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【創業期のエンプロイヤーブランディング】 市場にインパクトを与え従業員をブランディングする
カスタマーエンゲージメントプラットフォームとしてグローバルで活用されているBraze。国内ではネット経済メディアのNewsPicksや日本最大級コスメサイトのアットコスメなどがいち早く導入。JAPAN CLOUDのパートナーの一員として日本市場に参入し昨年にはナスダックに上場と、わずかな期間で急拡大を遂げています。その組織を支えるDNAはどのように作られているのでしょうか。創業期のチームワークとエンプロイヤーブランディングの考え方をお伺いしました。
菊地 真之氏
Braze株式会社(https://www.braze.co.jp/)
代表取締役社長
IT業界で15年以上の経験を持ち、DX支援と事業収益の拡大に尽力。インテック、SAPジャパンを経て、2014年よりアドビのデジタルエクスペリエンス事業本部にて日本企業のDX推進を支援。2018年よりワークデイの執行役員 営業統括を務めた後、2020年より現職。
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日本市場への参入直後からの急成長
――Brazeのサービスについて教えてください
2011年に創業、ニューヨークに本社を持つBrazeは、ブランドがお客様と強いエンゲージメントを築くことを支援するクラウド型プラットフォームです。
ブランドと消費者とのコミュニケーションのほぼ8割はデジタルが占める時代。Brazeは、さまざまなデジタルでのタッチポイントを集中的に管理しています。消費者のプロファイルを元にパーソナライズされたメッセージやオファーを出し、それに対する消費者の反応を見ながら、インタラクティブにコミュニケーションを行う。ブランドと消費者との間の接点づくりを、なるべく長く継続的に行っていくためのソリューションです。
――日本市場での反応はいかがですか
おかげさまで、日本市場での反応が私たちの期待値を大きく上回った印象です。ネット経済メディアのNewsPicks、日本最大級コスメサイトのアットコスメ、看護師通販サイトのナースステージなどで、1年目にしてBrazeを採用いただきました。こうした受注に加えて、多くのメディアからの反響もあり、パートナー企業としてのビジネスのオファーやアライアンスの提案も相次ぎました。こういった市場での反応も、期待値を超えていたといえます。その結果、1年目の業績としても大きな成長曲線を描くことができました。
手前味噌になりますが、本社からもこの日本の急成長を評価され、ニューヨーク本社、オースティン、シカゴ、ベルリン、ロンドン、サンフランシスコ、シンガポール、東京と世界各地にチームがある中で、日本が創業1年目にしてアワードを受賞しました。
チームワークとダイバーシティの文化
――Brazeの社風を教えてください
大きく3つありまして、まず1つは圧倒的にコラボレーション、チームワークといったものが進んでいる会社です。私は外資系歴がかれこれ14〜15年に達しているんですけれど、お互いに支え合う意識がここまでDNAに根付いた外資の会社は、今まで見たことがありません。
「私のKPIがこれだから、この仕事しかしません」という人はBrazeでは見たことがないですし、相談すれば必ず何かしらの回答を出してくれたり支援してくれたりという、フレンドリーな人たちが多いです。
2つ目はダイバーシティ。単純に性別だけではなく、LGBTやブラックファウンダー、シニアの方々を受け入れる考え方ですね。大事な存在であればどんどん採用していけばいいというところが、文化として根付いている。
最後に、すべてにおいて意思決定がスピーディーです。無駄が嫌いというのもありますが、変に政治的なところはまったくありません。「お客様が望んでいて、それがビジネスを伸ばす上で必要なのであればそうすればいい」というリズム感をみんなが持っています。
まず、海外本社から大きなプランが下りてきて、「こういうプロセスでやりなさい」と言われるようなことはありません。私がBrazeにジョインして、1日目に上司のCROから一言言われたのは「Up to you」。「あなたが一番日本市場を知っているんだから、そのやり方で」「君たちが決めたことが一番プライオリティが高いんだから」というスタイル。それはすごくスピーディに意思決定ができる礎になっていると感じています。
――チームワークはどのように培われていますか
