ワークライフ・ラボ:「学び直し」ってこんなに面白い 「世界が広がる」体験的お勧め論

記事をシェアする
Facebook Twitter LINE

wakurabo41-1今やビジネス界の流行語にもなっている「リスキリング(学び直し)」ですが、「今さら何を学べばいいの?」「もう外国語を勉強しています」など、ビジネスパーソンの反応はさまざま。

しかし、「学び直し」の本質はもう少し深いようです。

ランスタッド主催の無料ランチタイム・ウェビナー「ワークライフ・ラボ」(通称ワクラボ)は第4回目の11月9日、「社会人の“学び直し”がなぜ注目?」と題して考えてみました。

今回お迎えしたゲストはイトーヨーカ堂社長の山本哲也さん、連合副事務局長の村上陽子さんの二人です。

お二人ともナビゲーターの佐藤博樹教授のもとで「学び直し」を実践。そこで得られた知見と体験を披露してくださいました。以下は3人によるトークセッションの抜粋です。

 

bar1

 

佐藤さん :社会人にとっての学び直しとは、単に今の仕事に直接役立つスキルを磨くというより、もう少し先のことを考えて学ぶという姿勢が大事だと思います。お二人が働きながら学び直しに挑んだ動機は何だったのですか。

山本さん : 私は長年、人事畑が専門で、それなりのスキルを蓄積してきたつもりでした。ところが、会社が初の営業赤字になった時、自分の力不足を身に染みて感じました。もっと幅広い視野を持たなければならないと自身を見つめ直し、正月休みにビジネススクールで学ぶことを決心。学び舎を選択して行動に移しました。そこに佐藤先生がおられた(笑)。

2年間、ファイナンスやマーケティングをみっちり勉強しました。そこでわかったことは、人事で得たスキルはかなり偏ったものだったということです。ちょうどそのころ、会社で人事から経営企画に異動したのですが、幅広い見方ができて発言に自信が持てるようになり、勉強していて本当に良かったと体感できました。

村上さん : 正月休みの時に学び直しを決めたという点では、山本さんと同じですが、私の場合は連合という労働組合の組織にいて、「労働分野は人がすべて」という前提で仕事をしてきました。だから「人としてもっと自分を磨きたい」と思ってモヤモヤしていたところ、ビジネススクールのホームページを見て「これだ!」と受験を決めました。

 

REBER3031_11-1

 

「学び直し」は何の役に立つの?

佐藤さん :「何を学ぶか」という点では、一般的に誤解も多いですよね。ビジネススキルにはOJTなどで得られる業務遂行に必要なテクニカルスキル、管理職などに必要な対人能力としてのヒューマンスキル、課題を設定し、その課題の関連や原因を総合的に分析するために必要なコンセプチュアル(概念化)スキルの3つがあって、これらを混同すると「学び直しなんて、なんの役に立つの?」ということになりかねない。コンセプチュアルスキルは、経験で学んだスキルの応用力を高める一般化にも役立ちます。その点、お二人は目的意識が明確でしたが、学び直しの中で得たものは何ですか。

山本さん : 仕事をしながらの勉強なので、2年の間に時間の使い方が身に付きました。それまでなんとなく過ごしていた時間も、「30分あればこれだけのことができるんだ」とか。それと、論文執筆にあたってテーマを考え、仮説を立てて調査を進める手法が、単に本を読むのとはまったく違いましたね。

実は、当時の社長には両立を懸念されていまして、それを押し切ってビジネススクールに通ったので、周囲に迷惑はかけられないという気持ちは強かったです。それと、家族には学費面も含めて負担を掛けました。今は、私が奨励していることもあって、会社で毎年、スクールに通う社員が出ています。

村上さん : 私も周囲から「なんで今さら学び直しなの?」などと聞かれたことがありましたが、知識を増やすだけなら本を読んだり、セミナーなどへ参加したりすれば済むわけです。ただ、それは学びを“体験”することとは違いますね。

(編集部の声:仕事を持ちながら勉強するというのは、よほど強い意志がないとできないようにも思えますが、お二人の話を聞いていると、どこかの時点で一気に壁を乗り越えた感じがします。学びに対する瞬間的な思いつきでなく、日ごろからの考えが熟成していたからなのでしょう)

