ケーススタディ:Microsoftでのエンプロイヤーブランディング

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1975年に創業したMicrosoftは動きの激しいテクノロジー界のベテラン企業ですが、Apple、Google、Facebookはもちろん、数多くの小回りの利くスタートアップや新規参入企業との熾烈な人材獲得競争に直面しています。とは言え、Microsoftは常に自らを作り替える組織であり、だからこそ業界の中でも新鮮さと意味を失うことはありません。

サティア・ナデラCEOの言葉を借りれば、「伝統を重んじるのではなく、イノベーションを重んじる」です。同社のグローバル人材獲得責任者、チャック・エドワード氏は、「Microsoftは自分の手で将来を形作りたいと考える人にとって常に魅力を発信し、その魅力はスタートアップのような躍動感と、アイデアやイノベーションを世界の舞台で展開できるチャンスの両方を持ち合わせているところにある」と言います。

そしてまさにそれがMicrosoftの勝利の公式です。米国を含め世界の企業を対象とするランスタッドアワードではMicrosoftが最も働きたい企業に選ばれています。にもかかわらずエドワード氏は、「競争の激しいテクノロジー人材市場に休息はなく、日々、ベストの試合を求められる」と言います。ではMicrosoftがトップの座に君臨し続ける鍵は何でしょうか。

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ビル・ゲイツは早くから、Microsoftがワールド・ワイド・ウェブのメインゲートウェイになることにチャンスを見出していました。そして、主導権を握り、競合他社を封じ込めるために、このビジョンを迅速かつ断固として実行に移しました。こうしたビジョン、粘り強さ、そして最終的には組織力と実行力があるからこそ、当初の競争相手の多くが途中で脱落してもなお、長きにわたって生き残り、成長を続けています。

そして今、Microsoftはまた大きな飛躍を遂げつつあり、2014年に着任したサティア・ナデラCEOが「モバイルファースト、クラウドファースト」と表現する環境下で生産性を高めるために従業員のエンパワーメントに取り組んでいます。

「市場の動きが止まることはありません。ですから私たちには成長を受け入れる人材、もう全部わかっていると思うのではなく、積極的に学ぶ意欲のある人材が必要です」、そうエドワード氏は言い、クラウドファーストの世界へのシフトによって顧客との関係性は変化し、だからこそ好奇心旺盛で、これまで以上に即断できる人材が必要になると考えています。

「顧客がアプリケーションやソフトウェアを買う前に、エンゲージメントが低下します。ですが継続的にフィードバックを求め、アップデートし、リニューアルすることを前提にしたクラウドシステムなら継続的なつながりを築くことができます。もはや長期的な開発サイクルや大型のプロダクトローンチは過去の話。

常に顧客の声に耳を傾け、分析し、対応できる人材が必要です。需要のスピードが高まったことによって、仕事の仕方に新しい躍動感が生まれています。常に考え、学びの機会であるミスを受け入れる、人材にはそうした姿勢が必要です」

 

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チャレンジャーにチャレンジ

エドワード氏は、こうしたチャレンジャームードをぜひとも盛り上げたいと考え、「Microsoftが変化し続ける好奇心旺盛な組織であることがわかっている人材を求めている」と話します。スタートアップ企業の魅力を認めつつも、Microsoftにはそれ以上に提供できるものがあると言い、「従業員たちは新しい何かでいること、最先端で居続けるからこそのインパクトと意味を求めています。

スタートアップ企業との比較において私たちのような大手は動きが遅く、官僚主義的と思われることが多いですが、私たちは以前から変わらず革新的で機敏な環境を築き、そのために従業員にはスタートアップ同様のエネルギーを持ち、活発なやり取りが行われる機動力の高い少人数グループでの協力を奨励しています。

スタートアップにはない私たちの大きな強みは、何と言ってもグローバル市場で大規模にイノベーションを展開できること。だからこそイノベーターは真のインパクトを即座に実現できます。もし中小企業で働き、変化を望むのであれば雇用主を変える必要がありますが、当社なら別のチームに移ればよいという点も強みです。

組織に豊富な知識と経験が蓄積されていることも当社の従業員は魅力に感じています。業界に仲間入りした若手人材が技術的側面だけでなく、アイデアやイノベーションを商品化するまでのプロセスを学ぶことができます。

