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今さら聞けない!上場企業とは?上場するメリット・デメリット
企業を経営するなかで上場を考える方も多いでしょう。「上場企業」とは何か、非上場企業との違いや上場のメリット・デメリットなど、上場に関する基本情報をご紹介します。
上場企業とは?
上場とは、その企業の株式が証券取引所で売買可能な状態であることを指します。上場した企業は証券取引所を通じて株式を公開し、不特定多数の投資家から出資を募れるようになります。
資産運用や株取引を行う際、「IPO(initial public offering)」という単語を耳にすることがありますが、これは企業が初めて上場することを指し、日本語では「新規公開株」や「新規上場株式」と表します。
企業が上場するためには、証券取引所が決めた詳細な基準をクリアしなければなりません。日本で上場している企業数は3,937社あり、そのうち外国会社は6社です(2024年06月5日時点)。
上場企業と非上場企業との違い
株式公開という視点で見ると、日本の企業は証券取引所を通じて株取引が可能な「上場企業」と、それ以外の「非上場企業」に分けられます。さらに、「非上場企業」のなかには譲渡制限付株式を発行する企業があり、この株式は「未公開株式」「非公開株」「プライベート・エクイティー」などと呼ばれます。
非上場企業の株式は一般の人(不特定多数の人)が売買することが難しく、企業のオーナー・経営陣・親会社といった個人・法人が所有しています。また、条件などに合意がなされれば子会社・社員など当事者の間で売買が可能です。
日本には約367万4,000社もの企業(※)がありますが、上場企業は先述したように4,000社に満たないことから、「国内のほとんどの企業が非上場である」といえます。
※総務省「令和3年経済センサス‐活動調査 速報集計 結果の要約」より
市場の種類(プライム市場・スタンダード市場・グロース市場とは)
日本の証券取引所は東京・札幌・名古屋・福岡にあり、証券取引所のなかでさらに市場の種類が分かれます。たとえば、東京証券取引所(東証)の場合、個人投資家を中心とした一般投資家が参加できるのは、プライム市場・スタンダード市場・グロース市場の3つです。市場によって会社が満たすべき基準は異なります。
プライム市場とは
プライム市場とは、市場区分再編前の「東証一部」に相当します。世界をリードする企業という位置づけで、新規上場・上場維持基準が最も厳しく最上位の市場といえます。
プライム市場は以下のようなコンセプト・上場基準により開設されています。
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スタンダード市場とは
スタンダード市場とは、市場区分再編前の「東証一部」上場企業のうち先のプライム市場の要件に満たなかった企業、および、「東証二部」「JASDAQ(スタンダード)」の上場企業で構成されます。主に国内向けの市場で、日本経済の中核となる企業が集まっています。
スタンダード市場は以下のようなコンセプト・上場基準により開設されています。
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グロース市場とは
グロース市場とは、市場区分再編前の「マザーズ」と「JASDAQ(グロース)」の基準が統一された市場です。新たな挑戦をする企業、高い成長可能性が期待できる企業が集まっており、ベンチャー企業や新興企業が対象となっています。
グロース市場は以下のようなコンセプト・上場基準により開設されています。
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株式上場のメリット
株式上場した場合、以下のようなメリットが考えられます。
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社会的信用の向上
上場企業であるということは、市場の審査基準以上の高い安定性・将来性が認められたことを意味します。企業としての信用度が高まった結果、銀行借入の審査が通りやすくなったり、従業員のクレジットカードやローンの審査が通りやすくなったりといったメリットもあります。
資本調達力の増大
上場企業は不特定多数の投資家から出資を募ることができるため、資本調達力が向上します。株式発行で集めた資金には返済義務がなく、返済期限や利息もありません。資本調達ができれば経営に余裕ができ、設備の導入やIT推進(DX)、積極雇用など、ヒトやモノへ投資する成長戦略が可能となります。
「エンプロイヤーブランド」の醸成
エンプロイヤーブランドとは、「働く人、その家族、求職者にとっての企業の魅力」を意味する、欧米を中心とした海外では広く知られた考え方です。
エンプロイヤーブランドを高める施策は快適な職場環境や安定した雇用、高収入、充実した福利厚生など多様にあり、株式上場もそのひとつです。上場企業であるか否かは求職者にとって重要な要素であり、求職者が増えることにより優秀な人材が集まることや、既存従業員のモチベーションアップなどが期待できます。
健全な経営体制の構築
上場に際しては厳しい基準をクリアする必要があり、準備の段階で経営体制の見直しが求められます。法令順守・内部統制・コーポレートガバナンスを整備した結果、健全な経営体制が構築され、上場後も上場維持のための監査があるため、健全な経営体制の継続的な構築が望めるでしょう。
株式上場のデメリット
株式上場した場合、以下のようなデメリットが考えられます。
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上場準備の作業、コストの増大
上場の準備には最低でも3年程度は必要といわれます。たとえば、経営管理体制の見直し、基準を満たすための人員補填、公開準備室の設置、申請書類の作成など、多くの人・時間・資金がかかります。
事務コストの増大
上場企業には株主総会を通して株価に影響を与える情報を開示(適時開示)する義務があります。不特定多数の投資家に対して、会社情報の適切な開示が求められるため、これにかかる事務コストが大きく増大します。事務コストには、経理事務をはじめとした事務作業の負担、監査法人や主幹事証券会社などとの契約料などが挙げられます。
経営責任および社会的責任の拡大
一般の投資家によって株式の売買が行われるため、株主を意識した経営が求められます。非上場企業のように経営陣だけで意思決定することは難しく、状況によっては株主の意向を汲んで短期的な利益を追う必要も出てくるでしょう。
また、株価や配当の維持向上を目指しながら、社内規定やコンプライアンスを遵守した上で、なにか問題が起きた際には不特定多数の人に対して説明を行い、信頼回復に努めなくてはなりません。
買収リスクの上昇
自社の株式が証券取引所を通して売買されるため、競合による買い占め、あるいは、敵対的買収(経営陣や株主の事前合意なく行われる買収。敵対的TOBとも)の対象となる可能性があります。
株式上場のメリット・デメリットを十分に精査することが重要
企業にとって上場を果たすということは、自社の社会的信用の向上、エンプロイヤーブランドの醸成、資金調達力の増大など大きなメリットがあります。その一方で、上場準備や維持のためには多くの施策や人、資金が必要というデメリットも存在します。
上場のメリットがあまりない場合には、非上場を継続するのも有効な選択肢です。メリット・デメリットを十分に精査し、自社にとって最適なのはどちらかを選び取ることが重要です。
また、良い人材を確保し企業を成長させるには、働く場所としての企業の魅力度(エンプロイヤーブランド)を向上させることも重要です。ランスタッドでは、年に一度実施しているエンプロイヤーブランドリサーチレポートをはじめ、エンプロイヤーブランディングに関するさまざまな情報を提供しています。ぜひご覧ください。