 

地位や年齢などと関係なく自由に議論できる

佐藤さん :学び舎には出会いの妙というものもありますね。

山本さん : それは大きかったですね。年齢が20代から60代まで幅広い人たちと机を並べて議論すると、多様な考えがあることに驚かされ、勉強になりました。卒業後の“同期会”で、利害関係なく自由に話のできるのも魅力です。

村上さん : 同感です。ゼミに出てさまざまな人とフラットな関係で議論できるというのも、考えてみると貴重な場だと思います。組織を離れて初めてわかる、という経験も何度かしました。

 

社外でのまなび直しをお勧めしたい

佐藤さん :お二人の話を聞いていると、学び直しの意義を強く感じました。企業や上司には、こうした学ぶ意欲のある社員の背中を押したり、支援したりするようになってほしいものですね。では、学び直そうかどうか迷っている人たちに向けたアドバイスを。

村上さん : 学び直しにお金が掛かることは確かですが、雇用保険制度の中に「教育訓練給付制度」というものがあります。政府が指定する講座であれば、ハローワークを通じて授業料の一部が助成されますが、まだあまり知られていないようです。せっかくの制度ですから、うまく活用すれば負担を軽くしてスキルを上げることができると思います。

山本さん : 学校と違って、仕事には「正解」というものはないと考えるべきでしょう。その中で、できるだけ正解に近い答えを見出すためには、さまざまな角度から考えてみることが必要です。その意味で、社外でのまなび直しをお勧めしたいですね。掛けた時間やコスト以上のリターンが返ってくるはずです。

(編集部の声:政府も企業もようやく、「人はコスト」から「人は資本」という考えに傾いてきています。「人への投資パッケージ」と銘打った政策も展開されるそうなので、学び直しは大きな流れになりそうです。)

bar1

 

ワクラボ、次回のお知らせ

第5回は12月7日(水)12時10分スタート。「他人事ではない!?突然、親の介護が必要になったら仕事を続けられますか?」というテーマで開催します。ゲストは労働政策研究・研修機構主任研究員の池田心豪さん。

介護は予測も見通しもむずかしく、仕事との両立は困難と思われがちですが、専門家の池田さんなら最善のアドバイスやヒントを教えてもらえるかもしれません。健康状態などに関係なく高齢の親御さんのいる方、ぜひお集まりください。

 

1207ワクラボ5_920x450 (1)

 


第四回ワークライフ・ラボ 登壇者

佐藤博樹
中央大学大学院戦略経営研究科(ビジネススクール)教授。雇用職業総合研究所(現、労働政策研究・研修機構)研究員、法政大学経営学部教授、東京大学社会科学研究所教授などを経て2014年10月より現職。2015年東京大学名誉教授。
 

山本 哲也
イトーヨーカ堂代表取締役社長、セブン&アイ・ホールディングス常務執行役員 96年、イトーヨーカ堂に入社して小売・流通業界のキャリアをスタート。執行役員経営企画室長や取締役執行役員管理本部長、取締役常務執行役員管理本部長を経て、2022年3月に現職。グローバル流通グループであるセブン&アイ・ホールディングスの中核企業を牽引する。
 
 
村上 陽子
連合(日本労働組合総連合会)副事務局長。1994年、連合本部事務局に入局。非正規労働センター総合局長、総合労働局長、総合企画局長を経て2019年より現職。兼職として、厚労省・社会保障審議会委員、内閣府・子ども子育て会議委員、法務省・法制審議会部会委員など。
 
 
ワークライフ・ラボ特設ページはこちら

取材・編集 アドバンスニュース

関連コラム

    人材サービスをご希望の企業様へ

    人材に関する課題がございましたらランスタッドへお任せください

    人材サービスのご依頼ご相談

    人材ソリューションのご相談や、ランスタッドの人材サービスに関するご相談などお伺いいたします

    企業の方専用ご連絡先
    0120-028-037
    平日9:30-17:00 ※12:00-13:00除く