- 総合人材サービス ランスタッドTOP
- 法人向けHRブログ workforce Biz
- AI時代に価値が高まる、代替不能な「資質的スキル」とは?——最新の世界調査から紐解くスキル需要と人材動向
AI時代に価値が高まる、代替不能な「資質的スキル」とは?——最新の世界調査から紐解くスキル需要と人材動向
今求められている専門スキルとは?ランスタッドの「高需要スキル世界調査」
世界が求めるスキル分野がわかるグローバル調査
ランスタッドは2025年に、グローバルな人材市場を多角的に分析する「高需要スキル世界調査」を実施しました。2,200万件以上の求人情報と、1億6,600万件以上のスキル評価を含む職務経歴書、3億8,000万件以上のメタデータを収集・統合・標準化し、5つの次元にわたって分析することで、今市場で求められている専門スキルを明らかにしています。
調査対象国は世界24カ国、世界の人材動向がわかる
今回の調査対象は南北アメリカ、アジア太平洋、ヨーロッパの計24カ国となっています。昨年と同様、日本は直接的な調査対象ではありませんが、世界における人材の需要と供給の動向、競争力の高いスキル分野、さらには人間固有の素養である資質的スキルの重要性、報酬トレンドなど、レポートはグローバル人材戦略を検討する企業にとって極めて示唆に富む内容となっています。
AI時代、スキルの優先順位に劇的な変化が
AIの進化により、ビジネスにおけるスキルの定義が書き換えられています。今回の調査結果が示唆するのは、正確な作業などの「AIが担える業務」から、人間ならではの高度な判断や関わりが求められる領域へと、企業のニーズが急速にシフトしているという事実です。
注目ポイント1:AIに代替できない「人間固有のスキル」の再評価
需要トップは「リーダーシップ」。AIスキル以上に困難な人材確保の現状
本調査では、人間に本来備わっている素養である「資質的スキル(inherent skills)」15項目を詳細に分析しました。その結果、企業の優先順位には昨年から明確な地殻変動が起きています。
昨年最も需要が高かった「細部への注意(attention to detail)」が急激に順位を下げる一方で、代わって首位に立ったのは「リーダーシップとモチベーション」でした。これは、実務の正確性以上に、組織を動かし、変化をリードする「人間ならではの資質」の希少価値がかつてないほど高まっている状況を裏付けています。
こうしたスキルは一朝一夕での習得が難しいからこそ、外部採用に頼るだけでなく、キャリアコーチング等を通じて個々の潜在能力を引き出し、次世代のリーダーを社内で育成するという視点も今後ますます重要になってくるでしょう。
一方、企業側の期待とは裏腹に、働き手の動向には懸念すべき点も。自身の「コミュニケーション能力」について自信を示す働き手は33%も減少しており、「共感力」についても-2.3%とわずかな低下が見られました。このギャップはカスタマーサービスやデータサイエンス&アナリティクスなど、顧客と直接対峙する職種での採用や定着に特に影響をもたらすと考えられます。
また「人間固有のスキル」を備えた人材の不足は、採用現場の負荷にも繋がっています。「レジリエンス(逆境力)」を優先する職種の求人欠員率※は12%、「創造性(クリエイティビティ)」を求める職種では8.7%に達しており、AI・オートメーションスキルの求人欠員率7.8%を上回る高水準となりました。つまり、今採用現場では技術(テクニカルスキル)よりも、人間しか持ち得ない「資質的スキル」を持つ人材の確保が求められているのです。
※本調査では、日本で一般的な「有効求人倍率」ではなく「JVR(Job Vacancy Rate/求人欠員率)」が指標として用いられている。JVRは「求められる全ポストのうち、何%が埋まらずに空席(欠員)か」を示すもの。つまり数値が高いほど欠員の占める割合が高く、現場の負荷が深刻で、採用が絶望的に難しい状態であることを表す。
日本のIT業界が直面する「外部依存」という負のスパイラル
この世界的潮流に対し、日本では特有の課題も見えています。日本のIT・テクノロジー業界では、AIを活用した先進的な取り組みが積極的に行われている一方で、40%以上のリーダーが「人材不足」を最大の懸念事項として挙げているのです。
ランスタッドのコンサルタント・アレクサンダーも、日本が深刻なスキル不足から抜け出せない根本原因として、「技術業務の外部委託への過度な依存」を指摘しています。
この「負のスパイラル」を脱するための有力な選択肢として、今回のレポートでは国外(オフショア)人材の採用を戦略に組み込むことを提言しています。しかし、ここで日本企業が直面するのが、グローバル市場における「採用競争力」の変化です。
