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派遣スタッフの採用と定着にDXが与えた好影響
働き手を求める企業に、いかにスピーディーに適切な人材をマッチングするか。
仕事を求める求職者に、どうやって希望と適性に叶う仕事を紹介し長く働き続けてもらうか。労働力不足が深刻化する今、企業と人材をつなぐ“ハブ”となる人材サービス会社のあり方にも変化が求められています。
ランスタッド株式会社での取り組みを、同社マーケティング&ブランドコミュニケーション本部DX部ディレクター 中村雄一氏に伺いました。
人材難の時代に人材サービス会社が抱える課題
――派遣スタッフ事業における課題は何だったのでしょう
課題は二つありました。一つめは、求職者への仕事の紹介までに時間がかかっていたことです。求職者がランスタッドに応募してから派遣スタッフとして登録する登録面談までの時間は、「応募受付チャットボット」の導入により大幅に短縮できました(参照:DXは日本の人材不足を救うのか~選ばれる企業になるための人材活用DX~)。それとは別に、さらにその登録スタッフへのお仕事のご紹介があまりスムーズにできていないという課題があったのです。
以前は求職中のスタッフに電話を掛けても出ない・メールをしても返事が来ないということがほとんど。「お仕事を紹介したい」と朝に留守電を残しても、夕方になってやっと連絡が取れるか取れないかという状況で、これを何とかする必要がありました。
もう一つの課題は、就労中の派遣スタッフ様とランスタッドのコンサルタントとのコミュニケーションです。派遣スタッフの皆様がコンサルタントと話をしたいというとき、お仕事が終わり夕刻になってから電話を掛けても連絡がつかないということが往々にありました。いますぐ知りたいことがある、相談したいことがあるという派遣スタッフ様にとって、これはストレスになっていたはずです。
――課題をDXで解決するために選んだ方法は?
派遣スタッフの皆様とのコミュニケーション手段を、電話やメールからLINEに切り替えました。LINEの国内普及率は8割以上とされています。皆様のスマホに入っていて普段使っているツールにすれば、返答率は向上するはずだと考えたのです。
ランスタッドではすでにマーケティングオートメーションのHubSpotを導入していましたので、これと連携させて運用することにしました。
ランスタッドに派遣スタッフとして登録していただく求職者の皆様に、LINEのお友だち登録をしていただくようにご案内しています。全体の約60%の登録者様がお友だちになってくださっていて、毎月1,200名程度のペースで増えていっていますね。
埋もれていた求職者に的確にお仕事をご紹介
――LINE導入の成果は出ていますか?
以前はお仕事紹介の電話やメールをしても、返信率は20%程度でした。コーディネーターは来るか分からない返事を何時間もひたすら待っているという状況だったのです。
それがLINEにしてからは早ければ数秒で返事が来るようになり、返信率が80%にまで改善したのです。これによりコンサルタントやコーディネーターの待ち時間が大幅に減りましたし、クライアント企業様に人材をご紹介できるまでの時間の圧縮につながりました。
実際に、お友だちになっている方となっていない方とでは、就業率に2倍の差が出ています。この要因としてレスポンスのスピードアップもありますが、お仕事を紹介するコーディネーターとのコミュニケーション量が増えたことで、就業につながりやすくなっていると考えています。
――DXによりお仕事をマッチしやすくなったのですね
求職中のスタッフ様を私たちは「WANTスタッフ」と呼び、ここにKPIを置いています。LINEでつながったことにより、登録したもののお仕事が見つかってない方、一度他の派遣会社から就労し再びお仕事探しをしている方などがリアルタイムで可視化されるようになりました。
「今お仕事を探していますか?」「いつから働けますか?」というアンケートを、LINEで定期的に配信しています。すると、以前はシステム上で200名程度しか把握していなかったWANTスタッフが5,000名もいることが分かった。今まで登録されていたのに見えていなかったWANTスタッフが可視化されたのです。
可視化されたWANTスタッフに対し、コーディネーターが集中的にお仕事を紹介するアプローチをしていきます。さらに、LINEには登録した希望条件に合うお仕事のレコメンド情報も配信され、毎月約1,000名がLINEからダイレクトにお仕事に応募しています。この2つが就業率に大きな差が生じさせていると考えます。
