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「多様な働き方」に伴う社保適用を検討 厚労省の有識者懇が初会合、今夏報告書
フリーランスやギグワーカーなどの適用範囲と取り扱いも議論
厚生労働省は2月13日、多様な働き方を踏まえた社会保険(厚生年金保険・健康保険)のあり方を検討する有識者懇談会を立ち上げました。「年金制度改革」の一環で、パートなど短時間労働者の適用範囲拡大をはじめ、複数の事業所で働く人やフリーランス、ギグワーカーなどの取り扱いも議論。今夏をメドに報告書を取りまとめ、年内いっぱい議論を続ける社会保障審議会に提出します。社会保険料は事業所と従業員の折半であるほか、雇用を阻む仕組みにならない制度設計など課題は多く、議論の行方が注目されています。
短時間労働者の厚生年金保険・健康保険への加入は、かつてフルタイム労働者の労働時間の4分の3以上働く人に適用され、事実上週30時間以上の人が対象でした。2016年から対象範囲が拡大し、加入要件を(1)週20時間以上~30時間未満に拡大(2)月収8万8000円(年収106万円)以上(3)1年以上の雇用が見込まれる人で学生は除く(4)対象事業所は従業員501人から――などに広げました。
また、20年5月に成立した年金制度改革関連法で、「勤務期間1年以上」の要件を撤廃するとともに、22年10月から従業員101人以上に拡大。今年10月からは51人以上の中小企業まで拡大することも決まっています。併せてこの数年、短時間労働者に対する雇用保険の適用拡大やフリーランスに対する労災保険の適用など、これまで広義の社会保険の対象外だった労働者への適用が広がっています。
発足した有識者会議の正式名称は「働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方に関する懇談会」。委員は秋山実氏(健保連理事)、海老原嗣生氏(大正大学表現学部特命教授)、酒向里枝氏(経団連経済政策本部長)、佐保昌一氏(連合政策推進局長)、松浦民恵氏(法政大学キャリアデザイン学部教授)ら16人で構成。座長は菊池馨実氏(早稲田大学理事・法学学術院教授)が務めます。労働者の就労実態、事業所や医療保険者に与える影響、過去の適用拡大施行時の状況を踏まえつつ、主に(1)短時間労働者に対する被用者保険の適用範囲のあり方(2)個人事業所に係る厚生年金保険・健康保険の適用範囲のあり方(3)複数の事業所で勤務する者、フリーランス、ギグワーカーなど多様な働き方を踏まえた厚生年金保険・健康保険のあり方――を検討します。
初会合では、事務局を担う厚労省の保険局と年金局が、働き方の多様化と厚生年金保険・健康保険の適用の変遷と現状について説明。これを受けて全委員が発言し、適用拡大に向けた課題や留意点、懇談会の進め方に対する要望などを挙げました。次回以降は、短時間労働者を多く雇用する業種や個人事業所が非適用となっている業種、多様な働き方に関連した活動を行う団体などからヒアリングを実施。今夏をメドに論点整理と議論を重ねて報告書を取りまとめる方針です。
労働人口の減少下で、新しい就労形態が急速に伸びるなか、年金財政はひっ迫しています。委員の方向性は適用拡大に理解を示していますが、具体的な制度設計となると課題は多く、どのようなソフトランディングの仕組みを提言できるかがカギとなりそうです。