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難病患者らの「法定雇用率算入」 障がい者雇用にカウントされない理由
「短時間勤務の扱い」とともに労政審で議論難航
企業や公的機関に雇用されている障がい者は毎年増えています。2020年は企業による雇用者が約57万8000人、実雇用率は2.15%といずれも過去最高となりました=グラフ。一見する限り、障がい者雇用は順調に伸びていますが、制度が複雑化していることから、実際にはさまざまな問題や課題を抱えています。代表的な事例が「対象障がい者の範囲」や「短時間勤務の扱い」です。障がい者雇用促進法では、企業や公的機関が法定雇用率を達成することを義務付けており、今年3月から企業が2.3%に上昇。この法定雇用率の計算にあたって、課題が浮かび上がっています。
まず、対象となる障がい者は現在、身体、知的、精神障がい者のうち、障がい者手帳を持っている人に限定されています。このため、難病患者は身体障がい者、発達障がい者は精神障がい者と実質的に重なる人が多いにもかかわらず、手帳を持っていないと対象からはずれるのです。
厚生労働省が実施した調査によると、難病患者のうち、障がい者手帳を持っている人の割合は56%で、年代では60歳以上が66%を占めています。難病患者の場合、一般の障がい者と大きく異なる点は、症状が不安定なために就労が困難になるケースの多いこと。「全身的な体調の崩れやすさ」が共通点で、それも個人差が大きいため、障がいが固定している障がい者手帳を取得しにくく、企業側も対応がわからないために採用を敬遠しがちです。
しかし、難病の中には公費による医療費助成の対象になる指定難病が333疾病あり、助成を受けている患者は「特定医療費受給者証」を持っていることから、受給者証を手帳代わりにできれば、難病患者も障がい者枠での雇用が広がるのではないかとの意見が出ています。昨年3月時点で受給者証を持っている人は約95万人。ただ、受給者証と障がい者手帳とでは発行目的が異なるため、「代用」には慎重な意見も多く聞かれます。
「特例給付金」制度、継続か否か
もう一つの課題は短時間勤務者の扱いです。現在、雇用率算定の対象にならない「週20時間未満」の就労者を含めるかどうかが焦点となっています。対象としていないのは、雇用保険の対象が「職業的自立の目安」である「週20時間以上」の就労に限定されているため。しかし、20時間未満の就労なら可能という障がい者も多いことから、雇用率にカウントすべきとの意見が強まっています。
現行では、企業が「週20時間以上~30時間未満」の障がい者を雇用している場合、雇用率は0.5人と原則カウントし、調整金なども通常の2分の1が支給されます。「週10時間以上~20時間未満」の場合は、2010年度から雇用率にはカウントされませんが、雇用機会を確保するという名目で4分の1相当の「特例給付金」を支給する制度が設けられました。問題は、この特例措置のままで続けるべきかどうかという点です。
障がい者雇用も「雇用」である以上、雇用保険の原則の例外扱いできるかどうか、議論は分かれるところです。しかし、日本は先進国中では障がい者雇用の水準が低く、雇用を増やすには「手帳主義」「労働時間主義」といったハードルを下げて、企業も障がい者も雇用、就労しやすくなる環境整備が必要なことは確かです。