インフレ手当は大手企業だけ?むしろ中小企業向き?

インフレ手当とは?

物価高騰を受けて支給される手当の俗称

「インフレ手当」とは、急激な物価上昇(インフレーション)を背景として、生活費を補助することを目的とした手当(金銭)の俗称です。

企業から従業員へ、基本の賃金のほかに諸費用として支給されるケースが先行する中、202310月、立憲民主党が発表した緊急経済対策に「インフレ手当として1世帯あたり3万円の現金給付を行う」という内容が盛り込まれ、注目されました。

ちなみに、特に決められた名称や制度などではないので、企業によって「インフレ手当」以外のさまざまな名称がつけられることもあります。また、手当の支給方法としては一度だけ支給する「一時金」と、月々支給する「月額手当」が見られます。

 

なぜ今「インフレ手当」が注目されている?

国外を見ると、コロナ禍で落ち込んだ経済活動が再び活性化し、さまざまな需要が拡大して原材料価格は上昇傾向にあります。そこへ物流停滞などが重なり、価格はさらに上がっている状態です。加えて、国内では円安が進んだことから輸入品が値上がりを続けています。こうした急激な物価上昇に対して、賃金上昇のスピードが追いつかない状況を補うために「インフレ手当」が浮上してきたのです。

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インフレ手当の事情はどうなっている?

インフレ手当に取り組む企業は現在のところ多数派ではない

東京商工リサーチが2023年2月に実施した2023年度「賃上げに関するアンケート」調査(第2回)によると、最近の急激な物価上昇に伴い、従業員に「インフレ手当」(類するものを含む)を「支給した」という企業は全体の16.6%(4,465社中、742社)となっています。
また「支給する予定」は3.5%(160社)、「検討中」は14.5%(648社)ということで、全体の3社に1社(34.6%)がインフレ手当に取り組んでいることになります。その一方で、「支給しない」という回答も65.2%(2,915社)におよびました。

大企業は賃上げ、中小企業はインフレ手当?

同調査で2023年度に賃上げを「実施する」と回答したのは大企業では全体の85.5%(478社中、409社)、中小企業では全体の80.0%(3,653社中、2,924社)となっています。大企業の方が賃上げにやや積極的なのが分かります。
一方、「インフレ手当」(類するものを含む)の支給については、中小企業が17.1%(3,920社中、673社)なのに対し、大企業は12.6%(545社中、69社)と、中小企業がやや多くなっています。こうしたことから、一度上げると下げるのが難しい賃金ではなく、一時的に支給するインフレ手当で物価上昇をしのごうとする中小企業の様子が垣間見えます。
※資本金1億円以上を「大企業」、1億円未満(個人企業等を含む)を「中小企業」と定義。

 

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インフレ手当のメリットは?

従業員の不安を和らげることでのエンゲージメント向上

賃金を上げることは難しいけれど、なんとか従業員を物価上昇から守りたい。そんなとき、たとえ十分な金額ではなくても、インフレ手当を支給することで企業の「従業員を守る」という姿勢を示すことができます。従業員の生活に対する不安を和らげ、会社への帰属意識の高まりにもつながります。

離職・無理な副業などによる影響を防ぐ

生活に不安を抱えた従業員をそのままにしておけば、よりよい待遇を求めて離職が増えることもあるでしょう。また無理な副業、極端な倹約などで身体や心の不調を抱えてしまい、仕事がおろそかになったり、療養のため休職したりといった状況も起きかねません。インフレ手当の支給は、こうした影響を防ぐことにもつながります。

ブランディング効果が望める

インフレ手当を支給することで「人を大切にする企業」というプラスの企業イメージをアピールできます。求職者に好印象を与え、採用が有利になるのに加えて、投資家や取引先、顧客にもポジティブなイメージを印象付けられます。

 

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インフレ手当支給のポイント

「賞与に一時金を上乗せして支給する」方法が最もシンプル

インフレ手当の支給方法のひとつに、「賞与に一時金を上乗せする」方法があります。この場合、賞与に含まれるため所得税が課税され、社会保険料、雇用保険料も発生します。ただし、臨時の措置とされるため、他の方法などで求められる「就業規則の改定」が不要で、手続きなどは最もシンプルと言えます。

「賞与ではない一時金」「月額手当」は就業規則改訂などが必要

インフレ手当を「賞与とは別の一時金として支給する」場合、その一時金に関する内容を就業規則へ追加するため、就業規則の改定が必要になるなど、賞与に上乗せするよりも手間がかかると見られます。
また、インフレ手当を「月額手当」として当面の間毎月支給する場合も、「給与改定」としての処理が必要になります。所得税、雇用保険料が毎月発生しますし、社会保険料の月額変更届や、もちろん就業規則の改定も必要です。

「正社員のみ支給」するのはトラブルにつながる可能性が

「全従業員にインフレ手当を出すのは厳しいので、正社員のみに支給する」といったことも考えがちですが、インフレの影響を受けているのは正社員だけではありません。名目を「インフレ手当」とする以上、「同一労働同一賃金」の原則に違反する可能性が出てきます。正社員と同条件とは言わないまでも、非正規社員にも支給するなど、支給する範囲や条件はよく吟味した方が良いでしょう。

 

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インフレ手当の取り組み事例

在籍年数や家族の人数に応じたインフレ手当

A社では2022年夏、インフレ手当を正社員・契約社員を対象に賞与支給時の別手当として実施。在籍1年以上の従業員は一律の額で、1年未満の従業員も在籍日数に応じてそれぞれの額が支給されました。また、同年冬には「1万円×本人+家族の人数」でインフレ手当を支給。「生活のため」という本来の趣旨を踏まえ、「家族が多い=出費が多い社員ほど手厚くなる」というユニークな形式を取っています。

管理職は除きつつ、アルバイトにもインフレ手当を

B社は2022年冬、「特別支援金」の名称で、管理職を除く正社員などに一時金として10万円を支給しました。管理職を対象外とした一方で、期間従業員やアルバイトなどにも7万円を支払っています。支給対象者は約1万4,000人、支給総額約13億円という規模の大きさも注目されました。

 

苦しい懐事情はあれども、「支給する」姿勢に意義が

経営側の視点としては「6割以上は支給しないのだから、余裕がある会社だけの話」、「会社だって苦しいのに」などとつい考えてしまいますが、会社の都合ばかり優先していたのでは、いつの間にか人心が離れてしまいかねません。インフレ手当だけでなく、ベースアップや定期昇給などでの支援も視野に入れながら、慎重かつ時には大胆に検討していくことが重要です。

 

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