従業員とともにキャリアパスを計画することは、エンゲージメントの向上、人材育成の加速、定着率の向上、そして企業が成長するために必要なスキルの確保につながります。
しかし、大きなスキルギャップがあると、どれほど綿密に計画されたキャリアパスや意欲的な従業員であっても、その道が断たれてしまう可能性があります。適切なリソースとサポートがあれば、従業員は自身のキャリアパスを通じてスキルギャップを埋めることができます。しかし、求められるスキルの習得があまりにも困難な場合、キャリア実現に必要な学習や成長の機会が失われ、結果としてキャリアプランの取り組みが無駄になり、従業員の意欲低下や離職につながってしまう恐れがあります。
効果的なキャリアパスと高いスキルレベルは、相互依存の関係にあります。キャリアパスを前進させるには高いスキルが必要ですが、同時にスキルギャップを埋めるには、キャリアパスが提供するエンゲージメントと明確な目標設定が不可欠です。
本記事では、この相互関係を紐解き、キャリアパスを実現するためにスキルギャップを解消することの重要性を解説します。また、スキルギャップを特定し、効果的に埋めるための基本的なフレームワークを紹介し、企業の成長と従業員のキャリア形成に役立つヒントをお届けします。
なぜスキルギャップを解消することが、良いキャリアパスにつながるのか
- 従業員の知識を深めるために -キャリアパスを進むうえで、従業員が社内で昇進する場合も、横方向・斜め方向にキャリアチェンジする場合も、常に知識やスキルの習得が求められます。昇進にはリーダーシップや仕事を任せるスキルが必要になり、横や斜めのキャリア移動では専門性を高めることが求められます。スキルと知識は成長の土台であり、スキルギャップがあるとその成長が止まってしまいます。
市場で求められるスキルを把握し、今後企業が競争していくうえで鍵となるスキルをいち早く押さえておきましょう。
- 協力し合う学びの機会が重要 - スキル開発における大切な要素の１つに、同僚同士の学び合いがあります。経験豊富なメンバーと一緒に働いたり、異なる部門の人と課題解決に取り組んだりすることで、実践的なスキルや専門知識は着実に積み上げられていきます。ハーバード・ビジネス・レビューによると、このようなコーチングは、現在企業がスキルギャップを解消するために活用している主要な手法の一つとされています。
しかし、社内全体でスキルが不足していると、こうした学びの機会が限られ、従業員のキャリアパスが思うように進まなくなる可能性があります。
- スキルギャップは定着率にも影響する -仕事を通じて成長を実感できない従業員は、離職のリスクが高まります。当社のワークモニター2025の調査によると、世界の労働者の33%が、「研修やスキル開発の機会が、今の仕事や将来のキャリアにとって重要だ」と考えています。もし十分な成長機会が得られなければ、転職を考え始めるかもしれません。その結果、会社で描いていたキャリアパスが実現できなくなってしまうのです。
効果的なキャリアパスを実現するには、従業員が今後も企業に留まりたいと思える環境が不可欠です。スキルや学習の機会が不足してしまうと、従業員のキャリアが途中で途絶えてしまうかもしれません。
なぜキャリアパスの構築がスキルギャップ解消につながるのか？
キャリアパスの構築は、スキルギャップの解消にも効果があります。企業全体でスキルアップ計画を実施することは、一見すると効果的な方法に思えます。しかし、一律のアプローチでは従業員一人ひとりの関心やキャリアの目標が考慮されず、エンゲージメントが低下し、結果としてスキルの向上につながりにくくなります。
キャリアパスの設計はオーダーメイドのアプローチが求められます。従業員の強みや目標、興味に応じたスキル目標を設定することで、将来に対する主体的な関与が促され、エンゲージメントの向上につながります。フォーブス誌でも、キャリアパスの設計は従業員のエンゲージメントやモチベーションを高め、定着率を向上させるだけでなく、スキルギャップを埋め、企業の成長を支えると指摘しています。
また、キャリアパスを設計することで、従業員が自身の成長にとって本当に必要なスキルを、実践的かつ効果的に習得できるようになります。興味のないスキルを一方的に習得させるのではなく、個々の成長に合ったスキル開発を進めることで、より実践的な学びを提供することができるのです。もちろん、企業全体でスキルアップ計画を策定するのに比べ、個々のキャリアパスを設計するのは時間がかかるため、大企業にとっては計画が立てにくいと感じるかもしれません。しかし、MIT Sloan Managementレビューによると、すべての従業員にキャリアパスを示すことは十分可能であり、大きな効果をもたらすとされています。
キャリアパスの設計を進めることで、エンゲージメントの高い従業員が増え、会社全体のモチベーションやパフォーマンスの向上させることができます。特に、影響力のあるキーパーソンの成長を支援することで、その意欲や学びが組織全体に波及し、企業の持続的な成長を後押しすることができるのです。
どのようにスキルギャップを見分けるのか？
スキルギャップを特定するのは簡単ではありません。明らかに業務に支障をきたしている場合はすぐに気づけますが、日々の業務の中で表面化していない問題も多くあります。気づかないうちに、従業員が見えない課題に対応し続けているケースもあるでしょう。効果的にスキルギャップを洗い出すには、現在の状況を把握し、将来のビジョンを明確にしたうえで、必要なスキルとの差を分析することが重要です。以下のステップで進めていきましょう。
- 将来必要になるスキルを特定する - 会社が今後の課題に対応し、成長し続けるために必要なスキルを明確にします。例えば、AIなどの新技術の習得や、営業・サービスのパフォーマンス向上など、企業の競争力を高めるスキルが考えられます。
- 今のスキルレベルを評価する - 将来必要なスキルと照らし合わせて、現在の状況を客観的に評価します。すでに強みとなるスキルがある場合は、その維持・向上が課題となります。一方で、経験が不足している分野があれば、それがスキルギャップです。
- 次のステップを計画する -まずは、現状と理想のスキルレベルの間に大きなギャップがある部分から取り組みましょう。人事、マネジメント層、そしてスキルを必要とする各部門の関係者と連携し、具体的な学習・育成を計画します。全社向けの画一的なスキル開発ではなく、対象を絞ったアプローチを取ることで、より効果的なスキル習得が可能になります。キャリアパスの構築を通じて、従業員自身が主体的にスキル開発に取り組めるような仕組みを整えることが、スキルギャップを埋める鍵となるでしょう。
ぜひスキルギャップ分析テンプレートを活用してください
スキルギャップ分析テンプレートは、スキル評価のプロセスをスムーズに進めるための便利なリソースです。Excel形式で作成されており、将来必要なスキルの特定、現在のスキルレベルの測定、その差の算出を簡単に行うことができます。これにより、優先的に強化すべきスキルをすぐに把握できます。
テンプレートは、各部門と協力しながら入力することで、より的確な分析が可能になります。これを活用すれば、今後のスキル開発プロセス全体で役立つ、貴重な基盤資料を作成できます。ぜひダウンロードして、スキルギャップの可視化に役立ててください。
