- 総合人材サービス ランスタッドTOP
- 法人向けHRブログ workforce Biz
- 2025年下期以降、ファイナンスと経理はどう変わるのか―注目トレンドと今後の展望
2025年下期以降、ファイナンスと経理はどう変わるのか―注目トレンドと今後の展望
財務部門は新たな章へ
現在、財務会計部門は数十年間で最も重要な変革期を迎えています。テクノロジーは今やチームの思考、行動、そして価値創造の方法の一部となっています。規制要件は増大し、従業員の期待は変化し、部門自体も「プロセス中心」から「戦略主導」へと進化しています。
2025年を経て2026年を見据える中で、財務プロフェッショナルは迅速な適応が求められます。一歩先を行くには、デジタルリテラシーを倫理的判断力、戦略的思考、継続的な学習意欲と融合させる必要があります。ここでは、何が変化しているのか、そして最前線に立ちたいチームにとってそれが何を意味するのかを見ていきます。
財務チームの未来への備えを
AIと自動化は、財務戦略に欠かせない存在へ
財務領域におけるAI活用は、いまや「あると便利」ではなく、ビジネスに欠かせない要素になっています。これまで主にコスト削減の手段と見られていた人工知能や自動化技術は、現在では財務部門が戦略的な価値を生み出すための中心的な役割を担うようになりました。
特に、ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)は、照合業務、請求書処理、データの検証といった反復作業を自動化し、担当者がより高度な分析や意思決定に時間を割けるようにしています。業界推計によると、2024年の世界RPA市場規模は約228億ドルとされ、2025年には283億ドル[1]まで拡大する見込みです。
AI導入も急速に進んでいます。2023年の調査[2]では、金融サービス業界がAIに260億ポンド以上を投資しており、そのうち銀行業界だけで半分以上を占めていました。KPMG[3]やデロイト[4]などの調査でも、AIの活用が限定的なユースケースから、金融エコシステム全体へと広がっていることが示されています。
とはいえ、大きな変化の中心にあるのは「人」です。ランスタッドのワークモニター調査[5]では、金融領域の専門職の3割が「AIなど新しい技術に関する学習機会が提供されなければ転職を検討する」と回答しています。これは、組織がスキルとシステムの両面から変革を進める必要性が高まっていることを示しています。
ESGレポーティングは“任意”から“必須”へ
ESG(環境・社会・ガバナンス)レポーティングは、もはや一部企業だけの取り組みではありません。現在では法規制に組み込まれ、投資家・規制当局・顧客のいずれからも求められるようになっています。特に、EUのCSRD(企業サステナビリティ報告指令)やISSB基準の導入により、数千社規模でESG開示が義務化されています。

投資家の期待値も大きく変化しています。現在、84%の投資家が投資判断にESGパフォーマンスを考慮しており、ESG投資[6]は2026年までに3.39兆ドル規模へ拡大すると見込まれています。さらに企業側では、S&P 500企業の約90%、Russell 1000企業の約70%が既にESGレポートを公開している状況です。[7]
こうした動きは、ファイナンスや経理部門にも大きな影響を与えています。新しい基準への理解に加え、サステナビリティ部門との連携、そしてESG指標を予測やリスクモデルに組み込む必要性が求められています。また、財務データと同じ精度でサステナビリティ情報を管理できるツール・システムの導入が急務になっています。
デジタルエコシステムが財務機能を刷新
かつて財務領域のテクノロジーといえば、個別に独立したシステムを指していました。しかし今では、リーダーがリアルタイムで全社の状況を把握できる接続されたプラットフォームが中心となっています。クラウド型会計ツール、AIによる分析、ブロックチェーンを活用した台帳が統合され、より迅速で透明性が高く、スケーラブルなデジタルエコシステムを構築しています。
財務チームの未来への備えを
EY[8]やIMD[9]の最新レポートによると、こうした接続型システムは手作業のミス削減、早期の不一致発見、決算業務の効率化に貢献しています。例えばブロックチェーンは、サプライチェーンファイナンスや取引認証の分野で大きな可能性を示していますが、導入には専門知識と投資が必要です。

