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金融業界でチームのモチベーションを高める鍵とは
変化の激しい金融業界でチームのモチベーションを維持するのは、常に簡単ではありません。タイトな締切、長時間労働、厳格な規制対応といった要素は、従業員のエンゲージメントや定着率に大きな影響を与えます。
前回の記事では、金融業界におけるモチベーション低下の原因について取り上げました。今回はその続編として、現場で実践できる具体的な対策にフォーカスします。厳しい環境下でも、チームが「やる気」と「価値」を感じながら働ける職場づくりについて、リーダーとしてどのようにアプローチできるかを紐解いていきます。
金融業界における従業員モチベーションに関する注目データ5選
給与だけでは、モチベーションは生まれない
もちろん、魅力的な給与は重要です。ですが、従業員のモチベーションを本当に高めるのは、それだけではありません。最新のREBR調査によると、アメリカでは金融業界の従業員の74%が「以前よりもエンゲージメントが高まった」と感じており、その主な要因として挙げられているのがワークライフバランスの改善です。
一方で、デンマークの調査では、「モチベーションが低い」と回答した金融業界の従業員のうち42%が雇用の安定性への不安を理由に挙げています。
このように、モチベーションを高める要因や、それを阻む要因は国やチームによって異なります。しかし、だからこそ、リーダーとして職場の士気やエンゲージメント、そして長期的な定着を高めるための本質的なアプローチが求められるのです。
モチベーションを高める5つのポイント
これまでに数多くのクライアント企業の金融チームと取り組んできた現場での知見、そしてREBR調査から得られた最新のインサイトをもとに、従業員のモチベーションに大きな影響を与える5つの要素を明らかにしました:
- 透明性
- 仕事の意義
- 成長の機会
- ワークライフバランス
- 評価と承認
これらの要素は単なる福利厚生以上に、従業員が日々の仕事にどれだけ意欲を持ち続けられるかに直結します。次の章からは、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
1. 透明性を確保する
チームのメンバーが仕事に意欲を持ち続けるためには、日々の業務に取り組むだけでなく、自分の役割が組織全体の成果にどうつながっているのかを実感できることが大切です。ただ数値を報告するのではなく、その分析がいかに経営判断を支え、成長を後押ししているかを明確に伝えることが、仕事への誇りとモチベーションにつながります。
そのためには、意見や質問が自然と交わせる風土づくりが欠かせません。オープンドアの姿勢や定期的な1on1の時間を通じて、社員が「声を上げやすい」と感じられる環境を育てましょう。
透明性とは、単に情報を共有することではありません。それは信頼を築き、不安を軽減し、社員が「自分もこの会社の一員だ」と実感できる職場をつくること。自分の貢献が組織にとって意味のあるものだと分かれば、モチベーションは自然と高まっていきます。
2. 仕事に「目的」を感じられる環境をつくる
金融の仕事は、どうしても「数字を扱うだけ」に見えがちです。だからこそ、日々の業務が会社の成長や社会への貢献にどうつながっているのかを、明確に伝えることが欠かせません。
- ミッションとの接続
正確な財務報告がいかに企業の健全性を保っているか。あるいは、コスト削減の提案が新規事業への投資につながったか。経理から財務企画まで、すべての業務が組織の未来を支えている――その意味をしっかり伝えましょう。
- 成果への当事者意識
仕事を「作業」ではなく「プロジェクト」として捉えることも重要です。たとえば「第4四半期予算プロジェクト」は単なる数値処理ではなく、会社の重点施策に必要なリソース配分を可能にするプロセスです。自分の担当が全体像の中でどんな役割を果たしているかが見えると、自然とやりがいが生まれます。
- ビジョンの発信
「私たちは単なる数字の番人ではなく、経営の意思決定を支えるパートナーだ」
こんなビジョンを日々の中で繰り返し発信することで、チーム全体の意識も変わっていきます。
金融業界における従業員モチベーションに関する注目データ5選
3. 成長のチャンスを広げる
金融業界でキャリア志向の強いプロフェッショナルにとって、「成長の停滞」はモチベーションの最大の敵です。だからこそ、学びの機会を用意することは単なる福利厚生ではなく、不可欠な戦略といえます。継続的なトレーニングや教育機会を提供することでスキルが磨かれるだけでなく、「あなたの未来を大切にしている」というメッセージを伝えることができます。それが大きな原動力になるのです。
その際には、従来型の研修にとどまらず、視野を広げる工夫も大切です。たとえば、財務アナリストに財務企画のプロジェクトへ参加してもらったり、監査担当者が資金管理チームの業務を体験したりする機会を設けましょう。いつもの役割から一歩踏み出すことで、新たな刺激や気づきを得て、日々の仕事に対する意欲が高まります。
