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派遣会社はどのようにして派遣料金を決めているのか
当社への人材派遣に関するお問い合わせで特に多いのが派遣料金に関するものです。法人としてサービスの利用を検討する上で料金に関する情報はなくてはならない情報といえます。一方、派遣料金には同じ事務といった職種でも幅があり、定額で料金設定をしている派遣会社は多くありません。なぜ派遣料金には幅があり、派遣会社はどのように派遣料金を設定しているのでしょうか。
景気動向や求人倍率・失業率、各都道府県の最低賃金との関係。賃金、社会保険料などからなる派遣料金の内訳やいわゆるマージン率についての情報は他に多くありますのでこの記事ではもっと狭い視点での派遣料金の設定について主に説明します。「それは派遣会社側の事情では?」とお感じになる内容があるかもしれませんが、敢えて内情をお示しすることで派遣先企業様に少しでも納得感をもっていただき、会社間での派遣料金に関する合意形成ができたらと考えております。また、その参考となることを目的としています。
なお、本記事の内容は著者が当社派遣部門のコンサルタントとして担当する派遣先企業にご説明をしてきた内容です。当社全ての派遣料金の設定に当てはまらないことを予めご了承ください。
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業務内容だけで料金を決めるのが難しい理由
「派遣料金」とは、派遣会社が、派遣サービスを提供する対価として派遣先企業へ請求する料金のことです。派遣会社と派遣サービスを利用する企業、双方合意の契約によって決まります。派遣先企業側で既に派遣を利用しており派遣料金が明確に決まっているなどの場合をのぞき、担当者の方からは「●●業務の派遣料金はいくら位ですか?」とご質問いただきます。
具体的には、下記のようなお問い合わせです。
- 「一般事務の派遣料金はいくらですか?Excelの入力ができればいいです」
- 「営業アシスタントの派遣料金はいくらですか?近い経験がある方だったらうれしいです」
- 「倉庫内作業の派遣料金はいくらですか?経験は全く必要ありません」
できればすぐに派遣料金をお答えしたいのですが、これだけの情報で回答するのは難しいことがほとんどです。なぜなら派遣料金は以下の要素によって決まるからです。
従事する業務 × 就業環境 × 必要なスキル/経験 ×採用の難易度
+ α(その他の条件)
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同じ職種でも、従事する業務を細かくみるとその内容は、企業や職場によって様々です。ランスタッドでは実際の業務の「難易度」「専門性」「責任の範囲」を判断し、業務実態ごとに派遣スタッフの適正な給与体系を設定しています。※労使協定に定める範囲に限る
就業場所に関する情報も必ず必要です。
派遣料金には地域差があります。都道府県別の最低賃金や有効求人倍率の高低とある程度比例しますが、特に人手不足感のある地域では相場がタイムリーに上昇しています。全く同じ条件でも数ヶ月前と比べて採用が難しくなることも少なくありません。
都心部であれば駅からの距離、郊外であれば自家用車通勤ができ、駐車場が利用できるのかどうかも重要です。
また、勤務体系が「土日含むシフト制」「交代制」「早朝」「深夜」、作業環境が暑い、寒いとなれば採用の難易度が高くなります。
さらに、業務を遂行するにあたって必要とするスキル/経験を多く設定すると、求職者マーケットや各派遣会社の登録者の中に対象者が少なくなります。「必要なスキル/経験」がすべて必須なのか一部尚可なのかを明確にし、優先順位をつけることで派遣料金は変動しますし、調整をすることができます。
派遣料金が高ければ良いわけではない
では、派遣料金は高ければ高いほど良いのでしょうか。
もちろん高い派遣料金から設定される時給の高い仕事は求職者から注目されやすく、多くの求職者は派遣会社のHPや各種派遣求人サイトで仕事を検索するため時給が相場よりかなり低くなると見つけてもらうことが難しくなります。
「全く同じ仕事」なら時給が高い方が人気があるのは当然です。しかし「全く同じ仕事」さらには「求職者全員に人気がある仕事」は存在しないと考えています。なぜか?先にも述べたようにひとくちに「事務」と言っても派遣先企業によって業務詳細は異なります。
また、環境面にも違いがあります。極端な例ですが、
新築のきれいなオフィスでできる事務のお仕事 |
このような職場環境を嫌う求職者は少ないと考えられます。
では、こちらはどうでしょうか。
風通しが良く、派遣スタッフの方からの新しい意見を取り入れる環境での事務のお仕事 |