アレクサンダーによると、「最近では海外の高度人材の給与水準が日本と同等、あるいは生活水準を考慮すると日本を実質的に上回るケースも出始めている」といいます。実際、最新の調査データ(Human Resocia, 2024)では、日本の高度人材の賃金水準は世界的に見て劣勢に立たされています。
自国市場の枠を超えた採用を成功させるには、単に募集範囲を広げるだけでなく、ITをコストではなく収益の源泉と捉え直す組織変革や、世界標準に合わせた報酬体系の構築が、業種を問わず持続可能な人材確保のための不可欠なステップとなるでしょう。
「社内マーケットプレイス(ITM)」で人間固有のスキルの可視化を
これらの世界的潮流と日本独自の課題を踏まえ、企業には人間固有のスキルを可視化し、人材戦略に活かすことが求められます。従業員のスキル、経験、キャリア目標などの情報を一元的に管理する「タレントマネジメント」を実践し、プロジェクトや役割に最適な人材を社内の誰もが見つけやすくする「社内マーケットプレイス(ITM)」の活用も有効な策となり得るでしょう。
注目ポイント2:AI・データ人材の争奪戦と働き方のギャップ
AI・データ人材の経験者確保はかなりの難関、流動性も高い
AIやオートメーション関連の専門家の数は、全スキルの中で前年比最も速いペースで増加しています。それでもなお、経験豊富なAI人材の確保は極めて難しく、AIおよびオートメーション関連の求人広告数は39.6%という驚異的な伸びを記録しました。そして求人欠員率は16.1%に達しています。また、データサイエンス&アナリティクスの求人欠員率は8.4%を記録しました。そしてこの課題は、企業がシニアレベルの人材を求める場合に一段と深刻さを増し、求人欠員率は16.9%まで跳ね上がっています。
注目すべきは、経験豊富なデータ分析プロフェッショナルの流動性の高さ。彼らの18%は最近転職したばかりで、52%が次の転職を検討しているところなのです。
経験豊富な人材の確保は、職種やスキルを問わず今回の調査対象となった国々ではほぼ共通の課題となっています。またその一方で、若手人材のニーズが著しく低下しており、キャリアアップのきっかけをつかめないことによる、将来的な中堅・シニア層の不足も懸念されています。日本市場においては新卒採用の慣行が残っており、状況や今後の推移は若干異なると思われますが、人材流出防止の観点から、働き手の資質を正しく評価し、中長期的な成長を支援し「逃がさない」組織を作ることは重要だと考えられます。
「フルリモート勤務」、「ハイブリッド勤務」が人材確保の糸口に
すべてのホワイトカラー職種ではハイブリッド勤務の募集減少が加速しており、特にマーケティング・コンテンツ・広告分野では、9.7%(2024年)から1.8%(2025年)へと劇的な下落を記録しています。
一方で、フルリモート勤務を希望する人材は、データサイエンス&アナリティクスの分野で特に顕著で、32.4%(2024年)から36.4%(2025年)と上昇しています。AI&オートメーション人材においてはさらに際立っており、17.5%(2024年)から34.8%(2025年)へと、ほぼ倍増しています。企業はAI人材・データ人材確保の策として、この「働き方のギャップ」を埋めていくことを考えておきたいところです。
ランスタッドが世界の労働者を対象に実施している意識調査「ランスタッド・ワークモニター2026」の調査結果から、日本国内の働き手も、その組織に留まり続けるかどうかの判断材料として「ワークライフバランス」を最重視していることがわかっています。引く手あまたの高度人材が求めている「柔軟な働き方」を提示できる企業であるかどうかが、採用競争の勝敗に影響を及ぼすと考えていいでしょう。
人間固有の「資質的スキル」は、企業が育て確保していかなければならない
これからの人材戦略には、AIには代替できない「資質的スキル」の再定義・可視化に加え、既存社員のスキル転換を支援する育成・定着(リテンション)の強化、そして国内のみならず国外採用も選択肢に入れた多角的なアプローチが求められます。
本レポートでは、こうした戦略立案の鍵となる職種別の詳細な分析データに加え、世界のリアルタイムなスキル動向を自ら解析できる「インタラクティブ・ダッシュボード(英語のみ)」についても詳しくご紹介しています。一歩先を行く人材戦略の構築に、ぜひ本レポートをご活用ください。
ランスタッドにはスキル需要の動向に詳しいプロのコンサルタントも在籍しています。自社にあった人材確保術を探るためにも、ぜひご相談ください。