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社労士のアドバイス/「特定受給資格者」とは?~対象となる離職理由と所定給付日数を解説~
こんにちは、社会保険労務士法人大野事務所の榎本と申します。社労士として、企業の皆様から寄せられる人事・労務管理に関する様々なご相談に対応させていただいております。
本コラムでは、労働・社会保険諸法令および人事労務管理について、日頃の業務に携わる中で悩ましい点や疑問に感じる点などについて、社労士の視点から、法令上の観点を織り交ぜながら実務上考えられる対応等を述べさせていただきます。
今回は、雇用保険の離職時の区分のひとつ、「特定受給資格者」についてご紹介します。特定受給資格者に該当する場合、離職時の年齢や雇用保険の被保険者期間に応じて、一般の受給資格者(本稿では、正当な理由のない自己都合退職者等をいいます。)より所定給付日数が多くなることがあります。本稿では、どのような人が対象となるのかを確認したうえで、一般の受給資格者との違いを解説します。
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ポイント
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はじめに
会社を退職した際、雇用保険の基本手当(いわゆる失業給付)を受給できる日数は、すべての人が同じというわけではありません。離職時の年齢や雇用保険の被保険者であった期間だけでなく、離職した理由によっても異なります。
特に、会社の倒産や解雇など、労働者自身の意思とは異なる事情によって離職を余儀なくされた人については、「特定受給資格者」として、一般の受給資格者よりも手厚い給付が設けられています。
1. どのような人が「特定受給資格者」となるのか
特定受給資格者に該当するのは、主に次のような理由で離職した人です。
(1)「倒産」等により離職した人
会社の倒産や事業所の廃止などにより離職した人が該当します。また、事業所の大量の人員整理に伴う離職なども、一定の要件を満たせば対象となります。具体的には以下のようなケースが該当します。
- 倒産(破産、民事再生、会社更生等の各倒産手続の申立て又は手形取引の停止等)に伴い離職した者
- 事業所において大量雇用変動の場合(1か月に30人以上の離職を予定)の届出がされたため離職した者(※)及び当該事業主に雇用される被保険者の3分の1を超える者が離職したため離職した者
※事業所において、30人以上の離職者が生じることが予定されている場合は、再就職援助計画の作成義務があり、再就職援助計画の申請をした場合も、当該基準に該当します。また、事業所で30人以上の離職者がいないため、再就職援助計画の作成義務がない場合でも、事業所が事業規模の縮小等に伴い離職を余儀なくされる者に関し、再就職援助計画を作成・提出し、公共職業安定所長の認定を受けた場合、大量雇用変動の届出がされたこととなるため、当該基準に該当します。 - 事業所の廃止(事業活動停止後再開の見込みのない場合を含む。)に伴い離職した者
- 事業所の移転により、通勤することが困難となったため離職した者
(2)解雇等により離職した人
事業主から解雇され離職した場合や、採用時に明示された労働条件と実際の労働条件が著しく異なる場合、または賃金の大幅な未払い、賃金の一定割合を超える減額など、所定の要件を満たす事情によって離職した人も、特定受給資格者の対象となり得ます。具体的には以下のようなケースが該当します。
- 解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く。)により離職した者
- 労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と著しく相違したことにより離職した者
- 賃金(退職手当を除く。)の額の3分の1を超える額が支払期日までに支払われなかったことにより離職した者
- 賃金が、当該労働者に支払われていた賃金に比べて85%未満に低下した(又は低下することとなった)ため離職した者(当該労働者が低下の事実について予見し得なかった場合に限る。)
- 離職の直前6か月間のうちに[1]いずれか連続する3か月で45時間、[2]いずれか1か月で100時間、又は[3]いずれか連続する2か月以上の期間の時間外労働を平均して1か月で80時間を超える時間外労働が行われたため離職した者。事業主が危険若しくは健康障害の生ずるおそれがある旨を行政機関から指摘されたにもかかわらず、事業所において当該危険若しくは健康障害を防止するために必要な措置を講じなかったため離職した者
- 事業主が法令に違反し、妊娠中若しくは出産後の労働者又は子の養育若しくは家族の介護を行う労働者を就業させ、若しくはそれらの者の雇用の継続等を図るための制度の利用を不当に制限したこと又は妊娠したこと、出産したこと若しくはそれらの制度の利用の申出をし、若しくは利用をしたこと等を理由として不利益な取扱いをしたため離職した者
- 事業主が労働者の職種転換等に際して、当該労働者の職業生活の継続のために必要な配慮を行っていないため離職した者
- 期間の定めのある労働契約の更新により3年以上引き続き雇用されるに至った場合において当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者
- 期間の定めのある労働契約の締結に際し当該労働契約が更新されることが明示された場合において当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者(上記⑧に該当する場合を除く。)
- 上司、同僚等からの故意の排斥又は著しい冷遇若しくは嫌がらせを受けたことによって離職した者、事業主が職場におけるセクシュアルハラスメントの事実を把握していながら、雇用管理上の必要な措置を講じなかったことにより離職した者及び事業主が職場における妊娠、出産、育児休業、介護休業等に関する言動により労働者の就業環境が害されている事実を把握していながら、雇用管理上の必要な措置を講じなかったことにより離職した者
