセスの計画と実行を通じて、外部からの批判的な反応を少しでも防ぐことができます。また、雇用調整を行う前から常に強力で包括的なコミュニケーション戦略を準備することで、万一批判的な報道が発生した場合でも、迅速に対処することができます。雇用調整に関するニュースが広まった時に、迅速に対応し、人の気持ちに配慮し、かつ、透明性を持った状態を維持することが、今日のエンプロイヤーブランドの在り方であると考えます。

 

※本ブログは、2023年3月15日にrandstad risesmartが発信したブログ「manage your digital employer brand during a layoff - part 2.」を元に、日本の雇用市場と商習慣及びに照らし合わせて加筆修正をしたものです。原文(英語)は以下URLよりご覧いただけます。

https://www.randstadrisesmart.com/insights/employer-branding/blog/how-lay-employees-without-damaging-your-reputation

 

 

【筆者プロフィール】

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下瀬川 和宏(しもせがわ かずひろ)
ランスタッド株式会社ライズスマート事業部
ビジネスディベロップメントエグゼクティブ
 
技術翻訳会社の創立者・共同経営者、グローバルIT企業のアカウントマネジメントを経て、再就職支援サービス業界に転身。経営者としての経験と組織の意思決定者へのプレゼンテーションのスキルを生かし、15年で400社を超える組織の構造改革・雇用調整におけるHRコンサルティングに携わる一方で、リーダーとして200名を超える組織のピープルマネジメントも経験。近年では構造改革の専門領域に加え、EDIB推進やリーダーシップ開発、また組織のチェンジマネジメントやHRトランスフォーメーションのプロジェクトマネジメントを通じて、組織の活性化とタレントモビリティのエバンジェリストとして人々の多様な働き方を支援している。

 

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