- 総合人材サービス ランスタッドTOP
- 法人向けHRブログ workforce Biz
- 物流業界における従業員のモチベーションとは?エンゲージメントの高いチームの姿
物流業界における従業員のモチベーションとは?エンゲージメントの高いチームの姿
物流業界において、従業員のモチベーションは大きな課題となっています。コストの上昇、インフレ、不透明な経済状況といった要因から、多くの企業が人材への投資を控える一方で、生産性の伸び悩みに直面している――そんな矛盾を抱えながら、モチベーションの重要性はこれまで以上に高まっています。
その一方で、モチベーションの大切さは広く認識されているにもかかわらず、それを現場で実現できている企業はまだ限られています。
この記事では、「従業員のモチベーションとは何か?」という基本的な問いから、その重要性、そして企業と従業員の双方が直面する課題までを、物流業界の実情に即して解説していきます。
従業員モチベーションに関する注目データ5選を、コンパクトにまとめた資料もご用意しています。ぜひご活用ください!
物流業界におけるモチベーション維持の難しさ
近年の調査では、従業員のモチベーションが物流業界におけるパフォーマンスを大きく左右する要因であることが改めて示されています。しかし、物流の現場で長期的にモチベーションを保つことは、決して容易ではありません。
たとえば、倉庫内でのピッキング作業やドライバー業務のように、体力を要するうえに単調になりがちな業務が多く、疲労や集中力の低下、燃え尽き症候群(バーンアウト)を招くケースも少なくありません。実際、物流業界の従業員を対象とした最近の調査でも、燃え尽きや仕事への満足度の低下が報告されています。
加えて、業界全体のスピード感、とくに繁忙期におけるプレッシャーの高さも、モチベーション維持を難しくする要因です。日々の業務だけでなく、ストレスや過密なスケジュールのなかでも従業員が意欲を持ち続けられる環境をつくることが求められます。
また、離職率の高さも長年の課題です。先日開催されたCSCMP EDGEでも取り上げられたように、物流業界では長期的な定着が難しく、多くの場合、それがモチベーション不足と直結しています。
こうした課題を乗り越えるには、単に金銭的なインセンティブに頼るのではなく、仕事への満足度を高め、バーンアウトを防ぐための包括的な取り組みが必要です。
内発的動機づけと外発的動機づけのバランスとは
最新のREBRレポートによると、業種や国を問わず、従業員にとって重要なモチベーション要因は、以下の5つに集約されます:
- 経済的報酬
- ワークライフバランス
- 職場の雰囲気
- 業務内容
- 雇用の安定性
ただし、これらの要因の優先度は、業界や文化、地域によって異なります。物流業界では、市場の変動や外部要因に左右されやすいため、従業員がとくに「雇用の安定性」を重視する傾向があります。一方で、たとえば金融業界では、すでに報酬水準が高いことから、「ワークライフバランス」や「職場の文化」、「業務内容」といった非金銭的な要素が重視される傾向にあります。
さらに、いくつかの研究では、物流業界の従業員は金銭的報酬よりも、「成長実感」や「自分の価値を認められること」といった内発的な報酬により深く動機づけられる可能性があることが示されています。もちろん、公正な給与や雇用の安定性といった外発的要素も不可欠ですが、真の意味での仕事満足度やモチベーションは、「自律性」「責任」「承認」「帰属意識」といった内発的な要素によって大きく左右されるのです。
こうした傾向は、心理学者フレデリック・ハーズバーグによる「動機づけ・衛生理論(Two-Factor Theory)」とも一致します。この理論では、仕事満足やエンゲージメントに影響を与える要素は、大きく以下の2つに分類されます:
- 衛生要因(Hygiene factors):給与や職場環境など、不満を減らす要素
- 動機づけ要因(Motivators):成長機会や認知、責任感など、意欲を引き出す要素
ハーズバーグは「不満を取り除くだけでは、モチベーションは生まれない」と説いています。つまり、組織が従業員のエンゲージメントを高めたいなら、基本的な職場環境を整えるだけでなく、やりがいや承認など、積極的に意欲を引き出す要素を提供することが必要なのです。
私の経験でも、倉庫スタッフが現場改善のアイデアを出せる仕組みをつくったり、トラックドライバーが自分でルートを調整できるようにしたりすることで、信頼関係が生まれ、エンゲージメントが高まる場面を何度も見てきました。同じように、チームの一体感を強めることで、業務への主体性や前向きな姿勢が生まれることもあります。
最新のワークモニター調査もこの傾向を裏付けています。調査では、8割以上の回答者が「職場でのつながりや一体感はパフォーマンス向上に直結する」と答えており、物流業界でもチームワークと帰属意識が職場のモチベーションに直結することが明らかになりました。
また、「今月の社員」のように努力を認める取り組みも、一時的な金銭的報酬よりも長期的な効果をもたらすことがあります。
従業員モチベーションに関する注目データ5選を、コンパクトにまとめた資料もご用意しています。ぜひご活用ください!
