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給与で惹きつけ、ワークライフバランスで繋ぎ止める。「ワークモニター2026」から学ぶ、2026年型リテンション術
働き手の意識が見える!ランスタッド「ワークモニター」とは?
世界の労働者がわかるグローバル調査
ランスタッドでは20年以上にわたり、世界の労働者を対象とした働く意識調査「ランスタッド・ワークモニター」を実施しています。23回目となる2026年度版は世界35の国と地域で27,000人を超える労働者と1,225社の企業、世界中の300万件を超える求人情報を対象に、2025年10月に調査・分析が行われました。
「ワークモニター2026(日本語版)」では日本特有の労働事情も詳しく解説
「ワークモニター2026(日本語版)」では、世界と日本の調査結果を比較して見ることができます。グローバル調査のレポートといっても“世界の結果をもとに後を追う”形ではなく、日本特有の労働事情を踏まえた人材戦略のために役立てられる内容となっています。
日本企業で特に顕著な「企業の楽観、働き手の悲観」
世界と日本の調査結果で大きく差が出ているのが「成長への展望」です。日本では企業の100%が翌年の成長に自信を持っており、世界平均(95%)をも上回っています。一方、同様の楽観的な見通しを持つ日本の働き手はわずか21%に留まり、こちらは世界平均(51%)を大きく下回っているのです。この驚くべき「温度差」は、単なる意識のズレではなく、戦略の実行を阻む深刻な経営リスクになりかねません。
この記事では、「企業と働き手の見通しのギャップ」を埋め、ポジティブにビジネスを回していくにはどのような「すり合わせ」が求められるのか、「ワークモニター2026(日本語版)」のデータをもとに解説します。
「ワークモニター2026」に見る「企業と働き手のすり合わせポイント」
「AIと共に働く」を働き手と共有する
日本企業の63%(世界全体:54%)が「AIが生産性の向上に役立つと感じている」、58%(世界全体:58%)が「AIが業務の大部分(50~100%)に影響を与える」と答えています。つまり、世界全体と同じかそれ以上に、日本企業はAIに熱い期待を寄せているのです。
一方、日本の働き手の意識は「生産性の向上に役立つ」、「業務の大部分に影響を与える」のいずれも世界平均を下回っており、企業と働き手の間に大きな意識のギャップがあることが窺えます。
この乖離の正体は、AIに対する旧来の「思い込み」です。企業は「AIで人件費を削減できる」との考えから抜本的な生産性向上を急ぐ一方で、働き手は「AIが企業や自分たちの業務にどれほどの変革をもたらすのか」という実感を、まだ十分に持てていない状態にあります。しかし、今求められているのは、AIをパートナーとして人間の判断力や役割を最大化させる「能力の拡張」という視点です。企業は一方的に導入を進めるのではなく、AIの活用が「個人の価値をどう高めるのか」という具体的な未来図を提示し、働き手の意識をアップデートしていく必要があります。
世界に目を向ければ、すでに変化は次のフェーズへ進んでいます。AIを使いこなす段階を超え、実務を自律的にこなす「AIエージェント」関連の求人は、2025年の1年間で1,587%も激増しました。日本がAIへの「経験不足」で足踏みしている間に、世界の労働市場は「AIに仕事を任せる(エージェント化)」スキルへと高度化しているのです。この現実を直視し、AIと共に働く未来を現場と共有できるかどうかが、成長の分水嶺となります。
「給与」で惹きつけ、「バランス」で繋ぎ止める。日本独自の定着戦略への転換
日本の働き手のキャリア観は、今大きな転換期にあります。日本の働き手のうち従来の直線的なキャリアパスを希望する割合は18%となっていて、世界全体(41%)を大きく下回っています。代わって台頭しているのが、キャリアを通じて職種やセクターを横断して経験を積む「ポートフォリオ・キャリア」への志向です。現時点で「ポートフォリオ・キャリア」を希望する層は22%と直線的なキャリアを希望する層より多く、世界全体(38%)の数値を鑑みれば、今後さらなる伸びしろがあると考えられます。
