有識者会議で「裁量労働制」議論へ 労使の主張は平行線、労働条件分科会

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制度改革の議論を26日からスタート

 労働政策審議会の労働条件分科会は7月19日、裁量労働制などをテーマに議論しました。事務局の厚生労働省が6月25日に公表した「裁量労働制実態調査」結果について詳細に報告。これを踏まえ、学識経験者7人で構成する「これからの労働時間制度に関する検討会」を設置し、調査結果を踏まえて制度改革を議論します。初会合は26日。同調査は裁量労働制を実施している企業と、制度の適用を受けている専門型、企画型の労働者や適用を受けていない労働者の双方に調査。適用を受けている労働者の労働時間は長いものの、満足度は高いという結果が出ています。

 これについて、経営者側委員からは「労働生産性の向上を図る点で、裁量労働制は有力な働き方であり、企画型分野の対象職種を拡大すべきだ」との意見が出た一方で、労働者側委員からは「本人以外に上司の裁量もかなり入っており、長時間労働につながりやすい」との慎重な意見も出ました。
 ただ、両者とも「適用者に対する健康確保措置が必要」という点では一致しています。
 検討会では、こうした労使の意見を踏まえて適用拡大の是非を議論しますが、長時間労働の是正と労働生産性の向上という大テーマが背景に控えているだけに、議論は紆余曲折が予想されます。
 また、同分科会では、キャッシュレス化の促進や多様な賃金支払いのニーズに対応する「賃金デジタル払い」のあり方について1月から議論していますが、反対を明確にする連合の姿勢は固く、年内中に導入実現に至るかは微妙な情勢となってきました。

「失業率2.6ポイント程度抑制」 雇調金効果を強調

 厚生労働省は7月16日、2021年版労働経済の分析(労働白書)を発表しました。それによると、新型コロナウイルスの感染の長期化によって宿泊・飲食サービス業などの対人サービスを中心とした産業の雇用者数が女性を中心に減少したものの、雇用調整助成金などの政策の下支え効果もあって20年度前半の完全失業率を2.6ポイント程度抑制したと推計される、としています。
 推計では、雇調金の受給対象者を潜在的失業者と仮定し、雇調金による抑制効果を2.1ポイント、雇調金や緊急雇用安定助成金などを含めると2.6ポイントの抑制効果があったとしました。これがなかった場合は5.5%程度とリーマン・ショック当時の水準まで悪化するとしています。ただ、「相当の幅をもってみる必要がある」と注記しており、「成長分野への労働移動を遅らせる、雇用保険財政のひっ迫といった影響ももたらしている」と負の側面にも触れています。
 コロナ下の完全失業率は2%前半から20年後半には3%台に急上昇しましたが、今年になって3%台を下回り、完全失業者数は200万人台を上下する水準で推移しています。雇調金の支出は7月時点で3兆9000億円を超えており、感染者数が減らないことから、当初の打ち切り予定期限が伸び伸びとなっています。

一律28円の大幅引き上げ 審議会が答申

 政府の中央最低賃金審議会は7月16日、2021年度の最低賃金(最賃)について、同14日に目安小委員会が示した全国一律で28円(3.1%)を目安に引き上げるよう田村憲久厚生労働相に答申しました。
 この日の答申では、経営側からの要求で異例の採決方式となり、4人が反対して多数決の決定となりました。採決となったのは目安方式が採用された直後の1979年度以来で、それ以降は反対論を"付記"することはあっても、公労使の全会一致方式が続いていました。コロナ禍で経営が苦しい中小企業の反発がそれだけ強いことをうかがわせる一幕となりましたが、それが地方審議会の議論にどこまで影響を及ぼすか注目されます。


取材・文責
(株)アドバンスニュース

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