DX時代の雇用調整:エンプロイヤーブランドを守る - パート1

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DX時代における雇用調整において、組織はそのエンプロイヤーブランドをどのように守り抜いていくかについて、パート1とパート2の2部構成でお届けします。

このパート1では、ネガティブな報道やソーシャルメディアでの拡散をできるだけ回避する方法についてお届けします。パート2では、ネガティブなニュースが発生してしまった場合の対応についてご説明いたします。

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人員削減などのニュースが出ると、その企業のエンプロイヤーブランドに大きな影響を与えます。その内容によってはネガティブなコメントが一気に流れ出て、さらにSNSを通じた口コミが広まる可能性を考えると、雇用調整はより一層の思いやりを持って実施する必要があります。

人員削減が避けて通れないケースであっても、経営者やマネジメントチームが透明性を持ってその理由を伝えていれば、従業員が人員削減の理由をしっかりと理解することで、ネガティブなニュースを拡散する可能性を低くすることができます。だからこそ、経営者とマネジメントチームは、ビジネスリーダーとして従業員に共感を示すと同時に、エンプロイヤーブランドを守るための戦略を策定することが重要です。

 

ブランド力を守りながら雇用調整を行う方法

景気減速に直面している企業は、時に事業継続のためにその事業規模を適正にすることが必要とされることがあります。近年で言えば、大手テクノロジー企業が大規模なダウンサイジングでニュースになり、10,000 人以上の人員削減を発表した企業も数多くありました。時に有名企業では、電子メールの一方的なコミュニケーションだけで7,500 人以上の従業員を解雇したことでも脚光を浴びたことは記憶に新しいでしょう。

マネージャーは、その厳しい環境下であっても難しいコミュニケーションに躊躇してはいけません。しかし、会社のブランドを守りながら進めることができるでしょうか。

 

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真の誠実なコミュニケーション

人員削減の際に必ずされる質問があります。

「人員削減の理由は何ですか?」

売上減少や生産コストの増加など、どんな原因であっても、その理由をちゃんと伝えなくてはなりません。人員削減が避けられない理由と、その対象範囲を決定する基準に妥当性を持つことが重要です。この際のコミュニケーションで行ってはいけないことがあります。

行ってはいけない事

  • メールによる人員削減の実施:大手テック企業では、従業員に解雇通知のメールを一斉送信したことでユーザーを含めた多くの人に非難されました。従業員にとって最も大事なコミュニケーションにおいては、メールではなく対面または、少なくともオンラインで直接伝えることが重要です。一対一のミーティングは組織としての誠実さを示し、またその場での従業員の抱く疑問や質問に答えることができます。
  • 淡で非人道的な対応:人員削減の実施中にSNSで共有されることの一つに、コミュニケーションを行うマネージャーの対応が冷淡で非人間的であることが挙げられます。人員削減を行っているときだからこそ、今まで以上に従業員を思いやり、敬意と理解を示すことが重要です。従業員のこれまでの貢献に感謝を示し、コミュニケーション中に抱く気持ちへの共感を示します。
  • 矛盾した情報発信:時に人員削減を行っているときに、その理由と矛盾した情報を出す企業があります。例えば売上の減少が理由で人員削減を行う企業が、近い将来に収益が増加する予測を発表することは、そもそも理由の妥当性を失ってしまいます。

 

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退職する従業員を支援する

割増退職金だけで人員削減を行う企業も数多くあります。可能であればショックを受けた従業員に前向きに進む力を与え、新しい仕事を見つける支援の提供を検討することをお勧めします。

再就職支援サービスを通じた専門家のサポートがあれば、退職する従業員の次のキャリアへのアクションを支援することができます。再就職支援サービスでは、従業員が将来の仕事の選択肢を検討し、最善の行動や方針の決定をサポートすることで、従業員により良い再就職に向けたサービスを提供します。

この場合、従業員にとってより良いサービスを提供する会社を選ぶことが重要です。何を重要とするかは、企業文化や業種、また地域やその雇用環境によっても異なることがあります。

