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【イベントレポート】自分らしさを強みに~パラレルキャリアで広がる未来
少子高齢化や終身雇用の揺らぎなど、私たちを取り巻く労働環境は目まぐるしく変化しています。男性・女性を問わず「自分に合った働き方」を模索する方が増えるなかで、企業や組織に所属しながらも別の軸を持つ「パラレルキャリア」が注目を集めています。
本ウェビナーでは、国際女性デーを機に複数のキャリアを同時に育てる働き方について、社内外で活躍するゲストをお招きし、その魅力やポイントを掘り下げました。
自分らしさを強みに人生の選択肢を広げる方法や、パラレルキャリアの実践者による具体的な事例、登壇者のリアルな声を交え、これからのキャリア形成を考えるヒントをお届けします。
モデレーター・登壇者の紹介 モデレーター■ 栗原 民子さん・江 承恩さんランスタッド株式会社/ジェンダーERGメンバー
3月8日の国際女性デーにあわせ、社内外でジェンダー平等に関する啓蒙活動やイベント企画を推進。今回のウェビナーでは進行・ファシリテーションを担当。国際女性デーの起源や「Accelerate Action」といった2025年のテーマ・背景を紹介。
登壇者■ 慶野 英里名(けいの えりな) さんパラレルキャリア研究所 代表/一般社団法人クロスオーバーキャリア 理事長出版社で正社員(昨年出産し現在は育休中)として働く一方、副業フリーランスとしてイベント事業やコンテンツ事業を展開するパラレルキャリアの実践者。これまで企業や学校、自治体などで多数の研修を手がけ、日本におけるパラレルキャリアの普及に尽力している。 ■ 年見 貴子(としみ たかこ) さんランスタッド株式会社 オペレーショナルタレントソリューション事業本部西日本本部 本部長同業他社での経験を経て、2005年にコンサルタントとして入社。宮崎支店長、九州エリアマネージャー、九州中四国エリアマネージャーなどを歴任し、2024年4月より現職を務める。プライベートでは高校生のお子さんがマネージャーを務める男子バレーボール部の保護者会で副会長を担当し、若者支援に新たなやりがいを感じている。 |
パラレルキャリアとは?
ウェビナー冒頭では、経営学者ピーター・ドラッカーが提唱した「パラレルキャリア」の概念が取り上げられました。これは、企業などの組織に所属しながら、同時に第2のキャリアを築くという考え方で、リスク分散だけでなく新たなやりがいを見いだす手段としても注目されています。
慶野さん:「パラレルキャリアは企業で正社員をしながら副業をするイメージだけではありません。有償・無償にかかわらず自分らしさを活かせる活動を並行して行うことで、社会へ多角的に関われるようになります。」
かつては終身雇用が当たり前とされ、パラレルキャリアへの注目度は高くありませんでした。しかしコロナ禍以降、働き方が変わり、企業の寿命が人の寿命に追いつかない時代になりつつあるなかで、リスクヘッジや自己成長の手段として再注目されていると考えられます。
無形資産を増やすメリット
パラレルキャリアを通じて得られる大きなメリットには、無形資産の蓄積が挙げられました。無形資産とは、金銭や不動産などの有形資産とは異なる社会関係資本(人脈・ネットワーク・信頼関係など)と人的資本(スキル・知識・経験など)のことを指します。
慶野さん:「たとえ無償であっても、活動を通じて人脈やスキルを広げておくと本当にやりたいことが見つかったときに動きやすくなります。有償の活動に切り替えたい場合も顧客候補、協業先候補が増えたり、営業しなくても口コミで仕事依頼が来たり。無形資産は株式のように価値が暴落しにくく、形がないから盗まれることもありません。課税もされないし、保管のための倉庫も不要です。マイペースにやりたいことを選んでポートフォリオ形成できるんです。」
例えば、地域のNPOやPTAなどの無償活動を通じて得られたネットワークや経験は将来仕事に直結する可能性があります。こうした視点をもって活動すると、ボランティア=時間の消費ではなく将来の資産を増やす投資に変わるのです。
クロスオーバーキャリアと時間活用術
フルタイムで働きながらパラレルキャリアに取り組むうえで、多くの人が時間が足りないという課題に直面します。
