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副業は解禁すべきか?~副業市場を考える~
副業を解禁するか、解禁せず現状を維持するか――判断に迷う企業の経営者や人事担当者が、まず知っておくべきは副業市場です。
在宅勤務などテレワークの普及もあり、副業に関心のある企業や、副業を認める企業は増えており、今後もその傾向は続くと予想されます。昨今、企業が次々と副業を解禁する背景には、日本政府による副業の推進もありますが、企業が従業員を定着させる目的も含まれています。今回は副業市場に関するデータを確認しながら、副業を解禁すべきか迷う企業や担当者に向けて、副業を解禁するメリットやデメリットについて解説します。
副業とは
本業とは別の仕事で働き収入を得ることを副業といいます。副業を解禁すべきか考えている企業の経営者や人事担当者にとって副業とは、自社で雇用している従業員が、自社で働き続けながら、他社などで働くことを指します。自社以外で非正規社員としてアルバイトをすると、自社での仕事が本業、アルバイトが副業となります。従業員が行う副業は個人事業主であったり、請負や委任で働いたりすることもあり、さまざまな形態がありますが、本業と比較して副業の方が時間も労力も収入も少ない傾向にあります。
2020~2021年の副業市場に関するデータ紹介
昨今、企業が次々と副業を解禁する背景には、日本政府による副業の推進に加えて、企業で働く人材の定着も目的としています。では、実際に厚生労働省や東京都産業労働局のデータを見ながら、直近の副業市場がどのような状況かを確認していきましょう。
副業を認める企業の割合
コロナ禍でテレワークも進み、企業が副業を解禁したというニュースを目にすることがあります。従前から、病院に勤務する医師や看護師などが、週に1回程度は別の病院の夜間診療に行くようなケースはありました。しかし昨今は、企業に勤める従業員が本業の業務時間外に別の企業で働くケースが増えています。
厚生労働省の「副業・兼業に係る実態把握の内容等について(令和2年7月31日)」より抜粋した、「図表1-業種別 就業形態別 副業・兼業の許可等の状況①」を見てみましょう。全国の事業所で正社員について副業・兼業を認めている割合は39.4%、正社員以外では63.8%の事業所が副業や兼業を認めていると分かります。なお、正社員について副業・兼業を認めている事業所の割合は、医療・福祉が最も多く53.3%認めると回答し、次に宿泊業・飲食サービス業48.9%、教育・学習支援業が47.4%と続きます。
図表1-業種別 就業形態別 副業・兼業の許可等の状況①
また、都内企業に限ると、東京都産業労働局の「都内企業における兼業・副業に関する実態調査(令和3年4月)」より抜粋した「図表2-従業員の兼業・副業を認めている状況」より、兼業や副業を認めている割合が34.9%(全面的に認めている6.3%、条件付きで一部認めている28.6%)となっています。業種別に見ると、医療・福祉が最も多く67.0%、次に教育・学習支援業が52.3%、情報通信業が49.4%、宿泊業・飲食サービス業が49.3%と続きます。厚生労働省の調査では正社員について兼業・副業を認めている情報通信業の割合は35.3%であり、都内では情報通信業の多くが兼業・副業を認めていることが分かります。
図表2-従業員の兼業・副業を認めている割合
図表3-業種別 従業員の兼業・副業を認めている状況
副業の社内手続き
兼業や副業はどのように認めているか、厚生労働省の「副業・兼業に係る実態把握の内容等について(令和2年7月31日)」より抜粋した、「図表4-業種別 就業形態別 副業・兼業の許可等の状況③」を見てみます。全国の事業所で正社員について副業・兼業を認めている事業所は、許可制の割合が30.1%、届出制14.0%、規定・制度はないが慣習的として認めているが55.2%と分かります。
図表4-業種別 就業形態別 副業・兼業の許可等の状況
都内企業に限ると、東京都産業労働局の「都内企業における兼業・副業に関する実態調査(令和3年4月)」より抜粋した「図表5-従業員の兼業・副業の社内手続き」より、届出のみが29.5%、届出と審査を実施が25.7%、届出なしが34.6%となっています。厚生労働省の調査では届出または許可が必要な割合が44.1%であり、都内では届出のみまたは届出と審査を実施の割合の合計が55.2%と、都内の企業の方が、副業を実施するための届出等が必要な割合が高くなっています。
副業している従業員の副業先との労働時間通算や、社会保険料や割増賃金等の負担調整などが必要となるため、従業員の副業先や副業を行う労働時間などを企業がチェックできるように、届出を求めている企業もあると考えられます。
図表5-従業員の兼業・副業の社内手続き
副業を認める理由
東京都産業労働局の「都内企業における兼業・副業に関する実態調査(令和3年4月)」より抜粋した「図6-従業員の兼業・副業を認めている理由」は、柔軟な働き方による優秀な人材採用が最も多く38.7%、次に人材の定着(離職率の低下)が37.8%、従業員のモチベーション向上が 35.2%、働き方改革の促進が28.7%と続いています。
企業が従業員の副業を認めることで、従業員は柔軟に働くことが可能となり、結果的に離職率が低下し、人材が定着する効果があると考えられます。
図表6-従業員の兼業・副業を認めている理由
外部人材の役割
