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夜勤明けは有休になる?労働基準法のポイントを押さえよう
夜勤は労働時間や休日の数え方が労働基準法などで定められており、ルールも複雑です。基本的な夜勤の考え方や、2024年問題との関係性、労務管理のポイントなどをご紹介します。
あらためて知っておきたい「夜勤」とは?
労基法では「午後10時~午前5時までの労働時間」
夜勤とは、辞書的な意味では「夜間に勤務すること」全般を指します。なお、労働基準法では第37条および第61条により「午後10時~午前5時まで」の労働時間が深夜業務とされ、一般的にはこの時間帯に勤務することを指して「夜勤」と言われます。
夜勤には25%以上の割増賃金の支払いが必要
コンビニエンスストアや深夜まで営業する飲食店など、同じ勤務内容でも勤務時間帯によって2種類以上の時給が提示されているのを目にしたことはないでしょうか。労働基準法では深夜労働に対して1.25倍以上、つまり25%以上の割増賃金を支払わなければならないと定められており、同じ勤務内容でも時給が違ってくるのです。
夜勤の「勤務時間」、「休憩」、「休日」
日をまたいでも出勤日としては「1日」
一般的には深夜0時が日付変更の境界とされ、それ以前と以後で2日に分かれます。しかし、夜勤(深夜勤務)においては、深夜0時をまたいで勤務しても2日にわたって勤務したことにはならず、出勤~退勤までが1日の労働としてカウントされます。
夜勤明けは「休日」にはカウントされない
深夜0時をまたいで夜勤を終えた当日、いわゆる「夜勤明け」の日は、その後日付が変わるまで勤務しなかったとしても「休日」にカウントされることはありません。
これは、労働基準法における休日が「原則として暦日、すなわち午前0時から午後12時までの24時間をいう」ためです。日勤の場合に退勤~翌日の出勤時間が休日にカウントされないのと同じというわけです。
夜勤で度を越して働くリスクとは?
「夜勤明けの日勤」や、「日勤明けの夜勤」、「12連勤までの夜勤」は法的には問題ないとされていますが、従業員が働きにくく、健康を損ねるリスクも高まるため現実的とは言えません。むしろ、労働契約法第5条に定められた、企業や組織が従業員の健康と安全に配慮する「安全配慮義務」違反と見なされかねません。
自動車運転業務などでは実際に、「勤務と勤務の間に十分な休息時間を設けず何日も連勤させた」、「目的地到着を過度に急ぐ強行スケジュールで、休憩が取れない状況を強いた」といった、過酷な勤務が原因とみられる業務用自動車の交通死亡事故が何件も起きています。
他の業種でも、長時間の夜勤による過労が原因とみられる自殺や突然死などの事例は後を絶ちません。看護や介護、深夜も営業する店舗などでは、いわゆるワンオペ勤務のように「夜勤の業務量に対して割り当てられる人員が極端に少ない」ケースも珍しくなく、夜勤担当者の業務負担が大きいことも影響しているようです。
過重労働防止につながる「勤務間インターバル制度」
こうした「夜勤での過重労働による事故リスク・健康リスク」を避けるため、勤務終了後から次に出勤するまでの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を設けることをルール化したのが「勤務間インターバル制度」です。「労働時間等設定改善法」(労働時間等の設定の改善に関する特別措置法)が改正されたことで、2019年4月1日より企業の勤務間インターバル制度の導入が努力義務化されています。
引用:厚生労働省 東京労働局「勤務間インターバル制度をご活用ください」
勤務間インターバル制度では、図のように勤務間インターバル(休息時間)を確保するため「残業時間に応じて始業時間を繰り下げる(あるいは繰り下げた分の時間も働いたものとみなす)」、または「一定時刻以降の残業を禁止する」、「始業時刻以前の勤務を認めない」などの運用ルールを設定するのが一般的です。
夜勤と「36協定」、「2024年問題」の関係
36協定とは?