また再就職支援サービスが、従業員の新しいチャレンジへの取り組みに役立つかの観点で検討する方法もあります。たとえば、再就職支援サービスで応募書類の作成や面接対策をするだけでなく、専門的なキャリアコー​​チングを通じて従業員の成長を支援できるかどうかという点を重視する企業もあります。その結果、従業員がより早く今までより良い待遇で仕事を見つけ、会社が選んだ再就職支援サービスを受けたことに感謝し、結果的に成長を実感できれば、悪い評価をされる可能性は低くなります。

 

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ソーシャルメディアを使って仕事を得る

マネージャーは従業員が離職した以上、その行動を制御することはできません。

その従業員が自分の体験や重要なライフイベントをインターネット上で共有しないことを期待するのはあまりにも非現実的です。実際、米国のNational Labor Relations Board(全国労働関係委員会)は、解雇された従業員が以前の雇用主を公に批判した場合でも、雇用主は退職金の一部の返金を求めることはできないとの裁定を下しました。

かつては、退職後の従業員は黙々と仕事を探すのが常でしたが、今日のソーシャルメディアは次の仕事に就くための強力なツールとなっています。現代の人々は、人員削減の体験を共有し、様々なイベントを活用して新しい仕事の機会を見つけることに躊躇しない人が増えています。

DX時代のエンプロイヤーブランドを維持するためには、退職した従業員がこれらチャネルを最大限に活用して次の仕事を探すより良い方法を理解できるようにすることにあります。

ソーシャルメディアは、経験、ネットワーク、就職活動を共有するのに最適な場所であると同時に、将来の雇用される企業にとっても良くも悪くも非常に目立ちます。

ソーシャルメディアの転職活動への活用に関する専門的なトレーニングを再就職支援会社が提供すれば、キャリアを新しく作る従業員がその複雑な可視性や公共性をナビゲートするのに役立ちます。また、LinkedInやFacebook の投稿を使用して新しいポジションへの関心を示す効果的な方法を習得することもできます。その中で、専門家によるコーチングは、人材に自信を与え、人員削減の影響を受けたという恥ずかしさを克服するのに役立ちます。 

[参考]ランスタッドのキャリアコーチングソリューション「ライズスマート」

 

評判管理とデジタルエンプロイヤーブランド

人員削減には様々な課題がありますが、デジタル時代のエンプロイヤーブランドを守る最善策は、影響を受けた従業員が将来得られる新たな体験を第一に考えることが何より重要です。

人員削減を行う上でのコミュニケーションの透明性と共感、そして従業員の未来を見据えた有益な情報や再就職支援サービスの提供は、たとえ転職に困難な状況であっても、人員削減の影響を受けた従業員が辞めた会社へのネガティブな印象を抱かないようにする可能性を高めることができます。そして結果的に雇用調整を行った組織に関するオンラインでのネガティブなコメントを未然に防ぐことができるのです。

この記事のPart 2.では、否定的な報道やソーシャルメディアの報道が発生した場合に対応する方法について説明します。

 

※本ブログは、2023年3月1日にrandstad risesmartが発信したブログ「manage your digital employer brand during a layoff - part 1.」を元に、日本の雇用市場と商習慣に照らし合わせて加筆修正を加えたものです。原文(英語)は以下URLよりご覧いただけます。

https://www.randstadrisesmart.com/blog/manage-your-digital-employer-brand-during-layoff

 

 

【筆者プロフィール】

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下瀬川 和宏(しもせがわ かずひろ)
ランスタッド株式会社ライズスマート事業部
ビジネスディベロップメントエグゼクティブ
 
技術翻訳会社の創立者・共同経営者、グローバルIT企業のアカウントマネジメントを経て、再就職支援サービス業界に転身。経営者としての経験と組織の意思決定者へのプレゼンテーションのスキルを生かし、15年で400社を超える組織の構造改革・雇用調整におけるHRコンサルティングに携わる一方で、リーダーとして200名を超える組織のピープルマネジメントも経験。近年では構造改革の専門領域に加え、EDIB推進やリーダーシップ開発、また組織のチェンジマネジメントやHRトランスフォーメーションのプロジェクトマネジメントを通じて、組織の活性化とタレントモビリティのエバンジェリストとして人々の多様な働き方を支援している。

 

ライズスマート

 

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