また、メンター制度も強力なモチベーションの源です。経験豊富な社員が若手の相談役となり、スキルやノウハウだけでなく、情熱や姿勢までも伝えていく。そのような関係性が信頼を育み、個々の成長意欲を加速させます。
そしてもうひとつ、忘れてはならないのが「キャリアの道筋」を明確に示すこと。入社数年で財務マネージャーを目指せるというリアルなビジョンが描ければ、社員は努力を惜しまず、長期的な貢献にもつながります。反対に、先が見えない状態では、いずれモチベーションが失われ、離職にもつながりかねません。未来を示すこと。それが、今のベストパフォーマンスを引き出すカギとなります。
4. ワークライフバランスを整える
金融業界では燃え尽き(バーンアウト)のリスクが常に高く、「ワークライフバランス」はもはや理想論ではなく、不可欠な要件です。そしてその空気をつくるのは、まぎれもなくリーダーです。遅い時間や週末の業務は本当に必要な場面だけにとどめ、有給休暇は「取ってもいいもの」ではなく「積極的に取るべきもの」として後押ししましょう。社員が心から安心して休める環境を整えることが、結果的に高いパフォーマンスにつながります。
そして、リーダー自身の行動も重要です。たとえば「そのメールは朝まで待てるなら、深夜に送らない」。こうした小さな配慮が、職場の文化を変えていきます。
繁忙期以外には、柔軟な働き方も選択肢として提示しましょう。財務の多くの業務が資料作成や数値分析であるなら、時にはリモートワークや時差勤務も有効です。少しの柔軟性で、ストレスを大きく減らすことができ、生産性にも悪影響を及ぼしません。
また、心身のケアを「言葉」だけでなく「行動」で示すことも大切です。多忙な日にランチを提供したり、期限明けにチームでの打ち上げを企画したり、ストレスマネジメントに関する支援制度(カウンセリングなど)を整備したり。こうした取り組みは、「社員の健康に本気で向き合っている」という信頼感につながります。
最後に、注意したいのが評価の軸です。徹夜や長時間労働に報いるのではなく、効率的な働き方を称賛しましょう。燃え尽きるほど働かなければ評価されない―そんな文化が根づいてしまうと、社員は疲弊して辞めていくか、自らを追い込んでしまいます。
5.「認めること」を習慣にする
Workhumanの調査によると、「社員の頑張りを認識すること」は、単なる好意ではなく、非常に強力なモチベーションの源泉です。そして、その効果を最大限に高めるには、日常的かつ即時性のあるフィードバックが欠かせません。たとえば、報告書の効率化や重要なミスの早期発見など、小さな成果であっても、タイミングを逃さずに称賛しましょう。それが次の前向きな行動につながり、チーム全体の士気を高めます。
特に月末や監査対応などの繁忙期には、財務チームは多くの時間を費やします。そうした場面では、上司からの「ありがとう」や、一時金、追加の休暇、業務後のランチ会など、具体的なかたちでの感謝が大きな意味を持ちます。「努力は見えている」「ちゃんと伝わっている」と感じられることで、社員のエンゲージメントは一層高まります。
さらに、こうした成果を社内全体に共有することも忘れてはいけません。たとえば、財務チームが新しいシステムを導入してコスト削減につなげた場合、その成功は経営会議や社内報などで積極的に発信しましょう。自分たちの仕事が会社全体に貢献していることが明確になれば、誇りやモチベーションも格段に高まります。
財務チームは裏方で支える存在と思われがちですが、その成果を“表舞台”で認めることで、メンバー一人ひとりが「自分たちは欠かせない存在だ」と実感できるのです。
重要なポイント
- モチベーションはお金だけでは動かない
金融業界において競争力のある給与は重要ですが、本当のモチベーションは、「評価されている」「支えられている」「前向きな影響を与えている」と実感できる環境から生まれます。
- 透明性が信頼とパフォーマンスを生む
自分の役割が会社の成長にどうつながっているかが見えると、社員のエンゲージメントは高まり、パフォーマンスも向上します。
- 目的意識が長期的な関与を引き出す
業務の意味や影響を伝えることで、社員は日々のタスクに意義を感じ、プロジェクトへの主体的な関わりが生まれます。財務部門を「戦略的パートナー」として位置づけることも重要です。
- 成長の機会が意欲を育てる
学びの場やメンター制度、キャリアパスの明示など、継続的な成長支援は、離職を防ぎ、やる気を維持するうえで欠かせません。
- ワークライフバランスは“あったほうがいい”ではなく“必要不可欠”
現実的な業務量の設定、休暇の取得推奨、柔軟な働き方の導入は、燃え尽きを防ぎ、健全な働き方を支えます。
- 称賛は日々のエネルギー源
タイムリーかつ具体的な「ありがとう」は、社員のやる気を引き出します。成果が大きくても小さくても、言葉・報酬・全社共有といった多様な形でしっかりと伝えましょう。
金融業界におけるモチベーションの最新傾向を、データに基づいて把握したい方は、REBRサーベイの結果をもとにした「主要5つの統計データ」をまとめたガイドもあわせてご活用ください。
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