36協定とは、労働者に法定労働時間を超えて労働させる場合に結ばれる労使協定のひとつです。労働基準法の第36条に時間外労働・休日労働に関する協定が記されていることからこう通称されており、「サブロク協定」と読むのが一般的です。
労働基準法では原則「1日8時間、週40時間」を法定労働時間と定めていますが、その範囲を超える場合には36協定を結ぶ必要があります。夜勤では職場での宿泊を伴う宿直勤務などで勤務時間が長時間化しやすく、労働者との間に36協定を結ぶケースも多くなっています。
36協定の特別条項
36協定の特別条項とは、「臨時的な特別の事情があり、上限を超えた時間外労働を可能とする」取り決めのことを指します。「特別の事情」とは、例えば「設備の不具合が生じ、緊急で対応が必要になった」といった限られた状況が想定されていました。しかし実情としては、これほど限られた状況になくとも、制限なく時間外労働が行われていました。
そこで2019年4月の働き方改革関連法の施行に合わせ、特別条項として時間外労働の上限規制が設けられたのです。ただし、医師、自動車運転業務、建設業など一部の業種では、夜勤を含む長時間労働が多い事情を鑑みて、上限規制の適応に猶予期間が設けられました。
2024年問題と36協定
医師、自動車運転業務、建設業など一部の業種に対する上限規制の猶予期間は2024年3月に終了し、これらの業種でも時間外労働の上限規制が適用されるようになりました。
もちろん、猶予期間に企業は人員補充などの対策を講じてきたものの、もともと人手不足にあえいでいた業種も多く、十分な対策を取れないまま猶予期間が終了したというケースも少なくありませんでした。これによって起こったのがいわゆる「2024年問題」です。中でも医師、自動車運転業務などでは夜勤が多く、上限規制適用の影響は大きいと見られています。
2024年問題について詳しくはこちらの記事もご覧ください。
夜勤を含む労務管理で人事が気をつけるべきことは?
「夜勤できない従業員」を把握しておく
労働基準法では「満18歳未満の年少者は、非常災害の場合を除き、原則として深夜業をさせてはならない」と定められています。ただしこの例外として、「交替制によって使用する満16歳以上の男性」、「農林業、畜産業、養蚕業、水産業、保健衛生の事業、電話交換の業務」が挙げられています。
また「妊産婦が請求した場合には、時間外、休日、深夜労働を行わせてはならない」とも定められています。夜勤できない従業員に夜勤を割り当てることがないよう、あらかじめこうした条件を把握しておきましょう。
「働き過ぎの従業員」を出さないシフト作成・勤怠管理を
労働時間は従業員本人が詳細に把握しきれていないことも多く、月末に集計を始めてから「働き過ぎていた」ことが判明するというケースも珍しくありません。
シフト作成も「運営に必要な人員・時間をとにかく満たす」ような作り方をしていると、それぞれの従業員の労働時間に目が届かず、働き過ぎてしまう従業員が出てしまいかねません。
勤怠管理システムを導入し自動で労働時間を計算してシフト作成に活かす、時間外労働で超過する懸念がある際にはアラートを出すなど、働き過ぎを未然に防ぐ工夫が求められます。
給与計算でミスをしない体制づくりを
残業や深夜労働の賃金割増率は、労働時間の合計や、時間外か、深夜か、休日かといった条件で細かく分かれており、非常に複雑になっています。担当者がこうした制度を把握しておくことももちろん重要ですが、「人力だけでミスなく計算するのは難しい」と覚悟して、給与計算システムの設定を定期的に確認する、法改正対応のサポートをつけるなどの対策を講じておくのがよいでしょう。
労働力不足を補う対策を考えておく
ここまでは労務管理の注意点を挙げてきました。しかし、根本的な問題を解決しようとせず、管理することにばかり注力していたのでは「そうは言っても人手が足りない」と、現場の反発を呼びかねません。すぐには対策を打てないような状況でも、まずはドライバー派遣やBPO、システム刷新などによるフォロー策をリサーチしておき、いつでも提案できるように準備しておきましょう。
夜勤対応ではプロの手や専用システムの力を借りることも考えたい
ご紹介してきた通り、夜勤には複雑なルールが多数あります。社会保険労務士などプロのサポートを受けたり、条件に沿った労働時間を自動で計算できる人事・給与システムを導入したりといった「担当者が頑張る以外の対策」も積極的に考えたいところです。
ランスタッドでは、夜勤における労働力不足を補う「ドライバー派遣」をはじめ、さまざまな人材サービスをご提供しています。課題やご要望に合わせて提供いたしますので、お気軽にご相談ください。