派遣法の指針改正、派遣先が主体的に苦情処理の対応を!

 

目次

 

2021年に労働者派遣法の6つの省令・指針が改正されました。大半は派遣元の義務を追加したものですが、1つだけ派遣先の責務を格上げした項目があります。新型コロナウイルス感染拡大の影響で改正内容の周知が十分に行き届いていなかったこともあり、施行から1年が経過する2022年から、厚生労働省は周知と指導監督を徹底する方針です。改正内容の解説と派遣先が留意すべきポイントをお伝えします。

1、施行状況の点検作業で浮上した改正6省令

改正6省令・指針を整理すると、21年1月施行の改正が

  1. 雇い入れ時の説明の義務付け
  2. 派遣契約に係る事項の電磁的記録による作成
  3. 派遣先における派遣社員からの苦情処理
  4. 日雇い派遣の直前キャンセル後の派遣元の対応
――の4つ。
同年4月施行分として、
  1. 雇用安定措置に係る派遣社員の希望の聴取
  2. マージン率のインターネットでの情報提供

――の2つがあります。

 この6省令・指針は、どうして改正されたのでしょうか。厚生労働省は日雇い派遣の原則禁止などを盛り込んだ派遣法2012年改正と、「雇用安定措置」などを義務化した2015年改正の総点検(見直し作業)を進めていました。この中で、施行状況の調査や派遣先、派遣元、派遣社員への大規模なアンケートも実施し、課題や問題点を浮き彫りにしながら、その対応策を検討していました。

点検作業は、新型コロナの襲来で完結せず、2020年7月に「中間整理」として着手すべき見直し項目を取りまとめました。それが、上記の6省令・指針です。ちなみに、残された課題の見直しはコロナ沈静化後に状況をみて再開となります。

2、「誠実かつ主体的に対応」を派遣先指針に

派遣先の責務が格上げされた「派遣先における派遣社員からの苦情処理」に絞って詳しく解説します。まず、指針改正の理由は、アンケート調査で「派遣先が苦情を聞いてくれない」との指摘が多く散見されたためです。

改正前においても、派遣先指針には「苦情処理の対応」が盛り込まれていましたが、第一義には「雇用主の派遣元に責任がある」との認識が一般的でした。このため、苦情があがった際に、派遣先が内容や事態を把握せず派遣元に対応を委ねるといったケースもありました。今回の改正では、派遣先を「派遣社員を雇用する事業主とみなす」と位置づけ、指針の中に「誠実かつ主体的に対応すること」との文言を追加しました。

これに伴い、派遣社員を受け入れている企業は、社内に苦情処理の適切な窓口を設定し、対応した内容を派遣元に報告・通知しなければなりません。

3、派遣先管理台帳への記録を忘れずに

苦情内容の例としては、労働基準法や職業安定法など労働関係法令上、派遣先に使用者責任があると定められている内容です。例えば、派遣社員の労働時間や休憩、休日などに加え、育児・介護休暇などもあてはまります。また、職場の問題としては、2020年6月からパワーハラスメント(パワハラ)の防止を企業に義務付ける「パワハラ防止法」が施行されており、こうした観点を含めて派遣先が講じておくべき措置について、派遣元と一緒に見直す機会を設けることをお勧めします。

ポイントとしては、

  1. 苦情が生じない対策が取られているか
  2. 苦情を申し出た派遣社員に迅速に対応しているか
  3. 適切な解決策を講じたか

――の3点があげられます。そして、時系列で経過を記録しておくことも大切です。

今回、派遣先の責務として指針に明文化されたことで、行政機関の指導監督の対象となったことが重要です。労働基準監督署の監査などがあった時には、台帳のチェックが行われますので、受け付けた苦情の内容や対応方法などについて派遣先が「派遣先管理台帳」に記録することが肝心です。

4、派遣先の苦情対応・7つのチェックボックス

  • 派遣先指針が改正されたことを関係部署・担当者で共有している
  • 苦情処理体制が派遣社員にあらかじめ分かるよう、派遣契約に明示している
  • 派遣先責任者が定期的に派遣社員の就業場所を巡回している
  • 苦情処理の適切な窓口を設定している
  • 現場の指揮命令者が苦情処理の担当者を可能な限り兼務しないよう配置できているか
  • 対応した苦情内容を派遣元に報告・通知する体制ができている
  • 対応した内容を「派遣先管理台帳」に記録している

 

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