オンボーディングとは?早期離職を防ぐ入社時のサポートプログラム

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近年、ビジネスの現場で頻繁に耳にするようになった「オンボーディング」。

新たに採用した新卒社員・中途社員に早期から活躍してもらえるよう、人事・HR担当者の注目を集めているキーワードです。貴社はすでにオンボーディングプログラムを取り入れていますか?

期待する効果は得られているでしょうか。正しく運用することで社員の早期離職を防ぎ、エンゲージメントやエンプロイヤーブランドの向上にも寄与するオンボーディング。今この施策が必要とされている背景と、メリットや導入プロセスを解説します。

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オンボーディングとは?その言葉が意味するもの

「会社や組織の一員として」という意味のイディオムである“on board”。もともとは飛行機や船に乗っていることを表す英語で、会社を船に見立て「同じ船に乗る搭乗員である」ことを表現しています。

人事の現場で使われているオンボーディングとは、新たに組織の一員になる新規採用社員が早期に社風やルールに馴染み、早い段階から実力を発揮してもらえるようにサポートすることを意味します。共にビジネスの目的地を目指す同じ船の乗組員として、周囲が受け入れを準備し体制を整えるイメージです。

 

オンボーディングと新人研修の違い

オンボーディングは新卒社員を対象とする新人研修や、経験者として中途採用した社員のための入社時オリエンテーションと大きく異なります。一般的に、新人研修は入社直後の限られた期間に集中的に行われることが多いでしょう。中途採用社員に対しては、簡単な事務手続きの説明のみで、オリエンテーションすらないという中小企業も多いかもしれません。特に人手不足が深刻な状況の場合、入社後すぐに即戦力として業務を引き継がれ、説明もそこそこに業務を任せられるというケースもあるでしょう。
一方オンボーディングは、新たに入社するすべての社員に対して継続的に実施されます。人事任せの新人研修や現場任せのOJTではなく、会社全体で取り組む施策なのです。


オンボーディングの対象者は新人?

オンボーディングは新入社員のためだけの施策ではありません。オンボーディングプログラムでは、会社全体が新たな仲間を受け入れ、ひとつのチームとして一体化し生産性を向上させることを目指します。
つまりオンボーディングは新たに採用された社員のサポートであると同時に、既存社員も含めたメンバー全員がお互いにサポートし合い、交流しながら共に事業を成長させていくことが目的なのです。

 

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今オンボーディングが必要とされる理由

オンボーディングが注目を集めるようになった理由として、以下の3つが考えられます。


1)早期離職防止

2021年10月に厚生労働省から出された報道発表資料※1によると、就職後3年以内の離職率は新規大卒就職者で31.2%にのぼります。別のある調査によると、もっとも退職しやすい時期は入社後3カ月※2であることもわかっています。大きなコストと労力を費やして採用した人材にすぐに離職されてしまっては、現場は疲弊する一方です。

そこで、離職を防ぎ定着率を改善させるために、入社時の導入サポートが重視されるようになってきました。この背景には、人材不足による採用難という現状があります。求める人材を思うように採用できない状況で重要なのは、今いる社員が辞めないこと。採用した人材が定着し、長く働き続けてくれることです。


2)入社から戦力になるまでの期間短縮

新卒入社の場合、そのポテンシャルを引き出すまでには長い時間を要するでしょう。まずは会社という未知の環境やはじめての業務に慣れるところからはじまります。上司や同僚との新しい人間関係の構築につまずいてしまうと、戦力へと成長する前に離職してしまう可能性をはらんでいます。

また、同業や同じ職種出身の経験者を中途採用していたとしても、その企業の社内ルールや独自のシステム・やり方に慣れるまでに時間を要したり、マネジメントが求める役割と本人の認識にずれが生じていたりすると、はじめから思うような成果を出せないケースもあります。エグゼクティブなど、それまでの経験値や実績が豊富な人材でも、その企業の文化や独自性に馴染むまでに時間がかかるかもしれません。


3)リモートワークの普及

多くの人事担当者が、リモートワークの影響によるエンゲージメントや一体感の低下に危機感を抱いていることでしょう。これまでであれば、入社した社員に社内を案内して各部署に挨拶をしたり、既存のスタッフと交流するランチ会などの機会を設けたりすることも可能でした。しかし今では、募集応募から採用・就業までがすべてオンラインで完結してしまいます。

新入社員は会社の風土や仲間の雰囲気、職場の連帯感を肌身で感じることがないまま、新しい関係性をスタートすることに。それでは組織に加入する側も迎え入れる側にとっても、不安や戸惑いを感じても不思議ではありません。
オフィスで物理的に顔を合わせる機会が激減した状況において、社員の組織への帰属意識をいかに高め信頼関係を構築するか。その手段として、オンボーディングの重要性が注目されるようになったのです。

 

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オンボーディングの導入プロセス

新たな仲間の早期離職を防ぎ即戦力として活躍してもらうために、5つのオンボーディング導入ステップをご紹介します。


STEP1:スムーズな就業スタートに向けた準備

オンボーディングは入社前からはじまっています。人事・採用担当者や配属後の上司は積極的にコミュニケーションを取り、歓迎の気持ちを表しましょう。また、使用する機器やシステムのパスワードなどは事前に用意し、入社初日までに設定を終えてスムーズに業務に取り掛かれるように手配します。
いち早く組織に馴染めるようにブランドブックを作成して渡したり、会社の歴史や企業理念・経営層が語るメッセージを動画にまとめ、あらかじめ視聴してもらうのも良いでしょう。会社独自のシステムやフローは、マニュアルを作成して共有しておきます。


