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従業員のキャリアパス支援が重要な理由とは?
企業規模を問わず、多くの企業が従業員の定着率向上、エンゲージメント強化、スキル開発といった課題に直面しています。一方で、従業員側は「キャリアの方向性が見えない」「仕事に安定性がない」「十分な投資を受けていない」といった不満を抱えがちです。これらの課題の多くを担うのは人事部門ですが、効果的な解決策の一つとして**「キャリアパスの設計(キャリアパス構築)」**が挙げられます。
従業員が自らのキャリアを明確に描けるよう支援し、企業として成長を後押しすることで、こうした問題の解決につながるだけでなく、さまざまなメリットを生み出します。この記事では、キャリアパスの基本や具体的なキャリアの選択肢を紹介し、企業が今すぐキャリアパス設計に取り組むべき理由について解説します。
キャリアパスとは?
キャリアパスとは、社員が自身の成長と将来的な役割を計画し、企業がその実現を支援するプロセスです。
社員は自らの目標や興味、キャリアの方向性を考えながら、企業と協力して長期的な成長のステップを示すキャリアマップを作成します。優れたキャリアパスには、最終的な目標に到達するために必要な知識やスキルが明確に定められ、同時に企業が今後必要とするスキルも考慮されます。
多くの社員は、管理職への昇進を目指し、キャリアアップを図るケースが一般的です。たとえば、大企業の営業担当者が、キーカウントマネージャー、リージョナルセールスディレクターとステップアップし、最終的に最高営業責任者(CSO)として経営層に加わるようなキャリアパスが考えられます。
しかし、すべての社員がトップマネジメントを目指すわけではありません。別のキャリアパスとして、特定の専門分野でのスキルを活かし、社内で横方向や斜め方向にキャリアを広げる道もあります。たとえば、大企業のIT部門に所属する若手社員が、ITセキュリティの専門性を高め、最終的にセキュリティディレクターのポジションを目指すケースが挙げられます。このように、必ずしも企業のIT部門のトップを目指す必要はありません。
キャリアパスの方向性は、社員それぞれの目標や関心、強みによって異なります。キャリア開発を重視する企業は、個々の社員の特性を考慮し、一方的に昇進を促すのではなく、社員が望む方向性を支援する姿勢を持つことが重要です。
キャリアパス設計の主なメリット
明確なキャリアパス戦略は、従業員と企業の双方にとって大きなメリットがあります。以下で詳しく解説します。
従業員にとってのメリット
- 仕事への高い満足度 - キャリアの成長機会がないことは、従業員の不満の大きな要因となります。ワークモニター2025では、世界中の26,000人以上の労働者を対象に調査を行った結果、48%が「キャリアの成長機会がない職場なら退職を考える」と回答しました。明確なキャリアパスを示すことで、従業員の満足度を向上させることができます。
- 雇用の安定 - 経済の先行きが不透明なとき、従業員にとって雇用の安定は大きな関心事となります。ワークモニター2025 によると、82%の労働者が現在および将来のキャリアを考える上で、雇用の安定を「非常に重要」または「やや重要」と考えていることが分かっています。明確なキャリアパスがあることで、従業員は自社での将来に前向きな展望を持てるようになり、安心感につながります。
- 学習・能力開発(L&D)の明確な指針 -ワークモニター2025 によると、約半数の労働者が、学習や成長の機会が十分にない場合、その仕事のオファーを断る可能性があると回答しています。キャリアパスの設計は、こうした機会を提供するうえで重要な役割を果たします。キャリアパスを作成することで、今後数年間で習得すべきスキルや知識が明確になり、学習と成長が自然と組み込まれる仕組みになります。そのため、従業員は自分のキャリア目標を達成するために必要な知識を優先し、効果的に習得することができます。
雇用主にとってのメリット
- 従業員の定着率向上 - ワークモニター 2025によると、 31%の従業員が、成長の機会が十分にないことを理由にすでに退職を経験していることが明らかになっています。新たな人材の採用には高いコストがかかるうえ、スキル不足が続く現状では、多くの企業にとって高い離職率は大きな課題です。明確なキャリアパスを示すことで、従業員が他の企業へ転職するのではなく、現在の会社にとどまりたいと思える環境を作ることができます。
- 従業員エンゲージメントの向上 - 昨今の従業員が仕事で最大のパフォーマンスを発揮するためには、単に満足のいく給与を得るだけでは不十分です。マッキンゼーの調査によると、柔軟な働き方や良好な職場環境、成長の機会など、多くの要素が同様に重要であることが示されています。明確なキャリアパスを示すことで、従業員のエンゲージメントを高め、組織全体にプラスの効果を生み出すことができます。
計画的な後継者育成 - 企業のリーダー交代は、多層的な管理体制を持つ大企業でさえ困難な課題となることがあります。キャリアパスを構築することで、将来的にリーダーを目指す従業員の育成を支援し、管理職が退職する際に社内で後継者を確保できる体制を整えることが可能になります。
キャリアパスがもたらすビジネス上のメリット
従業員のキャリアパスをしっかりと築くには、自然に進むものではなく、各従業員と長期的に一対一で向き合う必要があります。そのため、貴重な人事リソースを投資することになりますが、その投資は確実に成果をもたらします。
- 採用コストの削減 - キャリアパスの整備によって従業員の定着率が向上すれば、結果として採用コストを抑えることができます。米国人材マネジメント協会(SHRM)の調査によると、新入社員の採用コストには約4,700ドルかかるとされており、職務によっては採用コスト年間給与の3〜4倍に達することもあります。定着率が低く労働力を維持するために常に新規採用を行う必要があると、こうしたコストは企業にとって大きな負担となります。ワークモニター2025 の回答者の42%が、キャリア志向をサポートしない雇用主からの離職を検討すると答えています。
- L&Dリソースのより効率的な活用 - 米国生産性・品質センター(APQC)が実施した経営層向け調査によると、96%の企業が今後1年間でL&D(学習・成長)への投資を増やす予定だと回答しています。しかし、投資を増やしたからといって、必ずしも学習効果が向上するとは限りません。キャリアパスを明確にすることで、従業員が今後のキャリアの成長に必要なスキルの習得に集中できるようになり、不必要なスキル習得にリソースを割くことを防げます。これにより、組織にとって最も重要な能力向上に投資を集中させることが可能になります。
- リーダーシップ継承時の価値損失を削減 - ハーバード・ビジネス・レビューによると、S&P1500企業において、不十分な後継者育成やリーダーシップパイプラインの欠如が原因で、毎年約1兆ドルの企業価値が失われていると報告されています。重要なスキルや企業独自のノウハウが継承されずに失われると、財務的なダメージも避けられません。キャリアパスの整備を通じた計画的な後継者育成は、こうした価値損失を最小限に抑え、組織の持続的な成長を支える重要な要素となります。
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