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「パワハラ防止」の努力と困難 労政フォーラムで議論、JILPT
パワハラと「指導」「教育・訓練」との線引きに苦慮
労働政策研究・研修機構(JILPT)の労働政策フォーラム「職場環境の改善~ハラスメント対策」が2月10、17の両日、オンラインで開かれました。パワーハラスメントについては労働施策総合推進法の改正により、20年6月から大企業に適用され、この4月から中小企業にも適用されます。企業は防止に向けた義務を負いますが、パワハラと「指導」「教育・訓練」との線引きに苦慮する職場が多く、関心の高いテーマです。10日の研究報告では同機構の滝原啓允研究員が、これまでの「ハラスメント裁判」26例について分析しました。
この中では、加害者と被害者の属性、トラブルにおける言葉遣いや頻度などに焦点を当て、26件のうち22件がハラスメントとして認められていることなどを解説。事例報告では、日本看護協会の森内みね子常任理事▽グラクソ・スミスクラインの長井友宏・人財本部労務部長▽ベルシステム24ホールディングスの楠本三夏・法務・コンプライアンス部マネージャー▽NPO法人「対話の会」の鴨下智法副理事長の4人が各組織の取り組みを紹介しました。森内氏は、19年に実施した「看護実態調査」の中で、43%の看護職が患者や職場同僚らから言葉や暴力などのハラスメントを受けたこと、被害者の過半数が離職を考えたことなど、深刻な実態を報告しました。
長井氏は、ハラスメント防止に向けた同社の「行動指針」に基づき、毎年の全社員研修などを通じて指針の徹底を図っていることを説明。内部通報の窓口活用などを通じて、ハラスメントに対する高い"感度"を維持している努力を強調しました。
楠本氏は、ハラスメントの大半が法律以前の「非コンプライアンス」案件であることに着目し、法律より広くハラスメントを定義づけた独自の「ハラスメント防止規則」を制定し、相談窓口にエキスパートを配置するなどの体制整備を解説しました。
鴨下氏は、ハラスメントをめぐる従来の「司法=裁判」だけでは根絶は困難との認識から、当事者同士の「対話」を通じて解決を図る「修復的司法」の概念を説明。90件の申し込みがあり、32件で「対話」が成立した実績と、両者の「心の距離」を縮める効果を報告しました。
17日のパネルディスカッションでは、「線引き問題」が主要論点となりましたが、「寸劇、事例動画、ロールプレーなどを通じて社員に理解してもらう」(長井氏、鴨下氏、ベルシステム24の井木尚洋氏)手法が有効な点を示唆。しかし、「基本的に人が不快になるようなコミュニケーションは是正が必要」(森内氏)、「当事者のプライバシーに配慮して事例を公開する」(長井氏)、「具体事例を積み上げていくしかない」(鴨下氏)など、パワハラ特有の解決の難しさを示唆する発言が相次ぎました。
21年の零細事業所給与は20万円弱
厚生労働省は2月16日、2021年毎月勤労統計調査で常用労働者4人以下の零細企業の特別調査結果を発表しました。昨年7月の支払い給与について、2万2840事業所を対象に実施しています。
それによると、現金給与額のうち基本給や残業代などを含む「決まって支給する給与」は19万9902円(19年比1.4%増)となり、18年から3年連続で伸びました(20年は調査中止)。男女別では男性が26万6369円(同0.5%減)、女性が15万600円(同4.3%増)と対照的な結果となりました。業種別で高いのは建設業の26万1162円(同0.7%増)で、低いのは宿泊・飲食サービス業の11万6563円(同8.6%増)です。
一方、20年8月~21年7月に賞与など「特別に支払われた給与」は25万3157円(同2.2%増)で、男性が36万1564円(同0.2%減)、女性が17万831円(同7.4%増)と女性の伸びが目立ちます。