副業を解禁する企業が一定数ある一方で、他の企業で働きながら副業をしている外部人材(副業者)を活用した実績のある企業では、外部人材にどのような役割を求めているのでしょうか。
東京都産業労働局の「都内企業における兼業・副業に関する実態調査(令和3年4月)」より抜粋した「図7-兼業・副業による外部人材の役割」を見ると、専門職が最も多く51.1%、次に一般人材が33.4%、顧問・アドバイザー人材が27.1%となっています。
企業が外部人材に求める者は、高度な知識のある専門家やアドバイザーはもちろんのこと、従業員と同じように仕事をする人材も外部人材に求めていると考えられます。
図7-兼業・副業による外部人材の役割
企業側から見た副業を推進するメリット
企業が副業を推進するメリットは、高スキルの従業員の流出を防ぎ人材が定着すること、人材育成のコスト削減ができること、また、多様な人材を低コストで雇えることなどが挙げられます。
人材が定着する
企業が副業を解禁することの一番のメリットは、高スキルの従業員の流出が防げ、人材が定着することです。かつての日本企業は年功序列や終身雇用を掲げ、ひとつの企業で勤めあげることがキャリアでしたが、今はキャリア自律が叫ばれ、新たな仕事にチャレンジすることも当然となっています。
新たな仕事にチャレンジしたいと従業員が考えたとき、副業を禁止している企業の場合、従業員は新たな仕事をするために本業の企業を辞めて転職していまいます。副業を解禁している企業であれば、従業員は新たな仕事を始めるときに副業として始めれば、本業の会社を転職する必要がありません。本業を辞めずに、自分のスキルを副業で活かし、結果として個人事業を起業し経営できる従業員や、他社でも必要とされる従業員などの、高スキルの従業員が退職することなく、本業で活躍し続ける可能性が高まります。さらに、優秀な人材が定着して活躍し続けると、他社との競争力が高まります。
人材育成のコスト削減につながる
副業を行うことで、従業員は企業内では得られない知識やスキルを獲得することができ、獲得したスキルを企業内で活かすことは、人材育成のコスト削減につながります。例えば、本業では営業職の従業員が副業先で経営に携わる仕事を行うと、経営者視点が醸成されることや、リーダーシップ・マネジメントスキルを得ることもあるのです。企業では、経営者視点を育成する研修費を支払う必要がなくなり、研修費などの人材育成にかかるコストを削減することも可能となります。
従業員自らが、社外でも通用する知識やスキルを習得するための研鑽に努めるようになり、キャリア自律した従業員を増やすこともできます。
多様な人材の採用の可能性が広がる
企業は高スキル人材を正社員として雇入れようとすると、高い給料を支払うことになり、コスト高になります。他の企業が副業を解禁することで、高スキル人材を副業として受け入れることが可能となります。これにより企業は、必要なときにスポット的に高スキル人材を正社員として雇用するよりも低コストで採用することができます。
他社経験がある人材を採用することにより、企業は新たな知識や顧客へと出会うことにもなり、事業機会の拡大やイノベーション創出にもつながるでしょう。
企業側から見た副業を推進するデメリット
企業が副業を推進するデメリットは、就業規則の整備や、従業員のバランス・コントロール、情報漏洩などのリスク管理が新たに必要となることです。
就業規則の整備が必要
従業員が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には自由であるとされています。つまり、従業員が副業を申し出た場合は、副業を認める検討が適当です。副業を禁止している企業や許可制としている企業は、副業を認める方向で就業規則などの見直しを行い、副業できる環境の整備が必要です。
また、従業員が自社と他社で雇用される場合は、副業先との労働時間通算や、社会保険料や割増賃金等の負担調整などの事務コストが発生することもデメリットといえます。
従業員自身の本業と副業のバランス・コントロール
副業により従業員が長時間労働となることが考えられます。長時間労働は従業員の心身への影響や生産性の低下など本業への支障も懸念されます。従業員の健康が阻害されないよう企業は従業員の就業時間外の活動にどこまで介入するか、従業員自身が本業と副業のバランスをコントロールできるかの確認など常日頃からコミュニケーションをとり、従業員の健康管理を図ることが重要となります。
また、副業を行いながらも本業での職務専念義務や誠実労働義務を果たせているかを確認し続けなければならないこともデメリットといえるでしょう。
情報漏洩などのリスク管理
副業先での雑談などから、故意でなくても業務上の秘密について従業員が話してしまう情報漏洩のリスクも考えられます。企業の信用毀損に発展することや、損害発生する可能性などもデメリットといえるでしょう。
まとめ
直近の副業市場に関するデータから、副業を認める会社の割合や、副業を認める際の社内手続き、副業人材の活用方法などについて確認してきました。
また、副業には高スキルの専門家やアドバイザー以外に、一般人材も求められていることも分かりました。副業を解禁することにはメリットもデメリットもありますが、企業が副業を解禁することは高スキル人材の流出を防ぐことにつながり、高スキルの副業者に仕事を依頼することは低コストで高スキル人材を確保することができるメリットがあります。
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出典