- 総合人材サービス ランスタッドTOP
- 法人向けHRブログ workforce Biz
- 賃上げに向けた「労働市場改革」を推進 厚労省の本年度方針、労政審新会長に岩村氏
賃上げに向けた「労働市場改革」を推進 厚労省の本年度方針、労政審新会長に岩村氏
企業に賃金の引き上げに向けた支援を強化
労働政策審議会は5月8日、公益委員から選出する会長に岩村正彦氏(東京大学名誉教授)を選び、第13期となる労政審の体制がスタートしました。
2021年5月から2期4年の任期を務めた清家篤氏(慶応義塾大学名誉教授)は公益委員を退任しました。この日は、事務局の厚生労働省が2025年度の労働行政関係予算の主要施策や各局所管の労政審分科会・部会の審議状況などを説明。持続的・構造的な賃上げに向けた「三位一体の労働市場改革」と「多様な人材の活躍」を推し進める方針を示しました。
労働担当の鰐淵洋子厚生労働副大臣は今年の春闘が大企業を中心に高水準の回答となっているとしたうえで、「賃上げの流れを地方や中小企業にも波及させるために地方版政労使会議を積極的に展開してきた」と強調。
「米国の関税措置の動向が賃上げの動きに水を差さないよう国内産業経済への影響を把握しつつ、影響を受ける企業への資金繰りなどの支援強化に加え、厚労省としても都道府県労働局を通じて情報収集や相談支援に取り組んでいる」と述べました。
本年度の労働分野の施策の柱には(1)最低賃金・賃金の引き上げに向けた支援、非正規雇用労働者への支援(2)リスキリング、ジョブ型人事(職務給)の導入、労働移動の円滑化(3)人材確保の支援の推進(4)多様な人材の活躍促進と職場環境改善に向けた取り組み(5)女性の活躍促進――の5点を掲げました。方策として「最低賃金・賃金の引上げに向けた中小・小規模企業等支援」「成長分野などへの労働移動の円滑化」「多様な働き方の実現に向けた環境整備」「女性のライフステージごとの健康課題に取り組む事業主への支援」――など10項目を展開します。
厚労省の施策説明は、労働基準局、職業安定局、雇用環境・均等局、人材開発統括官関係の順に行われ、使用者側からは「賃金の決定プロセスは根拠に基づく納得感のある着地が大切だ。支払い能力を超えた過度な引き上げにならないよう注視が必要」と指摘。
一方、労働者側からは「中小企業の賃上げは伸び悩み、企業規模間の格差が拡大している。労務費を含む価格転嫁や取り引き慣行の改善を推し進めてほしい」などと要望しました。
実質賃金3カ月連続のマイナス、物価上昇に追い付かず
厚生労働省が5月9日発表した毎月勤労統計調査の3月速報値(従業員5人以上)によると、労働者1人あたり現金給与総額は30万8572円(前年同月比2.1%増)で39カ月連続のプラスとなりました。
しかし、物価上昇分を差し引いた実質賃金指数(20年=100)は85.7(同2.1%減)と3カ月連続のマイナスで、2月の1.5%減からマイナス幅も拡大しました。コメ価格の高騰など、物価上昇に賃金が追い付かない状況が続いており、今春闘の賃上げが反映される4月以降の動きが注目されます。
給与額のうち、基本給などの所定内給与は26万2896円(同1.3%増)でしたが、春のボーナスなどの特別給与が2万5993円(同13.9%増)に増えました。雇用形態別の総額は、正社員が中心の一般労働者は39万9394円(同2.7%増)でした。