最低賃金、コロナ下2年目の協議へ 引き上げか、再び実質“凍結”か

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同一同一など目白押し、雇用への影響懸念も

 今年の最低賃金(最賃)はどんな決着をみるのか。昨年に続き、2年連続のコロナ下での最賃議論は、すでに労使双方から“基本方針”が出ています。6月下旬に開始される政府の中央最低賃金審議会での方向を示唆しており、昨年以上の難航が必至です。最賃は毎年、公労使が参画する同審議会の「目安に関する小委員会」で非公開審議され、約1カ月後に賃上げ額の「目安」を提示。これを受けて都道府県ごとの委員会で審議・決定し、10月ごろから順次実施となります。賃金水準はA~Dランクに分かれ、企業は各ランクの最賃を守らなければなりません。

 日本の最賃は先進国の中で低水準にあったことから、政府は安倍前政権時代から「最賃1000円の早期達成」を目標に掲げ、毎年3%程度の上昇を労使に要請した結果、最賃は上昇し、特に16年度から4年連続で3%台の上昇を続けました。
 しかし、昨年度は新型コロナウイルスの感染拡大で企業活動が大きく制限され、先行き不透明な状況になったことから、小委員会は「目安を示すのは困難。現行水準の維持が適当」と事実上のギブアップ宣言を余儀なくされました。各都道府県で議論した結果、平均1円(0.1%増)アップの902円となり、最賃の上昇は事実上ストップしました。
 さて、今年はどうなるのか。すでに労使の攻防は始まっています。菅首相は5月14日の経済財政諮問会議で「コロナ禍で賃金格差が拡大している」として、「格差是正のためにも、最賃平均1000円の早期実現」という従来の政府目標の実現を強調しました。これに先立ち、日本商工会議所など中小企業3団体は4月15日、コロナ禍による経営環境の悪化を理由に「現行水準の維持」を求める要望書を発表。6月4日には三村明夫会頭ら3代表が菅首相に趣旨説明し、「このタイミングでの引き上げは、政府による中小企業・小規模事業者の切り捨てのメッセージと受け止められかねない」と訴えました。
 これに対して、連合(神津里季生会長)も6月1日、神津会長から田村憲久厚労相に対して「労働の対価としてふさわしいナショナルミニマム(国が保障する最低水準)への改善を目指した目安額の決定に強い指導を」と要請。要請内容は、昨年は「改定目安の設定」を強く求めたにもかかわらず、小委員会が経営側の抵抗で目安を打ち出せなかった点を強く意識した言い方になっています。
 この1年、コロナ対応で企業活動が抑制されてきたことから、日本経済は停滞が続いています。実質GDP(国内総生産)は昨年4~6月期が初の緊急事態宣言で前期比8.3%減と大きく落ち込みました。その後は製造業を中心に内外景気の回復がみられ、2四半期連続でプラスを続けましたが、今年1~3月期は2度目の緊急事態宣言によって同1.3%減と再びマイナス転落しています。
 もう少し先の動きまで含めて見てみると、中小企業にとって21年度は大企業に1年遅れて同一労働同一賃金が適用されたうえ、来年10月からはパート・アルバイト社員の社会保険の適用が拡大されるなど、人件費コストの増加要因が目白押しです。不安材料が拭えない中で、今年の最賃協議がスタートします。


取材・文責
(株)アドバンスニュース

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