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ポストコロナ時代を描く~展望2022(2)
社会~「デジタル」をキーワードに広がる暮らし
特集の第2回は、2022年の社会の動きを展望します。社会には暮らしだけでなく、それを取り巻く産業の進化や教育の刷新などが含まれます。キーワードは「デジタル」。どのような出来事や変化が起こるのか、注目されるテーマを紹介していきます。次回26日には今年改正の労働法をお伝えします。
<デジタル通貨の導入検討に本腰>
大手銀行と情報通信企業などで構成する企業連合が、2022年後半を視野にデジタル通貨の実用化を進めます。これは、ブロックチェーン(分散型台帳)を活用して24時間取引と即時決済を目指すものです。デジタル通貨は、紙幣や硬貨と同じように使える電子的なお金で、企業が負担する決済や送金コストも下がり、大きな変化の初年となる可能性があります。
企業連合によると、取引の最小単位は1円。関西電力などが参加して、企業が支払う電力料金の決済をデジタル通貨に置き換えるところから実用。その後に(1)小売企業とメーカー・卸企業の間での決済(2)地域通貨としての利用――など段階的にデジタル通貨を導入する方針です。
銀行間の決済システムは、人手をかけて維持・更新しているのが一般的。ブロックチェーンを活用すれば、省力化して運営できるメリットがあります。企業連合だけでなく、日本銀行も「中央銀行デジタル通貨」の実証実験に乗り出しており、「通貨変革元年」となりそうです。
<賃金デジタルの導入も検討>
企業の通貨がデジタル化されるだけではありません。身近なところでは、お給料のデジタル払いの検討も進む見通しです。こちらはブロックチェーン構想ではありませんが、キャッシュレス化の促進や多様な賃金支払いのニーズに対応するものです。
労働者はいま、企業から現金で直接、または銀行などの金融機関に振り込んでもらう形で賃金(給与)を手にしています。この2つの方法以外に、デジタルマネーを使った賃金の支払いを可能にしようとするものです。「〇〇ペイ」と呼ばれるスマホの決済アプリなどが既に複数存在しており、労働者が希望すれば、賃金の全部または一部を企業がそれらを使って「入金」できることになります。
こちらは、政省令改正が整えば年内に実現しますが、厚労相の諮問機関である労働政策審議会で決済アプリの「資金移動業者」の運営を不安視する意見があり、政府は事業者指定の要件として(1)債務履行が困難になった場合に、債務を速やかに保証する仕組みを有している(2)現金自動支払機(ATM)を利用することで口座への資金移動にかかる額(1円単位)の受け取りができ、少なくとも毎月1回は手数料負担なく換金できる――などを提案して理解を求めています。
<ヘルスケアのデジタル化>
デジタル関連の3本目は、ヘルスケアサービスのデジタル化です。超高齢社会に突入した日本は、社会保障費の急増が確実視されています。今後の人口動態、経済動向を踏まえれば、人材や財政の「ダブル不足」に陥る可能性が高く、社会保障費の適正化と持続的な社会を構築することが課題となっています。
その打開策の一歩として、健康を維持し、病気になったとしても重症化させない取り組みが求められます。ヘルスケアのデジタル化がこの役割に寄与するとみられており、具体的にはAIによる健康診断や生活習慣のデータ分析で将来の健康状態を可視化したり、生体情報を分析することによって体調や感情の変化を把握したりするなど、健康維持に貢献する取り組みが加速します。
診断・治療の分野でも、デジタル技術で患者の重症化防止や早期社会復帰、医療サービスの向上、医療従事者の負担軽減を目指す動きが進み、政府もこうした動きを支援する政策を打ち出す方針です。
<ローカル5Gの商用実験が本格化>
「第5世代移動通信システム」を指す5G。2020年から商用サービスがスタートした通信システムで、通信キャリアのCМなどで頻繁に耳にするようになりました。一方、企業や自治体がスポット的に5Gを使える「ローカル5G」が存在し、その普及によって暮らしに大きな変化をもたらす可能性があります。
「ローカル5G」は、地域の企業や自治体などが建物内や施設内でスポット的に5G環境を構築でき、通信障害や災害などに強いという特徴があります。通信事業者による5Gの商用化が始まって2年。サービス提供エリアは拡大していますが、全国的には4Gが中心です。そうしたなかで「ローカル5G」の動向が注目を集めており、既存のキャリア以外の企業が実証実験に乗り出す見通しです。DX化に取り組む機運やコロナ禍によって遠隔での円滑なコミュニケーションなどのニーズが増えているだけに、実用化に向けて期待が高まっています。
<ドローンの領域拡大、荷物の輸送・配送の事業化も>
今年後半に改正航空法が施行され、ドローンの有人地帯における目視外飛行が可能になります。これに伴い、ドローンで物を輸送・配送する「ドローン物流」が実証実験のフェーズから実用化の道へ進むことになります。
「ドローン物流」に期待されているのは、「山間部・離島などへの輸送・配送」、「都市部の戸宅配送」、「災害時の物資輸送」「マンション・ビルなどの屋内配送」など多目的な用途が考えられています。すべて実証実験は進んでおり、今年の改正航空法はこうした流れの事業化に大きな弾みとなる模様です。
このほか、農業分野や高所の点検作業などさまざまな用途でドローンの利用が加速すると見込まれます。生活空間で当たり前のようにドローンを目にするまでには数年かかりそうですが、今年を境にドローンが身近になってくるのを感じはじめる年になるでしょう。
<日本型教育を築くGIGAスクール構想>
「GIGAスクール構想」とは、全国の児童・生徒1人に1台のコンピューターと高速ネットワークを整備する文部科学省の取り組みです。新型コロナウイルス感染防止の観点から2020年度に導入が進み、今年は現場での運用が本格化する見通しです。
教育現場でも先端技術の効果的な活用が求められています。また、ハード環境の整備だけにとどまらず、タブレットを活用したデジタル教科書や児童・生徒が個別に苦手分野を集中学習できるAIドリルといった「ソフト」開発も行われます。当初は23年度までに順次ハード環境を整備する予定でしたが、新型コロナの影響でオンライン授業の必要性が高まり、スケジュールが大幅に前倒しされました。今年は、小中高等学校に高速大容量回線を使った校内LANを整備して、クラウド活用も推進する計画です。
【筆者プロフィール】
株式会社アドバンスニュース
専務取締役報道局長
大野 博司 氏
1970年、青森県出身。中央大学大学院戦略経営研究科(
1994年、日本新聞協会加盟の地方紙に入社。社会部、教育、
'05年に東京支社で国会取材担当兼論説委員に就き、
' 労政ジャーナリスト(日本外国特派員協会) |
取材・文責
(株)アドバンスニュース