『Amazonの採用マーケティング×エンプロイヤーブランディング 試行錯誤とこれから』 レポート②エンプロイヤーブランド向上のために

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採用活動の効果を最大限に発揮するために欠かせないエンプロイヤーブランディング。前回の「レポート①採用活動とエンプロイヤーブランドの密接な関係」では、その重要性と実際の取り組みをご紹介いただきました。

アマゾンジャパン合同会社 人事部プログラムマネージャー 森本氏との公開ディスカッション後半となる今回の記事では、エンプロイヤーブランディングの「今後の取り組み」についてレポートします。

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ゲストスピーカー
森本 麗 氏
アマゾンジャパン合同会社 人事統括本部 人事部 リクルーティングマーケティング プログラムマネージャー

人材サービス企業を経て、2014年に中途採用担当としてアマゾンジャパン合同会社に入社。その後プログラムマネージャーに職種変更し、現在は採用マーケティングおよびエンプロイヤーブランディングを担当。

 

ファシリテーター
西野 雄介
ランスタッド株式会社 人事本部 タレントアトラクション部 部長

人材会社を経てシンガポールへ移住し、エンワールドのシンガポール法人にて経営人材ヘッドハンティングや同事業の経営を経験。帰国後は事業会社の人事・採用責任者等を経験し現職。Forbes JAPANのオフィシャルコラムニストとして、キャリアや組織についても発信。

 

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エンプロイヤーブランディングの成果をどう可視化するのか

西野:エンプロイヤーブランディングのテーマを考えるにあたって一番難しいところだと思いますが、「それをやった結果どうなったのか」というのが見えづらいじゃないですか。
もしかしたら「応募してくれる人が10年後に10%上がった『かも』しれない」ということ。これはどういう風に会社の中では理解されているのでしょう?

 

森本:これは難しい点ですよね。採用チームが持つゴールや採用チームに対して期待されていることは、数字で表しやすいものが多い、かつ、ある程度短期で結果が出るものが多い中で、エンプロイヤーブランディングというのは明確な結果が見えづらいし、期間としてもかなり長期間で見ていかなければいけない。しかも数年かけて数字がちょっと上がったよねとか、そのくらいの変化になってしまうケースがほとんどかと思います。

すごく難しいし見えづらい領域ではありますが、その中でもたとえば「3年後にここの数字が上がれば、それはここまでやってきた取り組みが成功だったと定義付けよう」というように何かしらの指標を持って、さらにそれをステークホルダーとちゃんと握っておくことが重要だと思います。
そうしないと、やりっ放しになってしまい、「お金もかけたけど結局何だったの?」ということになってしまうと思います。

 

西野:時間軸の共通理解はすごく大切ですよね。
「これは3ヶ月後のためにやった訳ではない」とか「6ヶ月後にこの人が採用できたからあれは良かったよね」ということではないのですが、施策が直接的に影響したのではと思われるようなタイミングで実際に採用ができることもあるんですよね。
やった施策が採用に影響したであろうことはそれはそれで嬉しいものの、目的は違ったということを一貫した共通認識として持っておくのが大事ですよね。
 
そういう難しさもある中で、前任の方がエンプロイヤーブランディングを中心にリクルーティングマーケティングをサブ的にやっていた活動から、リクルーティングマーケティング中心でエンプロイヤーブランディングをサブとする活動に役割の比重が変わっていったということなのでしょうか。

 

森本:はい、エンプロイヤーブランディングはタレントアクイジションチーム(以下、採用チーム)だけではコントロールしづらいというのも大きかったですが、今お話しいただいた指標の持ち方の違いの点も理由の一つだと思っています。

採用の部署は数字や結果が明確に出やすく、ゴールの持ち方にしてもステークホルダーからの期待値としても、そのような短期でわかりやすく結果が出るものを求められがちです。その中に、エンプロイヤーブランディングがメイン担当という人を置くと、結果を測る時間軸も測り方も違うので、採用チームが持っている他のゴールのような指標の持ち方ができません。同じような考え方で結果を評価できないロールが一人ポツンと入ることになります。

こういった採用という部署の特性的にエンプロイヤーブランディングをメインとするとロールの合理性を示しづらいところもあり、結果を数字で測りやすいリクルーティングマーケティングをメインにする方に、今は一旦落ち着いています。今後また考えが変わっていくことは十分にあり得るとは思いますが。
 
