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カスハラ対応、「現場でなんとか」ではなく企業主導で整備を
深刻になりつつあるカスハラ。BtoCだけでなくBtoBでも発生する可能性があります。カスハラで企業に生じるリスクや、従業員を守るためにできることをご紹介します。
カスハラとは?
消費者による理不尽な要求や悪質なクレームなどの迷惑行為
厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」によると、カスハラ(カスタマーハラスメント)は下記のように定義されています。
顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの |
端的に言えば「消費者による自己中心的で理不尽な要求や、悪質なクレーム、それに伴う過度な言動などの迷惑行為」といったところでしょうか。
小売店や飲食店などの接客担当者に顧客などがカスハラをはたらく、いわゆるBtoCの事例が広く知られていますが、立場の強い側が取引先への無理な要求や暴言、セクハラをするといった、企業間、つまりBtoBで起こる迷惑行為もカスハラとされています。
「クレーム=カスハラ」とは言えない
「クレーム」と聞くと悪いイメージがつきがちですが、すべてが理不尽、悪質であるとは限りません。社会通念上正当な範囲で商品やサービスの改善を求める行為もクレームと呼ばれ、この場合カスハラとは認められないのが一般的です。しかし、「正当な範囲」の判断基準やクレームへの対応方法などは企業や業界によっても異なるため、明確な定義は難しいとされています。
カスハラの深刻化はもはや共通認識、東京都では条例制定への動きも
カスハラによる問題は、コロナ禍などの影響でより増加・深刻化したと言われており、企業や社会による対策が必要なことはもはや共通認識となりつつあります。例えば東京都では、2024年4月、全国初のカスハラ防止条例の制定に向け、カスハラの定義や対象、具体的な行為などの検討が行われました。
不十分なカスハラ対策で企業に生じるリスクやデメリットは?
業務遂行への影響
カスハラを行う顧客は「長時間・複数回にわたって対応を求め続ける」といった例も珍しくなく、大きく業務リソースを削られがちです。この場合、時間や労力を取られる担当者やその上司などの業務が圧迫されてしまいます。また、カスハラ対応に人員を取られることによる問い合わせ窓口の混雑や、カスハラ対応のための急な担当者変更など、他の顧客・取引先企業にまで影響が広がるケースも見られます。
従業員の心身への影響
カスハラ対応をする従業員には、顧客・取引先から強く当たられるなどで大きなストレスがかかるため、生産性の低下などが懸念されます。カスハラが解決せず、ストレスが蓄積すると心身を損ね、離職につながるリスクもはらんでいます。
他の従業員も含めたエンゲージメントの低下
カスハラの影響は顧客・取引先からのみもたらされるものではありません。従業員に「会社はカスハラを従業員に押し付け、適切な対応を取らない」と見なされれば、担当者当人だけでなく他の従業員のエンゲージメント低下、転職検討などにつながることもあるでしょう。
安全配慮義務違反に問われる
企業が従業員のカスハラ被害を把握しようとしなかったり、適切な対応を行わなかったりすることは、労働契約法第5条にある企業の義務「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする(安全配慮義務)」に違反するとして、従業員から訴えられるリスクがあります。勝訴したとしても、訴訟に至ったこと自体が「従業員に訴えられるほどの状況を作った」と見なされ、社会的信用低下につながることも考えられます。
カスハラ対策として企業が取り組むべきことは
カスハラに対する判断基準・方針の策定・明示
先にも紹介した通り、カスハラには法的に明確な判断基準があるわけではなく、対応なども企業や業界によって異なります。そのため、まず社内で「どのような言動・状況をカスハラと見なすか」といった明確な基準や、カスハラ対策・予防の方針を定め、従業員に浸透させることが重要になってきます。
カスハラ対応マニュアルの作成
基準や方針が策定されても、具体的な対応方法が示されていなければ、実際のカスハラ対策・予防は従業員に投げっぱなしということになってしまいます。基準や方針、業務内容や業務形態に沿って具体的な対応をマニュアルに落とし込み、従業員が迷わず対応できるように備えておきましょう。
マニュアルにどのような内容を記載すればよいのか悩む場合には、厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を参考にしてみるのも手です。「企業が具体的に取り組むべきカスタマーハラスメント対策」として、下記のような内容がまとめられています。
■カスタマーハラスメントを想定した事前の準備
■カスタマーハラスメントが実際に起こった際の対応
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非常に参考になりますので、ぜひ一読してみてください。
発生にあたっては事実確認を多面から
従業員を信じ守ることは重要ですが、正当なクレームを迷惑行為と決めつけるなど「カスハラの誤認」が起こると、さらに大きなトラブルにつながります。疑わしい事案が発生したら、担当者や周囲の従業員の言い分はもちろん、顧客・取引先の言い分、可能であれば第三者から見ての状況も確認して判断を行いましょう。
企業によるカスハラ対策の事例
対応マニュアルを策定し、実際のカスハラ事例も共有
大手運送企業のA社では、コールセンターのカスハラ対策として「カスハラ発言リスト」や「(対応に利用できる)文言集」を盛り込んだ対応マニュアルを作成しました。また、カスハラが発生したコールセンターに限らず、どのコールセンターでも同様の事例に対応できるよう、実際のカスハラ情報を全社で共有しています。
従業員の個人情報を守ることでカスハラを防止
飲食チェーン企業のB社では、「店舗スタッフがネームプレートの名前をもとにSNSで検索され、つきまとわれる」というトラブルをきっかけに、ネームプレートをイニシャル表記に変更しました。また、悪質なクレームなどは接客担当者ではなくお客様相談室が対応するなど、トラブルの報告と対応の流れを明確化して、従業員が迷わず対応できる体制を作っています。
カスハラ対応は「接客」の範疇を超えるものと考えて
これまで自社に目立つ事例がなかったからといって「カスハラ対応も接客のうち」などと甘く考えていると、いざ深刻な事例が生じた際に対応が遅れてしまいます。今はなくても「いずれ起こる可能性がある」と考え、方針策定やマニュアル作成を進めておきたいところです。
ランスタッドでは、独自の従業員ケアプログラム「ランスタッドケア」で、働き方もキャリアもしっかりサポートされたスタッフを派遣しています。自社だけでは難しいパートナースタッフのケアも万全ですし、自社のカスハラ対策のご相談も親身になってうかがいます。お気軽にご相談ください。