「賃金デジタル払い」を巡る議論 労政審で約1年ぶりに再開

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使用者側は肯定、労働者側は安全性担保を主張

労働政策審議会労働条件分科会(荒木尚志分科会長)は3月下旬、キャッシュレス化の促進や多様な賃金支払いのニーズに対応する「賃金デジタル払い」のあり方について議論しました。厚生労働省は昨年4月、制度設計案の骨子を同分科会に示しましたが、労働者側が決済アプリを扱う資金移動業者の安全性などを指摘して導入に強く反発。“冷却期間”を経て、約1年ぶりの再開となりました。政府は昨年6月に閣議決定した成長戦略フォローアップで「賃金デジタル払いの早期の制度化」を掲げており、22年度中の解禁を目指しています。

 

「賃金デジタル払い」は、企業が労働者の希望に応じて、銀行口座を介さずに給与の全部または一部を決済アプリなどに振り込むことを可能にする仕組み。実現するためには、「通貨で直接、労働者に全額支払う」と定める労働基準法第24条の省令改正が必要で、現在、例外で認めている「銀行」に「資金移動業者」を加えなければなりません。
金融庁に登録しているキャッシュレス決済サービス事業者は2020年12月現在で80社あり、大手では「PayPay(ペイペイ)」や「LINEペイ(ラインペイ)」など。解禁する場合には厚労省が安全性などの基準を設けて指定する方針です。厚労省が昨年4月に示した制度設計案は、課題解消に向けた仕組みや対応などが具体的に盛り込まれていましたが、着地点を探れないまま時間切れ。荒木分科会長は「労使間の意見の隔たり、委員間での理解の相違が残っている」と述べ、厚労省に今後の進め方を工夫するよう求めていました。

 

この日、厚労省は新たな検討項目も含めて制度案の要点を説明。それによると、資金移動業者の活用を企業が労働者に強制しないことが大前提で、事業者は厚労相が指定します。厚労相は指定を取り消すこともできます。指定の要件として、(1)債務履行が困難になった場合に、債務を速やかに保証する仕組みを有している(2)不正取引などが生じた場合に損失補償をする仕組みを有している(3)現金自動支払機(ATM)を利用することで口座への資金移動にかかる額(1円単位)の受け取り
ができ、少なくとも毎月1回は手数料負担なく換金できる(4)業務の実施状況や財務状況を厚労相に報告できる体制を有している(5)業務を適正・確実に遂行できる技術的能力を有し、社会的信用がある――の5つすべてを満たしていることを挙げました。
そのうえで、焦点となっている「労働者の同意」や「資金移動業者の指定要件」「指定・取り消し」について、新たな検討材料を加えました。
これに対し、使用者側委員は「労働者には賃金の多様な受け取りニーズがあり、選択肢を広げることができる」と肯定的。一方で、運用上の懸念点として「企業にあらたな負担が生じるのではないか」「労働者の同意のためにどこまで説明すればよいのか」「技能実習生など外国人への説明が難しいのではないか」などを挙げました。
労働者側委員は「個人情報保護や不正引き出し、資金移動業者が破たんした場合の払い戻し期間など安全面の懸念が多い」「安全性、確実性の担保がないと議論を進めることができない」など、さらなる安全性の担保を訴えました。これに対し、厚労省は「金融庁と連携してしっかりやっていく」と答えて理解を求めました。

 

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21年度倒産は5980件、57年ぶり低水準

東京商工リサーチが4月8日発表した2021年度の全国企業倒産状況(負債額1000万円以上)によると、倒産件数は5980件(前年度比16.5%減)、負債総額は1兆1679億7400万円(同3.3%減)となりました。コロナ関連の金融政策に支えられた結果、件数は2年連続の減少で1964年度の4931件以来、57年ぶりの低水準。負債額も4年連続の減少で、73年度の約9056億円に次ぐ48年ぶりの低水準でした。

取材・文責 アドバンスニュース

 

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