週休2日制だと、つい「オフは2/7だけ」と思い込み、プライベートの時間が少なく感じてしまいがちです。しかし、1週間=168時間という視点で考えてみると、週5日勤務(1日8時間+通勤時間など)にかける時間は実は全体の1/4程度にすぎません。残りの時間をどのように活用し、オン(仕事)とオフ(プライベート)をつなぐかが「クロスオーバーキャリア」を実践するカギとなります。
クロスオーバーキャリアとは、仕事と趣味・家庭などの活動を完全に分けるのではなく、互いに関係性をもたせることで、新たな学びやビジネスチャンスを生み出す考え方です。
例えば、プライベートで得た知識や人脈が本業に活かせたり、本業で培ったスキルを趣味や地域活動に展開できたりと、時間の切り分け方を足し算から掛け算に変えていくイメージです。
仕事以外の活動を余った時間の使い道と捉えるのではなく、1週間=168時間をマクロに見渡したうえで、自分の関心や得意を取り入れる工夫が大切だといえます。
慶野さん:「たとえ10分や30分といった細切れの時間でも、小さなタスクの積み重ねで、結果的に大きな成果や新しいキャリアの種が育つ可能性があります。オンとオフを柔軟につなげることで、時間を最大限に活用できるのがクロスオーバーキャリアの醍醐味です。」
実例に見る「自分らしさ」の活かし方
年見さんは西日本の本部長として多忙な日々を送るかたわら、高校生のお子さんが所属する男子バレーボール部の活動を積極的にサポートし、保護者会の副会長に。部員たちに声掛けをしたり、練習や遠征を支援したりと、多様なクロスオーバーを楽しんでいます。
年見さん:「最初は単に『子どもたちを応援したい』という気持ちでした。しかし、部員たちが将来の進路を相談してくれたり、卒部式を一緒に盛り上げたり・・・このような経験が積み重なって若者の成長を支援することが自分のやりたいことだと気づきました。いずれは寮母さんのように若者を支援する仕事をしてみたいという新しい目標が生まれました。」
慶野さん:「一見『単なる保護者のボランティア』と見える活動が、実は自分の本質的な興味や強みに気づくきっかけになったのですね。こうした『子どもが部活をはじめた』『部活動の保護者会に参加した』という偶然がキャリアの可能性を引き出すのは、キャリア心理学でいうプランド・ハップンスタンス(計画的偶発性)の好例です。
偶発的な出会いや経験をただの運で終わらせず、「ここに私の強みが活かせるかも」と意識的にアンテナを張ることで、新たな道が拓けるケースもあります。
年見さんのように、何気ないできごとや人とのつながりを見逃さず行動してみると、自分でも気づかなかった興味・適性が明確になります。こうやって、新しいキャリアの種がまかれていくのです。」
6W2Hで自分の「好き」を活かす
キャリアを考える際、多くの方が最初に思い浮かべるのは「何をするか(WHAT)」という視点かもしれません。しかし、今回のウェビナーでは、もっと幅広い切り口で自分の好きや、得意を見つける手法として6W2H(WHAT/WHY/WHO/WHEN/WHERE/WHOM/HOW/HOW MUCH)が紹介されました。
例えば「バレーボールが好き」の場合、単純に「バレーボールをプレーするのが好き」だけでなく、なぜ好きなのか(WHY)、誰と一緒に楽しみたいのか(WHO)、いつ・どのタイミングでやりたいのか(WHEN)、どこで取り組みたいのか(WHERE)など、さまざまな問いかけをしてみると新しい視点が見えてきます。
今回のウェビナー登壇者である年見さんの場合、「若者を支えたい」というWHOMの要素から、自分の新たな目標として寮母という選択肢が見えてきました。元々は部活動の保護者会の手伝いがきっかけでしたが、そこに自分ならではの視点と強みを掛け合わせた結果、将来やってみたいことが明確になったのです。
慶野さん:「過去の趣味やボランティア、ちょっとした関わりが、将来大きく花開くかもしれません。何気なく続けていることを一度棚卸しすると、思わぬパラレルキャリアの種が見つかるかもしれません。」
まとめ
今回のウェビナーでは、ドラッカーのパラレルキャリアの概念や、無形資産の重要性、オンとオフを組み合わせるクロスオーバーキャリアなどが紹介されました。
特に印象的だったのは、年見さんが部活動のサポートを通じて寮母という新たな夢を見つけたエピソードです。仕事の延長だけがキャリアではなく、趣味やボランティアなど多角的な活動こそが「自分らしさ」を強みに変えるきっかけになるかもしれません。
パラレルキャリアは特別な人だけが実践できるものではありません。小さな一歩から始めてみてはいかがでしょうか。