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「高需要スキル世界調査2025」が示す、日本の人材戦略とグローバル人材の未来
これから必要な人材が見える!ランスタッド「高需要スキル世界調査2025」
世界が求めるスキル分野がわかるグローバル調査
ランスタッドでは2024年第3四半期に、グローバルな人材市場を多角的に分析する「高需要スキル世界調査」を実施しました。1,000万件以上の求人情報と、1億3,600万件以上の履歴書をスキルレベルで、3億件以上の履歴書をメタデータレベルで6つの側面から集約、分析することで最も需要の高い専門スキルを明らかにしています。
調査対象国は世界24か国、日本語版のレポートも
今回の調査対象は南北アメリカ(アルゼンチン、ブラジル、カナダ、メキシコ、米国)、アジア太平洋(オーストラリア、インド、マレーシア、シンガポール)、ヨーロッパ(ベルギー、チェコ、フランス、ドイツ、ハンガリー、イタリア、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スペイン、スウェーデン、スイス、英国)の24か国となっています。残念ながら日本は直接的な調査対象ではありませんが、世界における人材の需要と供給の動向、競争力の高いスキル分野、さらには先天的能力(ソフトスキル)や学習能力の重要性、報酬トレンドなど、グローバル人材戦略を検討する企業にとって極めて示唆に富む内容となっています。
ホワイトカラーに加え、ブルーカラー、熟練工に関する分析もスタート
同調査ではこれまでホワイトカラー職種のデータに焦点をあててきましたが、今回はブルーカラーや熟練工と呼ばれる職種のベースライン分析も実施されました。 これにより、より幅広い職種における高需要スキルを包括的に把握することが可能になり、多様な産業における人材戦略のヒントが得られるようになっています。
「高需要スキル世界調査2025」グローバル・ハイライト:日本の採用責任者が知るべきこと
ホワイトカラーのスキル分野の需要は約20%減少
ホワイトカラーにおけるスキル分野の需要はグローバル全体で約20%減少しています。特に欧州での減少が顕著で、マーケティング・コンテンツ・広告や監査・コンプライアンスなどの分野で大きな落ち込みが見られます。一部のニッチな技能については景気変動や市場の不確実性が大きく影響していると考えられます。
エンジニアリング・メンテナンスは唯一需要が増加、米国が牽引
興味深いことに、エンジニアリング・メンテナンス分野のスキル需要は唯一目に見えて増加しています。しかしこの大部分は米国市場によって生み出されており、平均して見ると、グローバル市場全体の採用困難度は低下傾向にあります。
AI・オートメーションスキルは供給が伸び、需要が微減
AI・オートメーション分野へのスキル人材供給は24%伸びており、多くの人材がこの職種にシフトしています。しかし、それに伴い人材の平均習熟度は低下しています。需要の微減は主に自動化スキル分野での需要が減ったことよるもので、AIスキルは全求人広告の5%以上、候補者プロフィールの10%近くに登場するなど、引き続き多くの場でAI技術の導入が望まれている状況にあります。
シニアレベル人材の採用困難度は全市場で1.5~2.5倍に
習熟度の高いシニアレベル人材の需給バランスは、前年より緩和されたものの、依然として採用が難しい状況にあります。特にオフショア拠点とされるエリアでは難易度が高いとされています。分野別では、データサイエンスと分析スキル、AI・オートメーションスキルで採用の厳しさが増しています。
コミュニケーションスキルホルダーの採用は最高難易度
自然言語処理(NLP)、予測モデリング、ステークホルダーコミュニケーションといった、高度なコミュニケーション技術に関するスキル人材は世界中で引く手あまたであり、採用の難しさはトップクラスと見られます。これらのスキルは、AIが代替できない人間ならではの強みとして、今後ますます重要性が高まるでしょう。
リモートワーク志向の高まりと追い付かない雇用主の提供
リモートワークを提供する職場はかつてない程増えていますが、欧米市場では完全リモートワークからハイブリッドワーク(リモートワークと出勤を組み合わせた働き方)への移行が目立ちます。また、これまでオフィスで勤務してきた人材もリモートワークを志向するようになっています。これに対して、リモートワークを提供する雇用主の数は追いついておらず、ギャップはさらに拡大しています。
高需要スキルにおけるジェンダーバランスが課題