 
西野:「どれだけのポジションを埋められたか」「どれくらい早く埋められたか」「どれだけの応募数を集められたか」。採用チームというのはそういうわかりやすい指標のもとで動きますからね。

そういう意味ではエンプロイヤーブランディングはますます難しい。そして今「期待値」という話もありましたけれど、会社としても大切さは理解していても、「どういう風にどこまで投資していけば良いのか」というのが難しい。特に大企業ではそういう合理性を作っていくのが難しいということなんですよね。

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エンプロイヤーブランディングのために何をすべきか

西野:リクルーティングマーケティングとエンプロイヤーブランディングの両方を担当する役割に森本さんは就かれ、私はランスタッドのエンプロイヤーブランディングをどうしようかと日々考えているわけですが……どうしましょう。これから何をしていきましょうか。

 

森本:今すぐに思い浮かぶこととしては2〜3あるのですが、一つ目はすごくシンプルな話で、もっともっと情報を発信する機会を増やしていく必要があると思っています。私が入社した7年前に比べると、今はずいぶん緩和されてきてると思うのですが、Amazonはあまり情報を公開しない、すごく秘密主義のイメージがなかったですか?

 

西野:ありましたね、物流倉庫とかもどこにあるのかわからないような。

 

森本:今は色々なところで情報をシェアするようになってきていると思うのですが、それでも直近で入社した社員に「採用のプロセスで困ったことはなかったか」「選考中に知りたかった情報はなかったか」とアンケートを取ると、やっぱり「どこに行ってもあまり情報が取れなかった」という声があがるんですね。それは私自身も感じたところでもあるので、もっともっと情報発信をしていく、というのは一つやっていくべきことだと思っています。

 

西野:アンケートの結果「あまり分からなかった」というのはランスタッドもすごくあるんです。
これは外資系あるあるかもしれないですが、グローバルのガイドラインの中でブランディングするとか、グローバルで持たれているイメージと国内のイメージの違いなど、色々なものをマッチングさせていかなければいけない。そういったところで難しさがあったりしますか。

 

森本:それはありますね。たとえばUSのAmazonに関する記事や書き込みを見て、それがネガティブなものだったとすると、それがその方の中での全Amazonのイメージになってしまう。日本は環境が違っているのに、最初についたイメージや広く発信された情報によるイメージが先行してしまうというのはよくあるのでそこも課題ですね。
 


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コロナ対応や意思決定の速さもブランドを作る

西野:コロナ禍になって、働きやすさなど、会社に求めるものや意識が変わってきている気がします。たとえば在宅で働けるか、きちんとコロナ対応について情報発信しているか、どれくらい対応しているのか、どこまでケアしてるのか、などおそらくいろいろいろいろあると思うのですが。
ランスタッドエンプロイヤーブランドリサーチの指標にも「コロナへの対応」も入っているのですが、これに関する発信はこれからも課題だと思っています。

アマゾンジャパンではコロナ対応はどのように取り組んで、社員の方とコミュニケーションされていますか?

 

森本:会社としての対応はすごくしっかりしている印象です。
たとえば、基本的に在宅勤務ができる人は在宅へという方針に切り替える決断の速さ。在宅勤務への切り替えがアナウンスされた時点では、自宅にオフィスと遜色ないレベルで仕事ができる設備がなかった人も多かったのですが、会社が補助をするので必要なものは揃えて良いという制度もすぐに周知されました。
もし出社する時はこういうところに気をつけるといったガイダンスも細かく、クリアに作られており、どこで最新情報が見られるかもとてもわかりやすかったですね。対策本部のような部隊からタイムリー、かつ明確に指示が出ていたので、会社の対応に対する社員としての不安はなかったですね。

 

西野:どこの会社も対策はやっていると思うんです。しかしこれは「いかに速く」「いかに細かく」できたかが、社員の安心感につながると思います。
そういうのもじわじわ来るんですよね。これはすごく会社の良いところだと思うし、今ならどこの会社もやってますよという話になるけれど、何かあった時に意思決定が速いというのは、それ自体がブランドを作ると思うんです。

 

森本:おっしゃる通りですね。Amazonの意思決定の速さは社員として働いていて日々感じます。内容によっては全社的に一括で出す指示ももちろんありますが、「ここまでのガイドラインは全社的なものとして決めるけど、ここから先はそれぞれのビジネスリーダーの判断に任せる」という場合も多い印象です。これによって意思決定のスピードが上がっているのだろうなとも思いますし、社員の判断を信頼しているということも感じます。