 

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ではMicrosoftはチャレンジャームードをどのように醸成し、大手企業においてイノベーションと意思決定のスピードを遅らせる原因になりがちなすべての形式主義を破るためにどう取り組んでいるのでしょうか。

その一つはビジネスの組み立てにあります。エドワード氏によると、Microsoftでは市場との距離を縮め、市場の声を聞き取る力を高めるために組織をフラット化しています。真の鍵はカルチャーです。「当社は従業員が好奇心を持ち、リスクを負い、誤りの可能性を率直に話せる環境作りに力を注いでいます。それが知見を生み出し、長期的に正しい理解へとつながるからです」

 

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アイデアワークショップ

境界線を押し広げることへのこうした情熱を支えているのが、実験的プロジェクト開発のために招集される特別チームでのチャンスであり、その一例が「これなしには生きられない次のヒット」を見つけるためのMicrosoft Garageイニシアチブです。

こうした問題解決に根差した活動は社会的責任や慈善活動へ、さらにはイノベーション精神を促す手段として今や大学やコミュニティグループでも活用されている共創のためのハッカソンへと幅広く広がっています。「私たちはこうしたイニシアチブを単なるCSR活動とは考えていません。人を惹きつけ、意欲を高める手段であり、コラボレーションを促し、世界中のグループでの長期的関係性とパートナーシップの構築を促すものだと思います」

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ローカル&グローバル

テクノロジー業界はクラスター型での事業展開が多く、これがキャンパスモデルに新たな勢いを与えています。Microsoftはワシントン州レドモンドに本社を置いていますが、エドワード氏は場所や物理的環境がビジネスの成功と人材獲得に役立っているとどの程度考えているでしょうか。

「Microsoftはテクノロジーとイノベーションのエコシステムをここ、レドモンドで構築しています。

この街は今やマグネットのように世界中から人材を引き寄せます。数多くの小規模テクノロジー企業も次々と立ち上げられています。パートナーシップの重要性が増し、人材を買ったり借りたり、自ら構築しなければならない市場において、こうしたローカルエコシステムやそれに伴う人材と知識の集まりは私たちにとって極めて有益であると同時に、業界内での人の移動が頻繁に起きるという意味で諸刃の剣でもあります」。

Microsoftのレドモンドキャンパスは極めて多様なグローバルビジネスのほんの一部でしかありません。「私はレドモンドの従業員と同様にアジア、アフリカ、欧州、オーストラリアの仲間ともできる限り接しています。こうした国際的な広がりと意見交換によって、ローカルとグローバル、両者のいいとこ取りができます」

 

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圧倒的勝利

Microsoftの人材獲得の取り組みはすべてが機能しています。ランスタッドアワード2015によると、Microsoftは世界で最も働きたい企業であるだけでなく、給与・福利厚生、教育研修、仕事内容、キャリアアップからワークライフバランス、心地良い職場の雰囲気に至るまで個々の項目においても軒並みトップに評価されています。

エドワード氏も同じ熱意の持ち主であり、「Microsoftに入社して12年経ちますが、今でも出社するとわくわくします。熱意と意欲に溢れたスマートな仲間と働くのは本当に楽しく、刺激を受けて学び続けよう、常に向上したいという意欲が湧いてきます」と話します。

業界の新規参入者が次々と追いかけてくる環境下で人材に変わらぬ魅力を提供し続けるMicrosoftから、他の成熟企業は何を学べるでしょうか。Microsoftは自ら生き残り、成長するためにはスピード感と規模が欠かせないと考えています。その一方で優秀な開発者やイノベーターは歯車の一つになることを望みません。

Microsoftの成功の秘密は、変革を新しい世代がかつてのパイオニアと同様の力を発揮するためのチャンスとして受け入れるカルチャーです。Microsoftで働く従業員は規模の大小、新旧を問わず、競合他社にいるよりも新しいプロジェクトに取り組み、新しいことに挑戦できるチャンスがあることを知っています。

期待に挑戦し、新しい方向に進む覚悟のあるリーダーがいることを知っています。新しい物に対する強い熱意によってMicrosoftは活力を失うことなく、従業員の意欲を高め、一緒に働きたいという人材を惹きつけています。

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