未来の「当たり前」になるか?新たな経済形態「ギグ・エコノミー」とは

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技術革新は日進月歩で進んでおり、今この時代に生きる私たちが、正確な将来を予測するのは困難です。しかし現在の社会の動きから、未来に向けた“兆し”を掴むことはできます。今回は近年広がりを見せている新たな働き方の一つ「ギグ・エコノミー」について、その可能性を探っていきます。

新たな雇用によって形成される「ギグ・エコノミー」とは

スマホアプリを使って簡単に車とドライバーを手配できるライドシェアサービス「Uber(ウーバー)」をご存知でしょうか。もしくはフードデリバリーサービスの「Uber Eats(ウーバーイーツ)」の方が、日本ではより認知が高いかもしれません。中には、すでに利用したことがある方もいるでしょう。

これらのビジネスがユニークなのは、サービス提供者となるパートナーが、企業側から単発の仕事を請け負う形で仕組みが作られていることです。

今、「Uber」や「Uber Eats」のように、企業に社員として雇用されることなく、インターネット上のプラットフォームやスマホアプリ等を通じて単発の仕事を受ける働き方が米国を中心に広がり、日本でも様々な企業がサービスを展開し始めています。この様な働き方によって形成される経済形態は、「ギグ・エコノミー(Gig Economy)」、働き手は「ギグ・ワーカー(Gig Worker)」と呼ばれています。

ギグ・エコノミーでの働き方には大きく4つの特徴があります。

1つ目は、基本的にリモートワークであること。仕事を請け負った人はオフィスなど決められた場所に出勤することなく、利用者に直接サービスを提供します。

2つ目は、空いている時間や休暇などを利用し、時間を自由にコントロールして働けること。短期間に集中して稼いだり、子育ての合間のわずかな時間を利用したり、それぞれのワークスタイルに合わせて働くことができます。

3つ目は、インターネット上のプラットフォームやスマホアプリなどを通して仕事が得られること。

4つ目は、契約の形態が一般的な会社員やアルバイトなどの「雇用契約」の形態ではなく、契約に定められた業務の遂行や成果に対して報酬を得る「業務請負・委託契約」の形態であることです。

 

フリーランスの仕事や副業、クラウドソーシングとの関連性

「雇用契約」ではなく、「業務請負・委託契約」形態である、という部分にだけ着目すると、フリーランスの仕事に近いものと思う方もいるかもしれません。

フリーランサーがプログラムを完成させるなど、請け負った案件の完遂が求められるのに対し、ギグ・ワーカーは一つの案件の中の部分的な作業を担います。しかも、ギグ・ワーカーはモノや場所を介さず、空いた時間に自分の労働力やスキルを提供することで作業を遂行出来るという点も大きな違いと言えるでしょう。

ちなみに企業がインターネットを通じて個人に仕事を発注する「クラウドソーシング」に関しては、ギグ・エコノミーと特徴が同様であり、ほぼ同じ文脈で使われているようです。例えば、フリーランサーでもクラウドソーシングのサービスを利用し、案件の中の部分的な作業を担っているとすれば、それはギグ・エコノミーの働き方ということになります。

 

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「ギグ・エコノミー」のメリット・デメリット

近年、ギグ・エコノミーが広まりを見せている背景には、より自由度の高い働き方を求める労働者側のニーズと、企業側の正社員雇用以外でも広く仕事を依頼したいというニーズの双方がマッチしているからです。

それに加えてテクノロジーの発達とともに、インターネットを介した仕事のマッチングや契約に関するやり取りなど、仕事を請け負うために必要な手続きが簡単にできるようになったことも要因の一つに挙げられるでしょう。

これまでの労働市場では、1日8時間・週5日の勤務が正規雇用の基本とされることが多く、そのシステムにフルコミット出来ない人たちは、正社員として就業することが困難でした。

そうした点においてギグ・エコノミーは、フルタイムで働くことが難しかった人たち——例えば育児や介護を担う必要がある人、障がいや持病がある人などのほか、空いた時間を有効に使って仕事をしたい、副業で収入を得たいと考える人に対して、大きなチャンスをもたらすと言えます。

ギグ・エコノミーのメリットは働き手だけが享受するものではありません。
例えば企業側にとっては仕事を依頼出来る人の層が広がることは大きなメリットとなるでしょう。長期的な雇用は難しいがスキルを持った人材をプロジェクト期間のみアサインする、接客業を中心に、人手がどうしても足りない時に単発で仕事を依頼するなど、より多様な形で事業を運営していくことが可能になります。

その一方で、ギグ・ワーカーは、企業側との契約が「業務請負・委託契約」であった場合、「雇用契約」の形態の場合に得られる労働時間中のケガなどの際の労災給付や、失業した際に得られる失業保険が受けられない、などのデメリットがあります。また、トラブルが起きた際の責任も企業側ではなく、働き手に委ねられることも考えられます。

企業側のリスクも考えられます。
例えば、上記のようなトラブルが世の中に出回った場合、契約上問題がないとしても、依頼主である企業の姿勢が問われることになるでしょう。そのため、企業側もしっかりした運営体制を構築する必要があります。

 

労働人口が減少する中、台頭していく経済形態

今回ご紹介したギグ・エコノミーの他、フリーランスや副業などを含めた働き方は、新しいがゆえに日本ではまだまだ法整備が追いついていない部分もありますが、将来的には改善されていくと期待されます。

まだ課題はあるものの、労働人口の減少が回避できない状況である日本では、新しい労働形態が労働力不足の緩和に繋がる可能性を秘めていると言えます。

「週5日、朝から夕方まで決まった時間で働く」「オフィスに必ず出勤して仕事をする」などこれまで「当たり前」とされてきた働き方が変わることで、企業が従業員に提供する働き方にも変化が求められています。固定観念を振り払って時代に適切な労働環境を提供することが、企業としての成長にも繋がるのではないでしょうか。

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