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社員は重要なブランドアンバサダー

森本:エンプロイヤーブランディングでこれからやっていきたいことの二つ目ですが、アマゾンジャパンは社員数がそれなりにいるので、社員を巻き込んでいく施策は絶対に必要だと思っています。それに対する具体的なメカニズムはまだ考えられていないのですが。社員からの発信はエンプロイヤーブランディングにおいて何よりも影響力があるんですよね。

 

西野:リアルなエクスペリエンスですもんね。

 

森本:私のような立場の社員がいくらオフィシャルに会社の良い面をアピールしようと発信したとしても、社員から聞くリアルな話と比較したら全く響かないと思います。

インターネット上でオフィシャルに発信される情報よりも、個人的な飲み会やSNS上などで自分の友人のAmazon社員から聞く、会社に対するポジティブ、またはネガティブな発言の方が受け手にとってよっぽどインパクトがあるはずです。両方から情報を受け取ったら、絶対に後者の方がより信憑性が高いというイメージを持つと思うので、そう考えると社員は重要なブランドアンバサダーだと思います。

彼らが自然に会社のことを発信したくなるような“メカニズム”をまず作りたいと思います。かつ、発信してもらう内容がポジティブじゃないと意味がない。そうなると社員がアマゾンジャパンで働いていてハッピーじゃないといけないということになります。

働いている人を幸せにするというのはまた別の部署の管轄になってきますが、そことの連携を図って、社員をまずハッピーにし、そこから自然に発信されていく。それはエンプロイヤーブランディングをスケールさせていく上ですごく重要だと思うので、やっていきたいと思っています。

 

西野:今“メカニズム”とおっしゃいましたが、「やってください」といってやってもらうものではないんですよね。自然に「発信したい」と思ってもらうものであるべき。今このアマゾンジャパンのカフェテリアに来て、「おしゃれだな〜」っていうこの感覚を「共有したいな」と、自然に思ってもらいたい。


これは本当に難しいですよね。すごく安易に考えると、「『みんな発信してね』というためのガイドラインを作って……」となりかねない。そうじゃなくて、それをみんなが“やりたくなるメカニズム”をどうやって作るか、というところですよね。
先ほどの「ホームデスクキャンペーン」などは楽しく和気あいあいとできそう。そういうことですよね。

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エンプロイヤーブランドを採用につなげるために

森本:三つ目もとてもシンプルな話で画期的なアイデアではないですが、選考の記憶がまだ新しい入社したての社員を対象にアンケートを取った際に、アマゾンジャパンは選考で「見極める」という方に重きを置いていて、もっと会社を「売り込む」「セリングする」方に力を注いでもいいのではないかというコメントも結構あったんです。それはその通りだなと思いました。
 

応募しているということはすでにAmazonに対して興味を持ってくださっているということだと思いますが、その後さらに、もっともっと「ここに入りたい」と思ってもらえるように、選考過程でも魅力づけをしていくことも重要だなと思います。
 
もちろんこれは選考前、つまり応募いただく前段階での取り組みも必要で、まだ「採用」というのをそんなに色濃く匂わせないカジュアルな会で、実際にアマゾンジャパンの社員に会ってもらい、そこで働き方や雰囲気などを知ってもらう機会をもう少し作れると、それがセリングの機会になるのではないかと思っています。もっとカジュアルにアマゾニアン(アマゾン社員)と接触できる機会を多く作っていきたいですね。

 

西野:応募はクリックすれば簡単にできますからね。そこで持っている興味がどれほどのものかは人によってバラバラだと思います。
「本物」「偽物」ではないですが、本気で思っている人もいるかもしれないし気軽に応募している人もいるかもしれない。そこから本当のアマゾンジャパンを見せていく・本当のランスタッドを見せていくという、この部分が一番難しいところですよね。

本日はありがとうございました。これからやっていきたいことは、今後もブレストをしていきたいですね。

 

森本:そうですね。まだまだ手探りな状態なので、ぜひ他の企業様ともアイデアを共有したいです。

 

西野:ご覧いただいている皆さんにも参加いただいて、それぞれのプラクティスを一緒に勉強させていただければと思います。

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