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【調査レポート】AIは脅威ではない。採用担当者が『今』知るべきAI活用の未来
ここ数年で、使いやすく高性能なAIツールが次々と登場し、私たちの仕事や生活に大きな影響を与えています。
採用担当者は求人票の改善に生成AIを使い、求職者は職務経歴書をブラッシュアップしています。そして多くの企業が、既存業務の効率化や自動化にAIを活用する方法を模索し始めています。
歴史を振り返れば、現代のAIのような強力な新しいツールが登場するたびに、「テクノロジーに仕事を奪われるのではないか」という不安が広がってきました。では、現代を生きる私たちは、この状況をどう捉えているのでしょうか?
AIは「脅威」ではなく「機会」、働く人々の意識変化
当社が実施した2024年版ワークモニター調査[1]によると、働く人々はAIの可能性に期待を寄せています。世界中の27,000人以上を対象に行ったこの調査から、従業員がAIとの協働に対して意欲的で、強い関心を抱いていることが明らかになりました。
この結果が示唆するのは、企業が従業員にAIのメリットを説く必要はもはやなく、彼らが求めているAIスキルを習得する機会を提供することこそが、最優先事項だということです。
直近の調査では、回答者の72%がキャリア形成においてトレーニングや能力開発が重要だと回答しています。中でも最も開発したいスキルとして挙げられたのがAIで、29%が最優先事項だと答えました。
わずか1年前の調査では、AIは3番目に求められるスキルでした。この短期間での大幅な順位上昇は、働く人々のAIに対する意識が急速に変化していることを明確に物語っています。
AI学習意欲は高いが、企業側のサポートが追いついていない現状
AIに対するポジティブな姿勢は、2023年のワークモニター調査[2]でも明らかになっています。回答者の半数以上(52%)が、AIは自分の仕事を奪うものではなく、キャリアアップや昇進の機会に貢献すると考えているのです。
しかし、働く人々の学習意欲と、現実との間には大きなギャップが存在します。
2024年の調査では、回答者の約4分の3がキャリア形成にトレーニングが重要だと回答し、36%が「トレーニングの機会がない仕事は受けない」とまで答えています。にもかかわらず、実際に企業から将来に必要なスキル開発のサポートを受けていると答えたのは、わずか52%に留まりました。
特にAIに特化したトレーニングの提供はまだ一般的ではないようです。2023年の調査では、過去1年間にAI関連のトレーニングを企業から提供されたという回答は、わずか13%でした。
従業員はAIを学びたいと強く願っている一方で、多くの企業がその期待に応えられていない現状が見て取れます。
AIが奪うのは「仕事」ではなく「働き方」。企業に求められる備えとは
新しいテクノロジーが登場するたびに、大量失業への懸念が広がるのはよくあることです。
マサチューセッツ工科大学の『MIT Technology Review』誌の記事[3]でも指摘されているように、20世紀のあらゆる技術革新は、労働者が不要になるのではないかという懸念を伴っていました。
AIが既存のビジネスプロセスに影響を与えるのは事実です。世界経済フォーラムの2023年のレポート[4]でも、多くの企業が近い将来に自動化を加速させる計画であることが示されています。しかし同時に、企業は減少する職務から成長分野へと、従業員をシフトさせていく方針であることも分かっています。
AIの進化が人間を不要にすることはありません。
しかし、企業がAIへの移行に備えることは非常に重要です。AIの可能性を最大限に引き出すためには、従業員へのトレーニング、ガバナンス(ルール整備)、そして積極的な活用実験が不可欠なのです。
AIが切り拓く、採用業務の新たな可能性
人々がAIにポジティブな感情を抱く大きな理由の一つに、その「効率化」の可能性が挙げられます。多くのプロフェッショナルが、AIは自分たちの仕事を奪うのではなく、反復作業を効率化し、よりクリエイティブなアイデアを生み出すためのツールだと捉え始めています。
採用活動における具体的なAIの活用例は以下の通りです。
- 候補者との定型的なやり取りを自動化
AIは、スクリーニング、面接日程の調整、その他候補者とのエンゲージメント施策[9]といった、定型的なコミュニケーションを自動化できます。最新のAIツールを活用したチャットボットは、かつてのような不具合が多く、融通の利かないボットとは一線を画しており、候補者の体験を向上させることができます。[5]
- 魅力的な求人票の作成
生成AIは、ポジションに関する基本的な情報を入力するだけで、ターゲットごとに最適化された魅力的な求人票を作成できます。求人票は、人材獲得において非常に重要な要素です。求人情報サイト「The Muse」の調査[6]によると、候補者の55%が求人票を「その仕事が自分に合うかどうか」を判断する上で役立つ指標だと考えています。
- 応募書類の解釈と評価
大規模言語モデル(LLM)[7]をベースとする最新のAIツールは、従来のキーワード検索よりもテキストの真意を正確に読み取ることができます。これにより、応募書類からより精度の高い候補者を選定し、ミスマッチを防ぐことが可能です。単純なキーワード検索[8]では見過ごされてしまうような、優れた資質を持つ候補者を発見する手助けにもなります。
採用は「人」が中心となるビジネスであり、「人間ならではの視点」は今後も不可欠です。しかし、AIと人間が協働することで、採用担当者はより効率的に業務を進め、より良い意思決定を下すことができるようになります。
企業が今すぐ取り組むべき、AI活用の第一歩
今回の調査から、働く人々がAIツールの日常業務への導入に意欲的であることが明らかになりました。今、企業側が適応する番です。
AIのメリットを享受し、従業員の期待に応えたいと考える企業に対し、私たちは3つの提言をします。
- AIのメリットとデメリットを正しく理解する
AIがもたらすメリットだけでなく、アルゴリズムによる偏見や差別といった潜在的なリスクについても、深く理解する必要があります。
- 社内ガイドラインを策定する
従業員が責任を持ってAIを使いこなせるよう、倫理的な利用を促すガイドラインやポリシーを組織全体で整備しましょう。[10]
- 常に人間の監視体制を確保する
ビジネス目的でAIを利用する際は、必ず人間の目でチェックするプロセスを設けてください。
これらの提言を実践することで、企業はAIツールがもたらす創造性と生産性の向上を享受し、同時に、責任ある倫理的なAI活用文化を築くことができるでしょう。
採用におけるAIの可能性をさらに知るために
AIが採用に与える影響、テクノロジーに対する労働者の意識、そしてこのAI時代における企業と規制当局への提言について、さらに詳しく知りたい方は、ぜひ「 AIに対する労働者の意識調査ガイド」をご覧ください。
これは、より詳細なホワイトペーパーを読みやすく要約した内容で、AIが採用業界に与える影響に関する基本的な事実を、分かりやすくまとめています。
[出典・参考資料]
本記事は以下の情報を参考に作成しました。
[1] ワークモニター調査2024より
[2] ワークモニター調査2023より
[3]マサチューセッツ工科大学 Technology Review記事
[4] 世界経済フォーラム (The World Economic Forum) 未来の仕事レポート2023
[5] Forbes記事「AI Chatbots Are The New Job Interviewers」
[6] The Muse 調査
[7] Forbes記事「30 Powerful Resume Keywords To Beat ATS In 2024」
[8]Cloudflare「 LMMとは?」
[9] Randstadブログ記事「Employee engagement: how to connect with candidates before they apply.」
[10] Randstadブログ記事「Develop internal AI guidelines and policies」