このキャリア観の変化は、人材の引き留め(リテンション)のあり方にも影響を及ぼしています。事実、日本の働き手の72%(世界全体:81%)が、仕事を探すにあたり「給与」を最も重視していますが、現在の職場に留まる理由として「給与・福利厚生」を挙げたのはわずか7%(世界全体:23%)に過ぎません。対照的に、51%(世界全体:46%)が「ワークライフバランス」を定着の最大の理由に挙げています。つまり、「高い給与で惹きつけ、柔軟な環境で繋ぎ止める」という、採用と定着でそれぞれまったく異なるアプローチが求められているのです。

現在、日本において「自身の条件で働けるだけの独立性が与えられなかった」、「私生活に合わない」、「勤務場所・時間に柔軟性がない」といった柔軟性の欠如などを理由に「実際に離職した」人の割合は、世界全体よりも低くなっています。しかし、これを「企業は現状の姿勢のままで問題ない」と楽観的に捉えるのは危険です。働き手が自律的なキャリアを志向し始めている以上、慎重に動く日本の働き手に甘えて労働環境の改善を先送りにすれば、いずれ働き手は去ってしまいます。
幸い、日本企業の73%(世界全体:72%)は「自主性が高まるほど組織への関与、生産性、および定着率が向上する」と考えています。今企業に求められているのは、働き手の「ポートフォリオ・キャリア」を支援し、個人の自律を組織の成長に取り込む新しいパートナーシップの構築です。レポートで示されている改善策を参考に、ぜひ今からリテンション対策に取り組んでみてください。
マネージャーが安定の鍵を握る。希薄化する信頼関係の再構築へ
日本の職場では今、組織を支える「信頼」の基盤が揺らいでいます。「自社の経営層を信頼している」、「同僚を信頼している」、「マネージャーと強い関係を築いている」といった項目について、日本の働き手の結果はいずれも世界平均より低くなっており、特にマネージャーと強い関係を築けている層はわずか42%(世界平均72%)と、その希薄さが目立っています。
この傾向は、特に若い世代のコミュニケーションで顕著です。「視野を広げるために異なる世代の人々に頼っている」という質問の結果を世代別に分析すると、世界全体では若い世代ほど異なる世代の人々に頼れずにいることがわかります。さらに日本においては、この項目もまた世界全体の数値よりも低くなっており、「日本のZ世代」を多様な世代とのコミュニケーションへ巻き込む必要があることが窺えます。
一方で、企業側にはこの状況を改善しようとする強い意欲があります。日本企業の98%(世界全体:95%)が「世代の多様性が生産性向上の手段である」と考え、93%(世界全体:90%)が「チームのコラボレーション改善にもっと時間を費やすべき」と回答しています。この企業側の意欲を成果に変える鍵こそが「マネージャーの役割の再定義」です。
マネージャーを単なる進捗管理役に留めるのではなく、世代を超えた知見を繋ぎ、若手の本音を引き出す「対話の設計者」として支援すること。人間関係の再構築こそが、不確実な経済下において組織を安定させる最強のインフラとなるのです。
AIへの期待を「人のポテンシャル」への投資へ繋げる
日本企業の「成長への自信」は、本来であれば組織を前進させる原動力となるはずです。しかし、その自信が現状への安住に繋がってしまえば、働き手の「静かな離職」や、世界との生産性格差というリスクを見逃すことになりかねません。
今企業に求められていることは、AIへの投資を加速させ、活用拡大による効率化を期待するばかりでなく、AIを使う働き手にももっと目を向けるべきでしょう。働き手の「AIに対する無関心」に対し、AIを実用的に使えるような機会と教育を施すことで「人にしかできない付加価値への期待」を創出するフェーズへと転換できるか。個人のポテンシャルを引き出し、信頼をベースとしたパートナーシップを再構築できるか。「人」と向き合えるかどうかが、2026年以降の人材戦略成功の鍵となるはずです。
まずはランスタッドの調査レポートをチェックして、働き手の現状や考え方を探ってみませんか。
採用、人材開発からリテンション対策まで。