STEP2:フォロー体制を整える

仲間との一体感や組織に対する帰属意識を高めるためには、オープンな意見交換やお互いに助け合おうというサポーティブな雰囲気が欠かせません。
反対に、入社直後に周囲との関わり合いが希薄な状態なまま放置されていると、自分は期待されていない・必要とされていないのではないかと疑心暗鬼になったり、わからないことがあっても誰にも聞けず孤独や不安に陥ったりミスを招いたりします。
社員同士の交流を通じて自分が周囲に気にかけてもらえている・期待されていると感じることは、エンゲージメントとモチベーションの向上につながります。ブラザー・シスター制度やメンター制度を設け、社内でのマインドセットや業務の進め方の指導、不安などメンタル面へのアドバイスが受けられる体制を整えましょう。


STEP3:段階的な目標設定

入社から1カ月後・3カ月後・6カ月後・1年後にどのような成果を求めているのか、スキルがどの到達点まで向上することを期待しているのかを明確にします。この目標は段階的なスモールステップかつ長期的な見通しで設定することが大切です。
目標設定は、所属するチームと人事、新しく入社する社員との間でズレがないよう、しっかりとすり合わせをする必要があります。また、会社側からの期待値を一方的に伝えるだけではなく、新入社員が会社側に期待していることもヒアリングしましょう。本格的に業務がスタートする前に、お互いの期待値を合わせておくことが重要です。


STEP4:プラン作成・実施

フォロー体制と目標設定が明確になったら、個別具体的なプロセスに落とし込みます。大切なのは、オンボーディングプログラムは入社した一人だけを成長させる施策ではなく、チーム力を向上させる取り組みだという意識を全社員が持つことです。入社した社員がスモールステップで成功体験を積み上げ、最終的なゴールを目指せるプランを組み立てましょう。
どういった研修やセミナーが必要か、OJTはどのように進めるのか、定期的な1on1ミーティングはどのように実施しデータとしてどう残すのか。業務で直接的に関わる部署のメンバーと研修を行う人事担当者など、関係部署の間で認識の相違がないように連携していきます。


STEP5:フィードバックと振り返り

オンボーディングの期間が終了したら、人事・採用担当者と新入社員を受け入れた部署の関係者、対象となっていた新入社員の三者からアセスメントを取ります。多角的なフィードバックからプランを見直し、オンボーディングの質を高めていきましょう。
オンボーディングの導入プロセスについては、こちらのコラムもぜひ参考にしてください。

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オンボーディングを行う5つのメリット


新入社員の早期戦力化

短期間で職場に馴染み業務を円滑に進められるようになれば、独り立ちした戦力として早い段階から会社に貢献してもらうことができます。成果が出ることで本人のモチベーションが上がり、それがより良い成果をもたらすという好循環が生まれるでしょう。


早期離職を防ぎ定着率を改善


早期離職の理由としてもっとも多いのが人間関係への不満。入社前後の活発なコミュニケーションにより周囲との良好な関係性が早期から築ければ、新しい人間関係での不安や不満を低減させられます。また、早い段階から戦力として会社に貢献できているという自己肯定感や周囲からの評価も、離職を防ぐ要因となります。


組織力の強化


人事担当者が主に行う新入社員研修やオリエンテーションと違い、オンボーディングプログラムは配属部署や他部署のメンバーまでも含めた全社員での取り組みです。既存社員の間でのコミュニケーションも活性化し、それぞれがお互いをどうサポートするかを考えるきっかけとなるでしょう。これは会社全体の組織力の強化へとつながります。
また、ブラザー・シスター制度やメンター制度は、既存の先輩社員のマネジメントスキル向上にも効果的です。


採用コスト・機会損失の低減


新たに人材を採用するためには、多くのコストが発生します。求人情報サイトへの掲載料や人材会社への手数料、採用担当者の人件費はもちろん、欠員が出ている期間の補填スタッフの人件費や生産性の低下による機会損失も生じます。採用した社員の早期離職が続くようでは部署のモチベーションも下がり、教育を担当する社員は疲弊して大きな負担を感じるでしょう。
オンボーディングにより離職率が抑えられれば、新規採用にかかるあらゆるコストを削減し、生産性やモチベーションの低下も防ぐことができます。


エンプロイヤーブランドの向上


コミュニケーションが活性化し、社内がサポーティブな雰囲気となって一体感が醸成されれば、自然とエンプロイヤーブランド(働く場所としての魅力度)も高まります。社員はその会社で働くことを誇りに思い、安心して働き続けられるようになるでしょう。また、SNSでの発信などを通じて会社の良さが世の中に伝わったり、優秀な友人・知人のリファラル採用につながったりするケースもあります。

 

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会社と社員の双方にメリットが多いオンボーディング

オンボーディングを導入していく企業はこれからますます増えることでしょう。効果的にオンボーディングを実施するためには、会社として社員のキャリアをしっかりと考え、全社を挙げて「Welcome on board(入社おめでとう)」という意思表示をしていくことが欠かせません。

キャリアサポートについては「キャリアサポートとは?社員のキャリア形成・開発を会社が支援すべき理由」の記事を次週公開いたしますので、そちらもぜひご覧ください。

ランスタッドでは、スタッフの安定的な長期就業で企業の成長に貢献するために『ランスタッドケア(キャリアサポート・福利厚生)』に取り組んでいます。また、企業・社員ごとに最適なサポートをご提供する『キャリアサクセスオンボーディングコーチングプログラム(PDF)』もご用意しています。


これからオンボーディングの導入を検討したい、導入してみたが思うような成果が得られないという人事ご担当者様は、ぜひお問い合わせください

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