変革を実現するには、強固なデータガバナンス、継続的なトレーニング、適切なツールの活用が不可欠です。これを適切に行えば、財務部門は制御を失うことなく、より迅速かつ賢く動けるようになります。
リモート・ハイブリッド勤務は定着
財務・経理部門でも、リモートやハイブリッド勤務が一般化しました。もはや一時的な対応ではなく、長期的な人材戦略の一部となっています。2023年のトムソン・ロイターの調査[10]では、財務プロフェッショナルの41%が新しい職を探しており、そのうち63%はハイブリッド勤務、47%は完全リモートを希望していました。
柔軟な働き方は、優秀な人材の確保・定着に不可欠です。一方で、分散型チームは多様性や機動性をもたらす反面、コミュニケーション、メンター制度、サイバーセキュリティといった仕組み強化も求められます。明確な期待値の設定と一貫したサポートに投資するリーダーほど、優秀な人材を確保しやすくなります。

また、財務業務がテクノロジー主導になるにつれ、財務知識とデジタルスキルを兼ね備えた人材の需要が高まっています。財務データアナリスト、RPAプロセスオーナー、AIレポーティングスペシャリストなどのハイブリッド役割が代表例です。AIを活用した経理業務も進展しており、経費分類、リアルタイム照合、監査サンプリングまで、インテリジェントシステムで対応可能になっています。
当社の人材分析レポート[11]よると、多くの市場で労働人口の減少が課題となっています。競争力を維持するためには、スキルアップ支援、大学との連携[12]、スキルベースの採用が重要です。成功する企業は、テクノロジーに置き換えられるのではなく、テクノロジーと共に成長できる財務プロフェッショナルを育成しています。
サイバーセキュリティは財務戦略の一部
財務システムの相互接続が進む中、サイバーセキュリティはもはやIT部門だけの課題ではなく、財務部門の責任でもあります。クラウド、API統合、AIシステムの導入により、機会と同時にリスクも増大します。リスクは財務損失だけでなく、評判リスクや規制上の問題にも直結します。
IBMの2024年レポート[13]では、金融サービスは依然として最も標的にされやすいセクターであり、侵害1件あたり平均損失は490万ドル超にのぼると報告されています。財務リーダーは、請求書自動化から資金管理まで、あらゆるデジタルトランスフォーメーションにサイバーセキュリティを組み込む必要があります。社員教育、アクセス権管理の見直し、定期的な脆弱性テストなど、IT部門との連携も欠かせません。
これからの財務・経理の姿
これらのトレンドに共通するメッセージは、財務・経理がより戦略的・デジタル・人材中心になっているということです。AIや自動化は不可欠なツールですが、人の判断力、倫理観、コミュニケーション力が成功の中心にあります。

2026年に向けて、最も成果を上げる財務チームは、テクノロジーとクリティカルシンキングを融合させ、データを意思決定に活かし、人を中心に変化を推進するチームです。財務は、過去を報告する役割から、未来を形作る役割へと進化しています。スキルへの投資、責任あるイノベーションの受容、新しい期待への適応を通じて、財務プロフェッショナルは組織の前進を力強く支えることができます。
未来に備えるために
今後数年間、財務チームに必要なスキルやツールを理解することで、変化に先んじることができます。無料のF&A AIレディネス&スキルチェックツールキットをダウンロードし、これらのトレンドがあなたのチームに与える影響を確認しましょう。
財務チームの未来への備えを
[出典・参考資料]
本記事は以下の情報を参考に作成しました。
[1] ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)市場規模、シェア、トレンド 2025~2034より
[2] 金融における人工知能(AI) - 統計と事実より
[3] KPMGグローバル財務AIレポートより
[4] 人工知能が金融エコシステムをどう変革するかより
[5] ワークモニター2025より
[6] 2025年に知っておくべき50の主要ESG指標より
[7] ESGは本当に重要なのか、そしてなぜ重要なのか?より
[8] 人工知能が金融サービス業界をどのように変革しているかより
[9] 金融サービスにおけるAIの成熟度:最も成功した企業からの教訓 より
[10] 会計事務所はリモートワークの体制を維持しているのでしょうか?より
[11] 仕事の世界における人材不足を理解する。より
[12] 若手人材を採用するための秘訣より
[13] データ侵害のコストに関するレポート 2025より