グローバルのCEOのビル・マグナスンとCTOのジョン・ハイマンの2人は、とにかくすべてにおいてサポーティブですし、無駄なことを好みません。CTOのジョン・ハイマンは、お客様がどうしても日本の深夜の時間帯にしか打ち合わせができないという時に、他のメンバーを休ませておき、ニューヨークの早朝に自ら率先して色んな質問に答えてくれました。そうやって率先して袖まくりしながら現場に乗り込み旗振りをしてくれるところから、創業者自身のイズムとして培われていると感じます。
――ダイバーシティの意義はどこにあるのでしょう
違うバックグラウンドを持つメンバーが、違うアイディアを出してくれる。発想が同質化せず、それぞれがクリエイティビティやプロフェッショナルを発揮し、ビジネスの拡大に貢献してくれていると感じます。
すべての考えが私と一緒になってしまうと、新しいビジネスやチャレンジができなくなってしまう。違うことを言ってくれる人たちがそれぞれのフィールドを回してくれるから、私は社長のミッションに集中できます。気付かないところで新しいビジネスや新しいコラボレーション、提案が生れているというのは、同質化をしなかったことによる良い作用だろうなと思っています。
ベンチャーでは気の知れた仲間で固めたいという思いがどうしても出てくるんですけれど、はじめに私が上司から言われたのは「時間がかかってもいいから、ダイバーシティで採用していく」ということ。「走りはじめたらDNAは変えられない。今はファンデーションを作る時期で、大事なのはダイバーシティ。そのDNAを作るのが社長の仕事だ」と。
立ち止まって俯瞰的に物事を見る時間があったことが、今これだけ成長している原点。あのときに焦らなくて良かったし、自分の知っている人間だけを集めなくて良かったなと、心の底から思っています。
顧客の成功を基点に考えるエンプロイヤーブランディング
――エンプロイヤーブランディングの方針は?
1つあるのは、Brazeという会社自体が市場の中で飛び抜けている、もしくはここに属していることが市場に対して大きなインパクトを与える、そういった世界観を作り上げることです。
そのためには、Brazeを採用した企業(お客様)が市場の中で成功者として認知されることが本当に大事だと思っています。Brazeを使っている企業が成功している、成功した企業はBrazeを使っている。つまり従業員はそのお客様に対して真のカスタマーサクセスの人間であり、かつ市場の中で最先端のソリューションを使っている人間であるという方程式が成り立っていくと思っています。
そのカスタマーサクセスを基点にして、Brazeというカンパニーブランドと、それを運営している従業員をブランディングしていく。遠回りになるかもしれないけれど、それが一番効果があるのではないでしょうか。
もう1つ特にフォーカスしているのは、どういったパートナーシップであれ、誰もが一律に会社からの補助が受けられるようにすること。LGBTQの方々でも雇用上の損得が生じないようにワークルールに盛り込んでいます。ジョインしてくれた従業員の方々に等しく権利を与えるところから、福利厚生のサービスのラインナップをスタートさせています。
そういう取り組みは、これから会社を選択するときの1つの要件に入っていくと思いますので、本社側のダイバーシティに対する考え方を取り入れながら、日本でも採用を広く募集していきたいです。
スタートアップの課題と目指す世界
――創業期ならではの課題感はありますか
そうですね。コロナの影響もあり、ニューヨークの本社に行けず、コミュニケーションもすべてオンライン。その中でBrazeの日本メンバーたちは、Brazeというブランドを自分ごと化し体現するよう努めてくれていますが、大変なことだと思います。
ただ一方で、自分たちで手探りで色んなやり方を探れているというのは、良い点です。日本市場にどう展開していくか、私たちがこの会社をどう作るか。日本でマーケッターとエンジニアをつなぎ、「新しいクリエイティビティを開放するところが僕らのDNAなんだ」と言い切れるところもあるのは楽しいですね。
――Brazaの未来像を教えてください
Brazeの目指す“Human Connection” (心触れ合う人とブランドのつながり)の力を最大限に発揮し、リアルタイムパーソナライズの機能性を活かしてお客様の心情に寄り添うカスタマーエンゲージメントを推進したいです。マーケティングの新しいやり方、“先進的なソリューションを持っているからこそできるマーケティング”というものを、市場に対して普及していける存在になっていきたいと考えています。
マーケットシェアNo.1、プラス「Brazeを使っているとすごく新しい、日本にないマーケティングができる」という、そういう意義がある会社になっていきたいです。
(肩書きは取材時のものです)