DXが効率化とスピードアップを実現し課題を解決
――LINEの導入だけでさまざまなことが効率化された印象ですね
LINEとマーケティングオートメーションを連携させているところがポイントです。先ほどの定期アンケートはHubSpotの自動アンケート機能を利用していますし、自社サイトに掲載されたお仕事情報をレコメンドとして配信するのもHubSpotとの連携によるものです。
年齢や性別、オフィス系・ファクトリー系それぞれのお仕事を探しているWANTスタッフの割合、どのようなお仕事が人気かもすべてHubSpotのダッシュボードで把握できます。誰がどのようなお仕事に応募しているかも可視化されるので、コーディネーターは以前よりも的確にマッチするお仕事をご紹介できるようになっているはずです。
社内に目を向けると、どの支店のどのコーディネーターがお友だち登録を推進しているか、どのコンサルタントがどれだけLINEをコミュニケーションに活用できているかもトラッキングできます。
DXを進めていく上では、実際に利用する社員への啓蒙活動が欠かせません。現場のコーディネーターやコンサルタントにLINEのメリットを伝えていったり、成功事例を共有していったりする上でも、マーケティングオートメーションの数字が役立っています。
――もう一つの課題だった「コミュニケーション」はいかがでしょうか
お仕事が決まりWANTスタッフが就業すると、LINEのリッチメニューが就業中スタッフ様向けの内容に切り替わります。LINE一つでお仕事への応募も勤怠の申請もできるようにしているのです。
そのリッチメニューの一つに、24時間365日対応できるチャットボットを導入しました。「有給休暇の申請方法」というような定型の質問への回答はチャットボットで対応することで、派遣スタッフ様からのおよそ7割のお問い合わせに即座に返答できています。派遣スタッフ様がこれまで抱えていたであろうフラストレーションを大幅に改善することができました。
さらに、「今後のキャリアについて相談したい」「次のお仕事に迷っている」といったお悩みやご相談については、コンサルタントと直接1to1でチャットできる仕組みになっています。ここまでの対応をしている人材サービス会社はランスタッドの他に聞いたことがありません。LINEでのコミュニケーションは、派遣スタッフ様へのアンケートでも好評をいただいています。
DXとヒューマンタッチで定着率を上げていく
――派遣スタッフの離職率やエンゲージメントに変化はありますか
毎週金曜日の夜にその日の気分をタップ一つで回答してもらうという簡単なサーベイを、一部で試験的に導入しています。それでネガティブなリアクションをした派遣スタッフ様には、コンサルタントから「お仕事はどうですか」とお声掛けをする。すると、「実は業務に慣れなくて」「職場の人とうまくいっていない」といった本音を引き出すことができるようになりました。
これまではケアが必要な派遣スタッフ様がいても、それに気づけず急に「辞めます」という話になることもありました。でも困り事や悩みを抱えている方が可視化されたことで適切なタイミングでのフォローが可能になり、離職率が半分以下に低減したのです。これは今後、導入を拡大していきたいですね。
デジタルツールを駆使していますが、派遣スタッフ様をケアするのは最終的には人。離職を防いだりエンゲージメントを向上させたりするのは、デジタルではなくヒューマンタッチの部分です。業務効率化や仕事を探している人・ケアを必要としている人を可視化することは、人によるケアを手厚くするためであり、それ自体が目的ではありません。
――DXが進んでいることではなく、ケアが差別化になっている?
ランスタッドでは、派遣スタッフの皆様が安心して働けるよう「ランスタッドケア」という就業サポートプログラムをご用意しています。
キャリアサポートやスピーディーな対応、満足度調査など5つのプログラムで構成されていますが、DXで行なっているのはそのための仕組みづくり。派遣スタッフの皆様のケアのためのテクノロジーであり、ヒューマンタッチなのです。機能開発は派遣スタッフの皆様にご協力いただくユーザーアンケートの声を最優先して進めています。
人材を募集しても人が集まらず、採用に苦戦している企業様は多くいらっしゃるでしょう。ランスタッドでは就職お祝い金などで人を集めるのではなく、「手厚いケア」でエンゲージメントを高め、派遣スタッフ様のキャリアを支援することで採用と定着につなげていきます。