モチベーションにも影響する、現実の市場環境
REBR調査によると、給与はいまも世界的に見て最も重要なモチベーション要因であり、次いでワークライフバランスが挙げられています。一方で、マズローの「欲求階層説」は、業界ごとの違いを読み解く上で今なお有効な視点を提供してくれます。
物流業界では、給与や雇用の安定性といった基本的な「衛生要因」が、業界全体にかかるプレッシャーの高まりとともに、より重要になってきています。これに対して、金融業界のようにこうした基本的ニーズがすでに満たされている分野では、知的・感情的な充足感といったより高次のニーズが重視される傾向があります。
最終的に、従業員のモチベーションは、マズローの理論に基づく人間の欲求と、労働市場の現実という2つの軸から形成されるものです。企業がキャリア成長や自己実現といった高次のモチベーション要因をどの程度提供できるかは、市場環境によって左右されるのが実情です。
本質的には、従業員にとっての価値(EVP:Employee Value Proposition)と、企業が提供できる価値(Employer Value Proposition)が一致しているとき、モチベーションの高い組織づくりが可能になります。しかしながら、労働市場の現実がそのバランスを崩してしまうことも少なくありません。
モチベーションの高い物流現場に見られる4つ特徴
では、モチベーションの高い物流チームとはどのような姿なのでしょうか。私たちRandstadでは、長年にわたりこの業界で一貫して見られる4つの特徴を明らかにしています。
1. 生産性と業務品質が高い
予定どおりに正確に作業を完了できることはもちろん、従業員自身が課題を見つけて改善策を講じる姿勢が見られます。たとえば、問題が起こる前に在庫を整理するなど、先回りした対応ができるのもその一例です。
2. 欠勤や離職が少ない
業務の厳しさがある中でも、安定して出勤し続ける従業員が多く、企業としても高い定着率を実現しています。繁忙期が過ぎたあとも継続して働くスタッフが多いことは、仕事への満足度と信頼関係のあらわれです。
3. 前向きな職場文化が根づいている
倉庫内でもドライバーの間でも、チームの連帯感が強く、課題や改善点についてオープンに話し合える環境が整っています。マネジメント層もフィードバックを積極的に受け入れる姿勢を持っており、従業員のエンゲージメントと前向きな雰囲気が自然に生まれています。
4. 安全性と効率への強い意識
安全ルールを守るだけでなく、業務効率を高めるための工夫を日々模索しているのも、モチベーションが高い従業員の特徴です。会社を「自分ごと」として捉え、まるで自分のビジネスであるかのように責任感を持って働く姿勢が、企業の長期的な成長につながっています。
一方で、モチベーションが低い場合には、欠勤の増加、生産性の低下、そして離職率の上昇といった兆候が見られるようになります。
物流業界における従業員のモチベーションの重要性
前述のモチベーションの高いチームに見られる4つの特徴は、従業員の仕事への満足度を高めるだけでなく、企業にもビジネス上のメリットをもたらします。従業員のエンゲージメントが向上すれば、企業は生産性の向上や、時間通りの配送による顧客サービスの向上といった効果を実感できるでしょう。加えて、モチベーションの高いチームは、サプライチェーンの混乱を乗り越え、プレッシャーの中でも高いパフォーマンスを維持する能力に優れていると考えられます。
従業員のモチベーション向上の最初のステップは、組織の現在の状態を理解することです。生産性の低下や従業員の離職率の増加など、従業員のモチベーション低下を示す兆候に気づいた場合は、速やかに対策を講じる必要があります。記事「物流業界の従業員のエンゲージメントとモチベーションを維持するための重要な要素」では、この問題に対処し、モチベーションを高めるための効果的な方法について解説しています。
まとめ
物流業界において、従業員のモチベーションは企業の成功を左右する重要な鍵となります。コスト上昇や経済の不透明感が続く中、企業は生産性の維持に苦慮していますが、従業員の高いモチベーションはこうした困難を乗り越える上で欠かせない要素です。
物流業界では肉体的な負担が大きく、反復作業が多いという業務の特性から、他業界とは異なるモチベーションに関する課題を抱えています。従業員は疲労、エンゲージメントの低下、燃え尽き症候群に陥りやすく、長期的にモチベーションを維持しにくいという問題があります。
モチベーションを高める方法は、必ずしも金銭的なものとは限りません。給与も重要ですが、自分の裁量で仕事を進められること、貢献が認められること、組織に受け入れられていると感じられることといった内発的な要因もポジティブな影響を与えます。
市場の状況によって従業員のモチベーションが左右されることもあります。物流業界では雇用の安定や経済的な安定が重視される傾向が強い一方、他の業界ではワークライフバランスやキャリアアップがより重要な要素となる傾向があります。
まずは、現在の従業員のモチベーションを把握することが重要です。そして、離職率の上昇や生産性の低下といった兆候が見られる場合は、適切に対処することで、従業員のエンゲージメントが高く困難な状況にも動じないチームを構築することができます。
物流業界における従業員モチベーションに関するデータを確認したい方は、最新のREBR調査から得た5つのポイントをまとめた資料をぜひご覧ください。この資料では、モチベーションに影響を与える主な要因と、エンゲージメントを高めるためのポイント、逆にモチベーション低下の原因について解説しています。
従業員モチベーションに関する注目データ5選を、コンパクトにまとめた資料もご用意しています。ぜひご活用ください!