この場合、大きく分けてふたつの受け取り方が考えられます。
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2.の方にとっては相場より高い時給であったとしても魅力的とは感じにくく、仮に就業を開始したとしても早期に離職してしまうかもしれません。
もう一つ例を上げます。
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ピボットテーブルのスキルが無い方は1.の仕事しか選択できませんが、注意しなくてはならないのはピボットテーブルができる方でも1.を選ぶことが実際にはよくあるということです。特定のスキルを持っている人全員がそのスキルを最大限必要とする仕事で働きたいと考えているわけではありません。少し余裕を持って働きたいと考える方もいます。
業務内容や必要とするスキルと時給のバランスが合っているかも派遣料金を設定する上で重要なポイントです。
派遣会社内でも競合がおこっている
私が派遣先A社の営業担当なら、A社の派遣依頼に対していち早く、要件に合う方を派遣したい、もしその派遣料金が相場より少し低かったとしても何とかしたいと考えます。しかし、派遣会社の中では多くの派遣先企業からのご依頼を扱っており、類似の仕事を募集しているB社の派遣料金が高ければ登録スタッフの方はB社を優先して就業を引き受ける可能性が高くなります。
前項でご説明したように仕事には時給だけではない要素が複数あり、それぞれのお仕事に合った方、ご活躍いただける方を派遣できるように努めていますが、時給が高い仕事、時給とその他の要素のバランスが合った仕事は人気があり、派遣会社内でも競合がおこっています。
一度設定した派遣料金は見直さなくて良いのか
派遣料金を設定し、派遣契約を開始した後、派遣料金の見直しは不要なのでしょうか。派遣スタッフは働いているうちに他の派遣会社の求人が気になったり、他の雇用形態への転職を考えることが起こり得ます。就業期間の経過により業務効率やスキルが上がった場合など、優秀な人材の確保と定着のために派遣スタッフの時給を適切な水準に見直す必要があります。
また、派遣会社として法改正や労働市場変化に伴う対応のために料金の改定を依頼することがあります。同一労働同一賃金や社会保険の適応拡大などへの対応がこれにあたります。
総務省の発表によると2022年12月の消費者物価指数は前年同月比で4.0%上昇し、41年ぶりの上昇率となりました。今年1月には岸田文雄首相が経済三団体の新年祝賀会の場で「インフレ率を超える賃上げの実現をお願いしたい」と発言するなど賃上げの機運が高まっています。
派遣料金の見直しについてはこちらの記事でも取り上げていますのでご覧ください。
まとめ(ダウンロード資料:職種別全国派遣料金表)
募集内容に対して適正な派遣料金の設定は早期に派遣スタッフを決定し、派遣スタッフのパフォーマンスを上げ、離職率を抑制するためになくてはならないものです。
「同じ仕事」はひとつとしてなく、派遣先企業様のこと、仕事内容、ご依頼の背景などを詳しく知り、理解しなければ適正な派遣料金の設定はできません。当社のコンサルタントは派遣先のご担当者様にかなり細かいことまでお聞きした上で、料金をご提案しています。これが定額で派遣料金をお示ししにくい事情です。
最新の当社調査において求職者は勤務時間や場所を選べることなどの柔軟性、仕事に誇りを持てること、職場で一体感を感じられることを重要と考えていることがわかりました。多様な働き方やワークライフバランスがますます重視される中、業務内容やスキル以外の派遣料金や時給に直接反映しにくいポイントについても派遣先企業、派遣会社が相互に情報交換し、求職者に伝えていくことが大切です。
とはいえ、料金の相場がわからなければ派遣利用そのもの検討や、派遣会社を選ぶ基準がないというお声もいただきます。当社では【事務・オフィス系】【工場・製造系】【倉庫・物流系】の職種カテゴリーについて、都道府県ごとの最低料金と料金相場を記載した料金表をご用意しています。この記事では扱わなかった派遣料金の構成(内訳)や通勤手当の考え方、派遣会社の管理費用には何が含まれているか、派遣会社を選ぶチェックポイントについても触れていますので資料をダウンロードしてご確認ください。
ご不明な点がございましたら、ランスタッド営業担当もしくは法人様向けお問合せ窓口までお問い合わせください。
[著者プロフィール]
オフィス系派遣のコンサルタントとして企業、求職者・就業者の方々の支援に携わる。
現在はインサイドセールスとしてランスタッドの全サービスをワンストップでご提案することを担当。国家資格キャリアコンサルタント。