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人材難の時代に選ばれる企業:LUSHの人と文化「急成長期に直面する人事課題」
天然素材から色彩豊かなバス用品やコスメを生み出すLUSH(ラッシュ)。ハッピー&ヘルシーライフを追求する姿勢は世界中で支持され、国内でも多くの店舗を展開しています。機械を排し手作業での生産を続けながら、ここ数年で激増した製造量に対応しているそうです。ビジネスの急拡大により直面する深刻な人手不足。LUSHは人事面での難局をどう成長へとつなげているのでしょうか。
株式会社ラッシュジャパン 人事マニュピープルサポート マネージャーの戸川晶子氏、プロダクションマネジメントディベロップメント スーパーバイザー 佐藤勝彦氏に伺ったお話を、全3回に渡りレポートします。
LUSHらしさを創り出す“ものづくり”
「ハッピーな人がハッピーなソープを作る」というLUSHの信念。製品一つひとつに作り手の名前を入れ商品に似顔絵シールを貼るのは、それを見た作り手のお母さんに誇らしさを感じてもらうため。どこまでも人を大切にする姿勢を貫くLUSHは、工場の作り手のハッピーのために全力を注いでいます。
製品に想いを込めるために、人を大切に
戸川氏(以下、戸川) LUSHでは常に人にフォーカスしています。製品はすべてハンドメイドで、一つひとつに想いを込めながらお客様にお届けしています。その姿勢でものづくりに向き合うには、LUSHが大切にしているコアなバリューを確実に守りながら製造しなければなりません。
佐藤氏(以下、佐藤) 例えばバブルバー(泡風呂入浴剤)は1日3千個くらい製造しますが、スタッフには3千個の内の1個でも、お客様にとっては特別な日のための1個かもしれない。だから「自分たちも楽しんで、正しい商品を1個1個作りましょう」と話しています。
戸川 LUSHでは工場をキッチン、作り手をシェフと呼び、製造現場をフロアと呼びます。製造のフロアで働くスタッフの雇用形態はさまざまですが、LUSHで働いてくださる方はみんな一緒にビジネスをドライブしていく仲間です。
佐藤 派遣社員の方にも朝礼から一緒に参加して流れを把握していただきますし、個々の名前があるんだから「派遣さん」とは絶対に呼びません。
急成長で抱えた人事課題
“LUSHの理念を守りながら正しい製品を作れる場所”として、アジアで唯一の工場が設けられている日本。韓国や香港などアジア各国で拡大する需要に対応するために、その製造量はここ2〜3年で1.5倍ほどに拡大しています。その一方で、新宿にアジア旗艦店をオープンするなど、国内でも新たなチャレンジが続いています。アジアで急成長を遂げるブランドを支えるためには、品質を維持しながら新たに100名以上の工場スタッフを増やす必要がありました。
人員構成の変化とマネジメント業務の増大
佐藤 考えられないくらいの変化でした。人がいない、場所もない。でも安定した品質で製品を届けなくちゃいけない。スタッフが増えて年齢層が一気に下がり、人員構成が大きく変化し雰囲気も変わりました。
戸川 この1年間で、10ある各製造ルームに10人位ずつ増えています。外部から100人となると文化もかなり変わってきますし、マネジメントスタイルも変えていかなくてはいけませんでした。ビジネスの成長スピードと組織として変化できるスピードには違いがあるので、そこは今も苦労しているところです。
佐藤 僕は以前、ある製造ルームのルームマネージャーだったんですが、当時はルームのスタッフ全員に「おはよう」と声かけするのを朝の日課にしてたんです。そうすると顔色や声のトーンで「あれ、この人今日は調子悪いな」と把握ができた。それなのに人が増えるとできなくなってしまって。でもスタッフ全員の声を拾えなければLUSHではないし、それではLUSHのものづくりはできないんです。
(左)株式会社ラッシュジャパン 人事マニュピープルサポート マネージャー 戸川晶子氏
(右)株式会社ラッシュジャパン プロダクションマネジメントディベロップメント スーパーバイザー 佐藤勝彦氏
課題に直面した時こそ立ち返る信念
一人のマネージャーが丁寧に目を配れるスタッフ数には限りがあります。人が一気に増えることで、企業のカルチャーが伝わらなくなることも。ビジネスが成長フェーズにある企業であればどこでも直面し得る困難な状況に、LUSHはLUSHらしく向き合っていきます。
スタッフが輝き成長できる環境づくりのために
戸川 「ブランドはそこに集う人によってつくられる」「私たちがスタッフを見つけたのではなくて、スタッフ一人ひとりが私たちを見つけてくれた」これはLUSHの共同創立者マーク・コンスタンティンの言葉です。そこにいる一人ひとりがイキイキと働ける環境があってこそ、ブランドの成長につながるとLUSHは考えています。
その環境づくりのために、ファーストステップとして、マネジメントする側により手厚いサポートを提供していく方向に舵を切りました。そして、マネージャー1人がすべてを背負うのではなく、共にチームを牽引していく人たちを増やして負担を分散し、チームとして全体をサポートする組織体系に変えていきました。
佐藤 ここ1〜2年で組織の形がガラッと変わりました。マネジメントチームを一気に増やしたり、それぞれの役割や責任範囲をより明確にし、それまで分担していた業務を集約して専任者を配置することで、よりフロアのスタッフが働きやすい環境を作っていったり。
ハンドメイドにこだわるLUSHにとっては、本当に人がすべて。だから働きやすい環境・意見しやすい環境を作り、スタッフが自らキャリアを描けるようにしないとダメだと思っています。
まとめ
働き手に選ばれる企業になるために
「ブランドは人がつくる」というポリシーのもと、どうすれば一緒に働く仲間が活躍できるのかを考えるLUSH。しかし美しい理想を掲げたとしても、それを実践していくのは並大抵のことではありません。特に事業が急激な進化を遂げるときは、人員構成の変化に組織が対応できなかったり、人材の多様化により組織の在り方にブレが生じたりするリスクはつきものです。
深刻な人手不足に直面する製造小売業にありながら、LUSHはなぜ働き手に選ばれる存在になっているのでしょうか。次回は新たな組織体系など、従業員エンゲージメントを高めるための具体的な取り組みについてご紹介していきます。