[離職率改善方法]人材流出を防ぎ、離職率を抑えるには?

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多くの人事担当者は、離職率の高さが組織を不利な状況に追い込むことをすでに知っています。しかし、実際にどの程度の損失になるのか、具体的な数字を把握している人はどのくらいいるでしょうか?

恐らく、具体的にどのくらいの数字になるかをじっくり検討したことがある方は極めて少数と思われます。離職による真のコストを検証したあるケーススタディ(英語サイト)では、従業員が2年ではなく3年勤続した場合、その3年間で会社に130万ドル(日本円で約1億4300万円*1)もの利益をもたらすことがわかりました。

複数の、しかも大分控え目に見積もった分析を見ても、従業員1名を失うことによる会社に与える損失は、その人の年間給与の1.5倍という試算が示されています。例えば年収5万ドル(日本円で約550万円)の従業員が別の会社への転職を決めた場合、会社側は少なくとも75,000ドル(日本円で約830万円)の損失を被る計算になります。本人の年収が高ければ高いほど、離職による損失も大きくなります。

従業員の離職がそれほどの負担につながるのには理由があります。以下の要因に関わるコストが上乗せされるからです。

  • 求人広告
  • 応募者の選考
  • 新規採用者の研修
  • 不慣れから起きるミス
  • 生産性の低下
  • 周囲に与える文化的影響

試算した額の程度に関わらず、経験を積んだ人材を失うことが組織にとって大きな金銭的損失であることは明らかです。したがって、企業は人材流出を防ぐための人材の定着戦略に力を注ぐ必要があります。その結果として、採用・研修コストを抑制し、高い生産性を維持し、大きなミスを防止できます。

 

研修・キャリアアップの機会

従業員にとってキャリアアップは重要な関心事です。今いる組織の中で新しいスキルを習得し、キャリアアップできる機会があるかどうかを知りたいと考えています。キャリアパスが見えなければ、どこか別の場所で新しい機会を探し始めます。
企業の約87%が昇進・昇格は人材の定着に効果的(英語サイト)と考えています。それにもかかわらず、社内異動・公募制度を設けている企業はわずか3分の1程度です。こうした従業員と企業側との認知のズレが、年間数千ドル、場合によっては数百万ドルの損失につながりかねません。

明確なキャリアパスを示すことで、従業員の定着を向上させることができます。個々の従業員が自分のキャリア目標を実現するために何をすべきか、そして研修機会を活かし、求められた生産性を達成し、それを成し遂げた時にどのような見返りを得られるかを知っている必要があります。
少なくとも、社内人材の昇進・昇格を重要視すること、上位職を担うために必要な能力開発の機会を数多く提供することは必要不可欠です。

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評価に見合った昇給

中間職の給与はこの30年以上、実質的には横ばい状態(英語サイト)です。本人たちもこの先の昇給が期待できないことを感じています。他に収入アップできるポジションがあれば喜んで転職するのも、もっともなことです。収入を上げるための唯一の手段が転職の場合もあるのです。
評価に見合った昇給は、従業員があなたの会社に留まる大きな動機になります。物価の上昇に応じてではなく、従業員の豊かな生活を支えられるような昇給制度を設けることが肝要です。

実際に、ランスタッドジャパンがある就業先の従業員にアンケートをとってみると、

  • 評価されない
  • 目的意識がわかない
  • 意欲的に仕事ができない

など評価制度が適切でなかったり不明確なことが、定着に悪影響を及ぼしていることががわかりました。そこで、アンケート結果に基づいたスキルや勤怠に関する評価制度を策定し、実際に給与に反映されるシステムを導入しました。その際に最も注意した点は、客観性を持たせることでした。透明性のある基準でなければ従業員の信頼を得ることができなくなり、「昇給のための制度」が「昇給させないための制度」と歪んで認識される恐れがあると考えたためです。昇給の基準だけでなくキャリアパスも目に見える形にしたことで、従業員がキャリアアップできるステップも明確になりました。評価制度の基準を決める際には、会社として従業員に期待している成果を落とし込むことで、全従業員に進むべき方向性を示すことに成功したのです。

(詳しい内容やその他の事例については、次回のコラムにてご紹介します)

従業員にとって魅力ある福利厚生・従業員特典

ある従業員調査によると、自分で選択して利用できる福利厚生や従業員特典があれば会社への愛着心が増すと回答した人が72%に上りました。つまり、全員に一律の福利厚生が人材の流出防止に必ずしも効果的でないことを意味します。それよりも、本人にとって重要な福利厚生を提供する選択方式のほうが有効です。
こうした要望に応えられるほどの大きな人事部門を持たない中小企業の場合は、評判の高い福利厚生の提供に力を注ぐと良いでしょう。
昨今の従業員が重要視する福利厚生には、例えば次のような制度があります。

  • 有給休暇の取得促進
  • 従業員持株制度
  • 有給病気休暇
  • テレワークに対する手当(公共料金の補助など)
  • 退職年金制度

従業員の年齢層が比較的若い場合は、満足度を維持する一つの手段として柔軟な働き方を採り入れると良いでしょう。職場の柔軟性はミレニアル世代にとっては非常に強力なアピールポイントです。

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エンプロイヤーブランドの強化

転職の口コミサイトやFacebookなどで、働く人が投稿した職場の口コミを簡単にシェアすることができます。多くの人が転職を思い立ったとき、新しい仕事を探すには、より有利な求人募集をリサーチし、求人企業について詳しく知るためにインターネットを頻繁に活用します。あなたの会社に寄せられている否定的な口コミが多いことがわかれば、いま働いている従業員の転職意欲もますます膨らむでしょう。

エンプロイヤーブランドの強化は企業としての評判を高める有効な手段です。評判が上がれば優秀な応募者が集まり、就業中の従業員の流出も防ぐことができます。ただし、魅力的なエンプロイヤーブランドとは自然発生するものではありません。常に安定した人材の定着力を備えるためには、その目標の実現に寄与するエンプロイヤーブランディング戦略が必要です。
どのようなエンプロイヤーブランディング戦略が適しているかは業種や職種によって異なりますが、エンプロイヤーブランドを高めるためには一般に次のような方法があります。

  • 従業員満足度調査を行い、その結果を人材の定着計画に積極的に組み込む
  • 不満のある従業員と話し合いの場を設け、互いにメリットのある解決策を見出す
  • 職場で受け入れられ、評価されている実感を全員が持てるような企業風土を醸成する
  • エンプロイヤーブランディング戦略の効果を評価するための測定項目を設定する

離職率を抑える方法がわかれば、貴社の成功に驚くほどのメリットをもたらす可能性があります。適正なアプローチで取り組むことによって、従業員の意欲を保ち、適正な評価や報酬を与えて、満足度を保持できます。その結果、従業員はもっと良い機会を外に求めるのではなく、今の会社で力を発揮したいと考えるようになるでしょう。

次回は実際にランスタッドが行った事例を紹介していきます。

*1 1ドル=110円にて換算

優秀な社員の離職率

 

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<出典>
本コラムは、ランスタッドのオリジナルコラム(英語版/English Ver.)「employee turnover why people leave and how to stop it.」に加筆・修正した内容となります。

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