- 事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者(従来から恒常的に設けられている「早期退職優遇制度」等に応募して離職した場合は、これに該当しない。)
- 事業所において使用者の責めに帰すべき事由により行われた休業が引き続き3か月以上となったことにより離職した者
- 事業所の業務が法令に違反したため離職した者
【出典:厚生労働省 ハローワークインターネットサービス - 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要】
2. 「特定受給資格者」と一般の受給資格者の給付日数の違い
特定受給資格者に該当する大きなメリットの一つが、基本手当の「所定給付日数」です。
所定給付日数とは、基本手当(いわゆる失業給付)を受給できる上限日数のことです。一般の受給資格者の場合、被保険者であった期間に応じて90日、120日、150日のいずれかとなります。
一方、特定受給資格者の場合は、離職時の年齢と被保険者であった期間に応じて給付日数が決まり、最大330日まで受給できる場合があります。両者の違いを比較すると、次のとおりです。
一般の受給資格者の所定給付日数
| 被保険者であった期間 | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 | ||
| 区分 | 全年齢 | 90日(※) | 90日 | 120日 | 150日 | |
※特定理由離職者(正当な理由のある自己都合退職者等)は離職以前1年間に被保険者期間が6か月以上あれば基本手当の受給資格を得ることができます。(特定理由離職者については次回コラムにて紹介します。)
特定受給資格者の所定給付日数
| 被保険者であった期間 | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 | ||
| 区分 | 30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ― |
| 30歳以上35歳未満 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 | ||
| 35歳以上45歳未満 | 150日 | 240日 | 270日 | |||
| 45歳以上60歳未満 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 | ||
| 60歳以上65歳未満 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 | ||
【出典:厚生労働省 ハローワークインターネットサービス - 基本手当の所定給付日数】
例えば、45歳以上60歳未満で、雇用保険の被保険者期間が20年以上ある人を考えてみましょう。
この人が正当な理由のない自己都合退職をした場合、所定給付日数は150日です。一方、特定受給資格者に該当する場合は330日となり、その差は180日になります。
とはいえ、特定受給資格者になれば、必ず一般の受給資格者より給付日数が多くなるとは限りません。年齢や被保険者期間によっては、両者の日数が同じ場合もあります。
なお、ここで比較しているのは、基本手当の日額ではなく、受給できる日数です。基本手当の日額は、原則として離職日以前6か月の賃金を基に算定されるため、受給総額は日数だけでなく、個々の賃金額などによっても異なります。
また、特定受給資格者と一般の受給資格者では、基本手当を受給するために必要な被保険者期間にも違いがあります。
原則として、特定受給資格者は離職日前1年間に6か月以上、一般の受給資格者は離職日前2年間に12か月以上の被保険者期間が必要となります。
3. 「特定受給資格者」と一般の受給資格者の給付制限期間の違い
特定受給資格者と一般の受給資格者では、給付日数だけでなく、基本手当の支給対象となる時期にも違いがあります。
いずれの場合も受給手続後に7日間の待期期間があります。特定受給資格者は、待期満了の翌日から支給対象となりますが、一般の受給資格者は、次のような「給付制限」が設けられます。
(一般の受給資格者の給付制限)
- 原則として1か月(2025年4月1日以降の離職の場合)
- 過去5年間に2回以上、正当な理由のない自己都合退職により受給資格の決定を受けている場合は3か月
なお、一定の教育訓練等を受けることで、給付制限が解除される場合もあります。
4. まとめ
特定受給資格者は、会社の倒産や解雇など、本人の意思だけでは避けられない事情によって離職した人を支援するための制度です。一般の受給資格者と比べ、所定給付日数が大幅に増える場合があり、再就職までの生活を支えるうえで重要な役割を果たしています。また、離職理由は、会社側の主張や本人の申告内容だけで判断されるものではなく、実際に退職に至った経緯も踏まえて判断されます。そのため、制度を正しく理解するとともに、離職票に記載された離職理由が実際の経緯に即したものとなっているかを確認することが大切です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
<参考URL>
■厚生労働省 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_range.html
■厚生労働省 基本手当の所定給付日数
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_benefitdays.html
■厚生労働省 Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000139508.html
執筆者:社会保険労務士法人大野事務所 特定社会保険労務士 榎本 美奈
地元福岡の大学を卒業後、一般企業の人事部にて、採用、労務に携わる中で、もっと奥深く法律を学びたいという思いから社会保険労務士を目指しました。2017年に資格を取得し、福岡の社労士事務所にて社労士業務の基礎を学び、2022年に社会保険労務士法人大野事務所に入所しました。現在は主に人事・労務に関する相談業務や給与計算、手続のアウトソーシング業務に従事しています。常にお客様とのコミュニケーションを大切にしながら、それぞれに合った適切なアドバイスができるよう心がけております。