需要の高いスキル分野、特にSTEM分野関連の職種では、依然として人材が男性に偏る傾向があります。女性人材のみを求める場合、採用の困難さは著しく跳ね上がり、AI・オートメーション分野では450%増、クラウドコンピューティングでは576%増にも達します。こうした課題は一朝一夕に解決するものではなく、人材が限られている市場で、多様性を叶えることの難しさを浮き彫りにしています。
AIスキルを持つ人材は流動性も高い
AIスキルは人材の流動性を34%、求職活動においても転職意向を約50%増加させるという調査結果が出ています。これは、AIスキルが市場価値を高め、新しい機会を積極的に探すきっかけとなっていることを示唆しています。
求職者の半分は転職し、さらに2割が早期再転職の可能性
「積極的に仕事を探している」と回答した人材の約半分は、実際に転職しているという調査結果が出ています。また、この傾向が今後も続けば、さらに2割近くが1年以内に再び転職すると予想されており、人材の定着が大きな課題となっています。
ランキングで見る「高需要スキル世界調査2025」:日本の採用責任者が注目すべきデータ
最も競争力のあるスキル分野の採用困難度は全体とシニアレベルで差が
スキル分野別の採用困難度について、求人倍率全体では「監査・コンプライアンス」が2年連続で最も高く、その競争力の高さは経済成長によるものと見られています。続いて「カスタマーサービス」、「AI・オートメーション」が採用困難度の高いスキル分野となっています。その一方で、シニアレベルに限定してみると、採用困難度が高いのは「AI・オートメーション」がトップ、次いで「カスタマーサービス」、「エンジニアリング・メンテナンス」と、順位も、一部の顔ぶれも入れ替わります。特に専門性の高いAI・オートメーション分野でシニア人材の獲得競争が激しいことは、今後のDX推進において大きな課題となるでしょう。
最も競争力のある固有スキルは「倫理的判断力」、「共感力」、「継続的学習能力」
現代の労働市場においては、キャリアで身につけた技術スキルだけでなく、周囲の人々との関係、信頼、信用を築く鍵となる人間ならではの「固有スキル(ソフトスキル)」の重要性が増しています。
競争力の高い固有スキルとしては、「倫理的判断力」(求人倍率10.4%)、「共感力」(求人倍率7.9%)、「継続的学習能力」(求人倍率7.3%)がトップ3を占めています。逆に需要が減少しているのは、「リーダーシップとモチベーション」、「創造性」などとなっています。
これは、複雑な現代社会で新たな価値を創造し、チームを牽引するためには、こうしたAIにはできない人間的資質が不可欠であることを示唆しており、リーダーシップに必要なスキルをより具体的に細分化し要望するスキルとして提示するようになったともいえます。また、変化のスピードが加速化している現代において継続的に学び、成長できる人材にニーズが集まる様子も見えます。
最もスキル人材の採用困難度が高いエリアは「マレーシア」、「シンガポール」、「米国」
スキル人材の採用が難しいエリアとしては、全体・シニアレベルともに「マレーシア」(全体4.2%、シニア8.2%)、「シンガポール」(全体3.9%、シニア6.3%)、「米国」(全体3.6%、シニア5.7%)がトップ3を占めています。中でも「マレーシア」は需要が大幅に急増している市場のひとつで、供給が追いついていない様相が見られます。その一方で、ほとんどのエリアでは昨年より採用困難度が下がっており、グローバル全体での獲得難易度は緩和傾向にあります。
最も平均報酬の高いスキル分野は「データ分析」、「クラウド」、「ソフトウェアプロジェクトマネジメント」
平均報酬の高いスキル分野は、「データサイエンス&アナリティクス」、「クラウドコンピューティング」、「ソフトウェアプロジェクトマネジメントとリーダーシップ」がトップ3を占めました。需要の高いスキルを持つ人材の賃金は堅調に推移しており、特にSTEM分野(科学、技術、工学、数学)ではパンデミック前よりも高水準を維持しています。
企業によっては、一部の重要なスキルでわずかな賃金下落が見られるかもしれませんが、これは一時的なものであり、採用活動が活発化すれば人件費は確実に上昇すると見込まれています。
したがって、企業は将来的な人員計画を立てる際に、この賃金上昇の傾向を考慮に入れる必要があります。
日本企業もグローバルを見据えて情報収集と人材戦略を
今回の「高需要スキル世界調査2025」では、日本は調査対象に含まれていません。しかし、高度な専門スキルを持つ人材ほどグローバル規模で転職活動をする可能性が考えられます。また、リモートワークの需給が釣り合わない状況などは日本も同様の傾向にあり、「高需要スキル世界調査2025」は日本企業が将来を見据えた人材戦略を立案しグローバル競争を勝ち抜くための重要な羅針盤となりえます。
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